夢遊病の女
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第二幕その十
第二幕その十
「今はまだね」
「まだなんだ」
「少し時間を置いてから」
こう言うのである。
「それからにしてくれるかしら」
「わかったよ。それじゃあ」
「絶対に貴方に応えるから」
そっと彼を見ながらの言葉だった。
「だからね。今はね」
「待つよ、何時までもね」
「有り難う・・・・・・」
二人もそんな話をした。そうしてであった。
村人達はアミーナとエルヴィーノを囲んで。そうして言うのだった。
「さあ、今から」
「教会に行こう」
「いいね」
こう言うのである。
「いいね、これからね」
「皆でね」
「そうして本当の幸せの中に浸ろう」
「何という喜び」
アミーナはその彼等の言葉を聞いて思わず言った。
「これは本当のことなのね」
「そうだよ。本当のことだよ」
「真実なのよ」
皆もそれを告げた。
「だからね。皆でね」
「楽しくやろうよ」
「神の御前で祝福を」
「今私を満たしている喜びは」
アミーナも歓喜の言葉を出す。
「誰にも考えられるものではないわ。自分でさえ信じることができない程よ」
「アミーナ、そこまで」
「そうよ、エルヴィーノ」
また彼に対して告げる。その歓喜の顔で。
「けれど私は貴方を」
「信じてくれるんだね」
「ええ、そうよ」
まさにそうだというのである。
「だからね、今は」
「今は?」
「私を抱擁して」
そうしてくれというのだ。
「そして永遠に一つの希望に結ばれて」
「そしてその希望と一緒に:
「私達が暮らす大地の上に愛の天国を造りましょう」
「うん、その為にも今は」
「教会へ」
「全ての誤解は解け幸せがはじまる」
伯爵が言った。
「さあ、それじゃあ」
「教会にですね」
「うん、皆で行こう」
こうテレサに応えてであった。皆を教会に誘う。誰もが満面の笑顔でその教会に向かい。アミーナとエルヴィーノの永遠の幸せを祝福するのだった。
夢遊病の女 完
2010・1・3
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