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俺屍からネギま

作者:ゴン
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関西遠征隊

関西呪術協会 総本山



現在、関西呪術協会の幹部がかつてない緊張状態で一同に会している。
それは先日、関東魔法協会の理事長・近衛 近右衛門よりメセンブリーナ連合からの徴兵令状が届いたのである。

「何故我らが奴らの戦争に巻き込まれる!我らは行かんぞ!」

「おう、その通りだ!魔法使いの手足となるなどゴメンだぁ!」

「ぬらりひょんがどの口を開く!」

「「そうだそうだ!」」

何人かの幹部が徴兵に反対するとほぼ全ての者たちが頷いている。
以前より関係悪化の一途を辿っている魔法使いそして近右衛門からの横暴に皆が怒りの声をあげている。
拒否する事は簡単だ…

しかし拒否した際、関東魔法協会…いやメセンブリーナ連合との戦争は必死だ。
ヘラス帝国との戦争があるから安心とは言えない。
それだけの戦力差が彼等とあるのだ…帝国と戦争前に関西を倒す事も連合にとっては不可能ではない。戦争前でなくても戦争後に報復と称して関西を攻撃してくる可能性は充分にありえる…いや、必ず戦争になるであろう。


最もそれが分かっているからこそ、木乃実は直ぐに拒否はせずに幹部連で話し合いをしているのだが……

(…皆、感情だけでどうなるのかあんま考えてないなぁ〜。……分かってるのはいや、見ている者はほんの数人か…まぁ居ないよりはええか……………詠春はんの事もあるからウチや冬凰はんから話を切り出す訳にもいかんのやが……………さて、話しを進めなあかんな。…蔵之介はん)
木乃実は現実を直視出来ていない幹部連に呆れながらも、話し合いを進めるべく蔵之介に目配せを行う。

蔵之介が頷くとやや前に出る、すると話し込んでいた者達は蔵之介に気づくと一斉に注目する。

「皆の者!魔法使いや近右衛門に関して思う所はそれぞれあるであろうが、ここは一つ関西呪術協会の事を第一として皆の意見を聞きたい!!」



「意見も何も徴兵応じる必要は無い!こんな下らん事を長々と話す必要は無い!!」

「………………」
一人が大きな声で拒否を唱えると多くの幹部が頷き同意を示す。


皆が戦争何かに行きたくはないし、行かせたくはないのだ……当然だ、戦争に行った者は心身共に傷付き酷ければ死ぬ。戦争に行かない者も少ない人数で家族を、仲間を、そして日本を守る為に戦う。
どちらにしても人は傷付き、悲しむ……誰もが嫌なのだ。


しかし悲しみに目を背けては関西呪術協会の為にはならない。



「おい、お前ら一体何考えてるんだ。」
怒気を多分に含んだ言葉に歴戦の幹部連も冷汗をかきながらその声の方見る。


一人の幹部が勇気を出して未だ全身から怒気を出している人物に声をかける。
「て、哲心殿…今の発言はどう言った意味でしょうか?」

「ああぁ…」

ビクッ



「お前ら蔵之介殿話を聞いていたのか?関西呪術協会の事を第一って言ってたろーがぁ」


「そ、そんな事は分かっています!だからこそ反対しているんです戦争なんて行けません。」

「お前らもか?」



「お前らの気持ちは良く分かる…魔法世界の戦争何てヤってられねー!…だがな、行かなきゃメセンブリーナ連合との戦争が始まるだろう…今か後かは関係ない、奴らとの戦争は必死だ……そうなりゃ奴らは日本を完全に掌握する為に我らを完膚なきまでに叩き潰すであろう。」

「しかしメセンブリーナ連合が勝つとは限らないでしょう!帝国が勝つ事も十分に考えられます、仮に帝国が勝てなくても共倒れするでしょう。」

「その通り!そうなれば我らが漁夫の利を得ることも不可能では無いはず、御陵の御当主とも在ろう方が何たる弱気!」


ドンッ


一瞬にして空気が重くなる程の重圧を感じる……その原因はやはりこの人


「哲心殿、落ち着かれよ…これでは話す事も憚りますゆえ……。」

「これは蔵之介殿、失礼した………しかしながら先程から楽観的な意見が多く現実がキチンと見えていないのです。」

「哲心殿、それは違いますよ…彼らもホントは分かっているのです。しかし人とは楽観的に物事を見たいのですよ……なぁ皆の衆。」

「「「「「…………」」」」」

「あの、一つだけ確認したい事があります…」

「ん?何かな申してみよ」

「既に戦争には青山 詠春 と思われる者が参戦しており、その事がメセンブリーナ連合からの徴兵に繋がっておると言う噂がありますがどうなのでしょうか?」

とある一人の発言により他の幹部連の目が鋭くなった…彼らも何処からか入ってきた噂の真偽を知りたかった様だ。



それはそうだ…

長である木乃実の婚約者であり青山宗家の養子が本山に断りも無く戦争に参加し、その事が原因で自分達も参加させられる……

舐めるな…自分達は木乃実と詠春の為に戦場になぞ出ん!

