八条学園怪異譚
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第二十九話 神社の巫女その七
「だからね」
「そう言ってたわね、前」
「愛実ちゃんが私にコンプレックス持ってるとか思わなかったわ」
「私もよ」
本当にこれはお互いだった、夢にも思っていなかったのだ。
「全然ね」
「お互いだったのね」
「どうしてかしら」
二人で話す、そのうえで。
愛実は深刻な顔になってそのうえで聖花に言った。
「人って誰でもよね」
「うん、そうよね」
「いい部分と悪い部分があるのね」
「だからいい人でも一概に全部いい筈がないし」
「ええ」
自分と同じ顔になっている聖花の言葉に頷く。
「だからその先輩もね」
「いい人でも、みたいね」
「とにかく面倒な娘だ」
大天狗はこのことを強調する。
「ついでに言えば無類の酒好きで尚且つ非常に酒癖が悪い」
「それかなりマイナスですね」
聖花はまだ会ったことのない先輩の酒癖のことを聞いて言った。
「お酒を好きなのはいいとして」
「とかく酒癖が悪くてな」
「どんな感じですか?」
愛実もそのことについて問うた。
「先輩の酒癖って」
「絡む」
大天狗は言った。
「笑う、泣く、暴れる」
「無茶苦茶なんですね」
「しかも飲む時には食べられるものは何でも口に入れる」
「例えば日本酒におはぎとか?」
愛実はどう考えても合わない組み合わせをあえて出した。
「そんなのですか?」
「そんなものは序の口だ」
この最悪の組み合わせでもまだまだというのだ。
「とにかく有り得ないものを食べるのだ」
「お酒に合わないものをですね」
「酒癖の悪さは極めつけだ」
大天狗は困った顔になっていた。
「お嬢のそれはな」
「何かお会いするのが怖いですね」
愛実は先程とはまた違う真剣な顔で述べた。
「その先輩と」
「酒を飲んでいなくても面倒なところが多いが」
「やっぱり面倒なんですね」
「しかし決して悪い娘ではない」
それはないというのだ。
「意地悪なことをしたり威張ったりはしない」
「そういうことはしないんですね」
「ついでに言えば面倒見がよくて公平で正義感も確かだ」
「基本的に悪い人じゃないんですね」
「尚且つ人としての器も大きい」
このプラス要素もあった。
「基本はいいのだ」
「けれど面倒なんですね」
「ムラッ気も強い」
これは問題点と言えるであろう、場合によっては。
「ついでに言えば名前のことはかなり気にしている。ファッションセンスも首を捻る」
「本当に面倒な人だってことはわかりました」
「それもかなり」
二人で応える。
「というか本当にどんな人か」
「心配になってきました」
「心配してくれていい」
それに値する人物だというのだ。
「わし等も困っておる」
「まあ悪い人じゃないことは安心できますね」
「そのことは」
二人はプラスに考えることにした。
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