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八条学園怪異譚

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第二十九話 神社の巫女その八

「とりあえず神社に行ってそれで」
「また泉探しますね」
「絶対にあるぞ」
 博士も言って来る。
「それはな」
「この学園の何処かにですね」
「それは間違いないですよね」
「何処かに絶対にある」
 このことは間違いないというのだ。
「ただ、何処にあるかはな」
「探すしかないですね」
「これから」
「頑張ってくれ」
 博士は二人にエールも送った。
「わしもまだ見つけられぬ、それにじゃ」
「それに?」
「それにっていいますと」
「あっさり見つかって面白いかのう」
 二人に思わせ振りな笑顔を見せての言葉である。
「どうじゃ、それは」
「ううん、言われますと」
「それもですね」
「中々見つからないからこそ面白いのじゃ」
 博士はその白髭に覆われた狆の様な顔を綻ばさせて言う。
「簡単なものは面白くとも何ともないわ」
「何か博士が仰ると説得力ありますね」
 ろく子が横から首を伸ばして言って来た。
「余計に」
「うむ、学問も然りじゃ」
「中々わからないからですね」
「学問は迷路じゃよ」
 今度はういろう、白のそれを食べながら言う。
「出口が中々見つからないな」
「どの学問もですね」
「しかも終わりがない」
 こうも言い加えた。
「それ故に面白いのじゃよ」
「博士でもそう仰るんですね」
「仙人みたいになられても」
「仙人か、仙人が千人いてもわからぬことや知らぬことはあるぞ」 
 博士は面白いとは言えない駄洒落も入れた。
「しっかりとな」
「今の駄洒落はともかくとしてそうなんですね」
「誰でもわからないこととかあるんですね」
「人の知識は大海の中の一滴じゃ」
 それに過ぎないというのだ。
「人間なぞ所詮大したものではない」
「ううん、博士でもですか」
「仙人になってもそうなんですね」
「いや、わしは仙人ではないぞ」
 このことは否定する。
「ついでに言えば魔術師でも陰陽師でもないぞ」
「あれっ、違ったんですか?」
「けれど魔術や陰陽道にも詳しいですよね」
 無論仙術にもだ。博士の知識はそうした分野に関してもかなり深い。
「賢者の石も持っておられますし」
「そういうのを見たら」
「賢者の石は錬金術じゃ」
 だから魔術や陰陽道とはまた違うというのだ。
「わしは知識だけで術は使えぬ、錬金術はマスターしておるがな」
「じゃあ錬金術師なんですね」
「仙人や魔術師じゃなくても」
「そうなるかのう。しかし錬金術は仙術や魔術と重なるが少し違う」
 また別のものだというのだ。
「ついでに言えば超能力でもない」
「じゃあ何ですか?」
 愛実は怪訝な顔になって博士に錬金術のことを具体的に問うた。 
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