これが全ての幹部連が大なり小なり思っている事だ。

彼等は皆、関西の為に、日の本の為に死ねる…当たり前だ

彼等は明治維新より、対魔法使い・麻帆良奪還を誓い…生きてきたのだ、大願の為に……



「皆に色々と話がいっているようやが、詠春はんの事はほんまや…その事でぬらりひょんから徴兵の話が来た。けどそれはキッカケに過ぎひん…遅かれ早かれ奴ら言ってきたやろ、それは皆も分かってるハズや…。」

「………」
木乃実の言葉に幹部連は口を挟まなかった。挟めなかった事もあるが、幹部連も分かっているのだ……戦争参加は拒めない、拒めば関西は倒れる…

「徴兵には応じる…詠春はんの為やない、関西の為にな……皆もええな!」

「「「「「ははっ!」」」」」

「うん、それで行く人選やけど…三百人を予定している。冬凰はん……詠春はんの事もあるから一門で五十人は出してもらうで」

「承知しました。」

「木乃実様、我が一族(御陵一族)からは大人数は難しいので私が率いましょう…何、一族の事なら心配無用です。陣が居りますし……」

バタンッ

突然、襖が開く音がすると皆が音の方向に振り返る

「陣!!ここは幹部会議だぞ、一体何している!?」

「立ち聞きしてたけど…我慢ならんから出て来た。」
哲心の怒声はいきなり入ってきた乱入者である息子・陣に浴びせられたが陣はイラつきながらも物ともせずに中央に座る。

「…陣くん、何してんねん。これは遊びやないんやで…」
木乃実は珍しく怒気を発しながら陣を睨む。

「分かっています…戦争への参加の事も……しかし、父・哲心の参加は考え直して頂きたい。」

「何言っている!?幹部である私が行ってこそ関西は一枚岩であり続けるにだぞ!」

「だが、親父が関西を離れればぬらりひょんに漬け込まれるぞ…日の本最強・御陵 哲心がいるからこそ奴も手が出ないでいるんだ。関西の為には親父が残る必要があるんだ……親父、耐えてくれ」

「なればどうする気だ…我が一族(御陵一族)は知っての通り少数精鋭だ、故に一族の人間だけで無く当主であるワシ自身が皆を引っ張る必要があるんだ!」

「俺が行く。」

「あっ?」

「えっ?」

「あー陣くん何言っているか分かってる?」
陣の突拍子もない発言に皆一様にポカンとした顔となる。

「ええもちろん…御陵の当主が自身の息子を死地に出したとあらば皆も一目を置くしぬらりひょんも関西には手が出せない。」

「それはそうやけど…て、哲心はん?」

「………ワシに…卑怯者になれと言うのか!?息子を死地に送り自身は安全な地にいる卑怯者に!?」

「……関西を守る為だ、汚名ぐらい何て事はねーだろ?大事な物は何か…関西を守り、戦争へ行った者を守る……その為に親父が何処にいて、俺がどっちにいればいいのか…」


「確かに哲心殿居ないとなればぬらりひょんが必ず何かやって来るだろう…」

「それに若の実力は誰もが知っているし……」

「本山の人員が減ればどちらにしろ各自の負担は増大するか…」

「ああ、確かに盲点だったが……」

「何言っている!?戦争の方が危険に決まっているだろうが!」

「その通りだ!若とは言え、子どもを戦場におくったとあらば我らの沽券に関わる!」

陣と哲心と話を聞いた幹部連は討論し合っていたが、とある幹部が言った‘沽券’と言う言葉に陣が反応を示す。

「沽券とか、そんなもんに拘って…関西を潰すな。」
陣の言葉に幹部連は押し黙る…

「本気か…死んでしまうかもしれんぞ、お前は御陵を、関西呪術協会(関西)を背負って立つ漢になるんだぞ!」

「生半可な気持ちでこんな事言えるか……時期に弟か妹が生まれるだろ?御陵はそいつに頼め…関西呪術協会の事は鶴子や千草、刀子がいる。……親父、木乃実様、御決断を…。」


木乃実は蔵之介、哲心と顔を見合わせるとやれやれと言った風に頭を振る……

「ほな、御陵一族からは陣くんに参加してもらう…哲心はんには残って関西呪術協会を守ってもらう、それでええな…」

「はい…」

その後決まった事は以下のことである。
関西呪術協会の選抜三百人がメセンブリーナ連合への徴兵に応じる。
関西遠征隊と称された部隊は千草の父親・幹部の天ヶ崎 千里(せんり)が率いる事となった。
陣は関西遠征隊の副隊長を襲名
御陵一族より数人、青山一門から五十人を徴兵、残りは他の幹部や末端の者から選別していく。





その晩、御陵館…大広間
「全くお前と言う奴は…勝手に戦争参加、気付いたら副隊長就任…何やってんだ?しかも新撰組不参戦って……」

「新撰組は元々京の治安維持部隊だその部隊が京から離れちゃぁ元祖から誠の旗と新撰組の名前を貰った先祖に顔向け出来るかぃ。親父も分かってるんだろ?」

「まぁその通り何だが………ハァーはるにも怒られちまったしなぁ、これから大変だよ。お前も無駄に命張るんじゃねーぞ、お前だけの命じゃねーんだからな…それにもうすぐお前の弟か妹が生まれるんだからな。」

「ああ、親父も頼んだぜ…俺たちが帰ってくる場所を守ってくれ。」
哲心と陣はお互いに言葉を掛け合うが、そこは親子というよりも漢同士と言った具合であった。


「おおそうだ、これから戦場に行くのにその刀では不安だろう…コレを持っていけ。」

「別に言いってのに…ん?」
哲心はこれから戦場に向う息子にせめての思いで、一本の刀を差し出した。

「これは……何て刀、いや剣と言ったところか、しかも妖刀・魔剣・神剣の様に並みのモンじゃねー。」

「驚いたか、コレは俺のひい曾祖父さんが沖縄の先っちょで見つけた魔剣・クサナギだ!気か魔力を込める事で空を飛べるだぞ!しかも込めたぶんだけ速くなり、光速を超えるとか、宇宙に行けるだとか言われているんだぞ」

「へーへーー」
哲心が出した魔剣・クサナギはこの世の物とは思えない素晴らしい代物であったが、哲心の説明を聞いた陣は嘘っぽそうな顔で返事をする。

「おいホントだぞ!?ひい曾祖父さんが武者修行の旅に出た際にだな……」

「分かった分かった…もう遅いから寝るわ、お休み。」

「おいこら、待たんかって……もう居ない、ハァ………一月後か………ご先祖様どうか我が息子をお守りください。」
陣が居なくなった後、哲心は陣の無事を祈った。





その後暫くはばたついた日が続き、気づけば魔法世界へ出発する三日前となった。

陣はただ一人落ち着く場所を探して本山近くの川辺に来ており…陣は川辺の岩に座っていた。

そこに一人の客人が来た…

「こんな所におったんやね…」

「鶴子…あぁ静かなトコだよなー此処は」

「そうやね…隣座るで………あと少しやね…恐くない?」

「まだそこまで実感は湧かね〜な、緊張はしてるけど…恐さかどうかは分からね〜。」

「そっか………」
二人の間に静けさが漂い、風の音や水の流れる音が辺りに響いている。
二人の心地良い雰囲気が流れる中、陣が鶴子に話しかける。



「鶴子、次期に弟妹が生まれるんだが俺は居ねーだから弟妹の事を姉の様に見守ちゃぁくれねーか?」

「…あぁ任しとき、あんたが帰って来るまで弟妹の事も、孤児院の子達の事も、関西の事も全部ウチが守ったるわぁ!」
陣の頼みに鶴子は力強く答えた…その後二人は他愛もない話をして盛り上がった。
これから戦場に行くとは思えない程、陣は心を落ち着けていた……




「さてと、そろそろ行くか……」

「…んっ……」
二人は小一時間程話すと立ち上がった。

「なぁ……出発の日には来んのか?」

「ああ…父さまと一緒に見送りに行くつもりや」

「そうか、そういやぁーンな事も言ってたっけな…」

「千草や刀子には会ったんか?」

「ああ、千里さんとの会合があってそん時に千草とはあったよ…千里さんが行くって知って泣いてたけど、俺が守るって言ったら泣き止んだよ。刀子には一週間程前に本山に行った時に会った…何でも冬凰さんのお使いで来たそうだけど……どうした?」
千草や刀子と会った時の事を思い出していると、鶴子が苛ついているのが分かった。


「何でも内容ないわぁ!(刀子はともかく千草の奴!ウチに内緒にしよってからに〜!)…………取り敢えず、陣はん…」
鶴子は自分が知らない内に親友の千草や妹分の刀子が陣と話していた事、そして自分に内緒にしていた事に苛ついていたが、今日伝えたい事を伝えなければと思い呼びとめるが続きが出て来ない…

「……どうした?」

(うぅ〜何て言えばいいんやろ……何やモヤモヤしたこの気持ちを伝えなぁ思ってたけど………どないしよぉ〜〜!)

思い悩んでる鶴子を知ってか知らずか陣が話し掛ける。

「そういやぁ〜千草や刀子が言ってたな、鶴子が伝えたい事があるって……」

(あ……あ、あいつらぁ〜〜!)
鶴子は友人達が自分の考えを見透かしていた事に驚きつつ顔が真っ赤になっていた

「ふふっそんでその時言われたよ。言いづらそうにしてたら背中を押してやれってな………ほらっ」
陣はいたずら好きの子供の様な笑顔で鶴子を抱きしめた

「なっ……なにすんねん!?」
鶴子は更に顔が紅くなり慌てていた。

「鶴子、今までありがとな…」

「なにもう最後みたいなセリフ言ってんねん……帰って来るんやろ?」

「ああ…けど、どの位掛かるのか分からねー。だから言いたい事を言ってくれ…」

「………ばか……バカに言う事は無いなぁ〜………帰って来たらいったるから、帰って来てから言うから帰って来たら言うから…絶対、帰って来るんやで……ぐすっ」
鶴子は泣きながらも気丈に振る舞うがその表情は崩れる寸前であった。

「おう、約束するよ……絶対に帰ってくる、だからその時は聞かせてくれよな?」
二人は鶴子が泣き止むまでの暫くの間、日が傾く位まで抱き合っていた。






こうして三日後、天ヶ崎千里率いる関西遠征隊三百人は魔法世界に旅立った。

数々の思惑がありながらも関西遠征隊は魔法世界に……魔法世界を二分する大分烈戦争に参加する…果たして彼らの内、一体どれ程の人間が帰ってくるのであろうか………





関西呪術協会本山

(………やっと終わったな、長かったな…何とか詠春はんは切らなかったけど、次は大丈夫やろか?………うちは詠春はんと関西呪術協会のどっちをとるんやろ………惚れた弱みやろうか?ごめんな陣くんを死地へ送ってもうた。でも皆が帰ってくる場所は必ず守って見せるで!)




麻帆良学園都市 理事長室

「ふぉっふぉっふぉ、そうか関西者が出発したか……まさか御陵哲心で無くその倅出て来るのは予想外だったな。哲心が行っておれば強引に関西を取り込もうと思ったんだが…まぁ良い、その倅もかなり出来ると聞いているし…戦力的に弱くはあるまい。」

「ハイ、我らは小鬼などと呼んでいますが実力は認めていますから……そう言えば詠春殿は紅き翼なる組織に入って大変な活躍しているそうです。」


「そうかそうか!では連合に話して関西遠征隊を色々と戦場に出してもらうするかい……そして直ぐに増援を送ってもらえば良いのう〜!よし、もう下がってもらってええぞぃ。」

「ハイ、失礼しました。」
部下が出て行ったのを確認すると近右衛門は力を抜く


「……ふー、面倒ではあったが婿殿(詠春)を魔法世界にやって良かったわい…婿殿の性格なら必ず首を突っ込むと思ったわい。木乃実も良き人形(詠春)に惚れたもんじゃわい………ふぉっふぉっふぉ」









関西遠征隊が魔法世界に旅立って翌月…御陵一族にお目出度い出来事があった。



「ウォーはる!良くやったぞ元気な赤子じゃあ!」

「おめでとうございます、当主様!何と第二子は可愛らしい女の子ですよ!!」
はしゃぐ哲心に生まれた子が女の子だとイツ花が伝える。

「おおそうか!はる見えるか?」

「はい、よく見えます……あなた、名前は決まっているんですか?」

「おお決まっているとも…陣の時は初代様の名前を頂いたからのこの子には、彼の方(・・・)の名前を頂こうと思ってな…」

「それで御名前は………?」

「名前は……!?」

「名前は!?」
焦らす哲心にはるやイツ花だけでなく周りにいた者たちも囃し立て

「うむ、名前はな………………………だ!」


「「「「「オオオーーー!!」」」」」



御陵 哲心の第二子となる女の子が誕生……遠征隊が出発して以来落ち込みがちであった皆の気持ちが第二子誕生により湧き立つ。
以来、生まれた女の子は御陵一族だけじゃなく関西呪術協会の面々から大きな愛情を受けて育って行く。

 
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