DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
第7話:感動的な家族の再会劇
(エンドール)
シンSIDE
リューノちゃんが涙を流しながら売ってくれたイヤリングのお陰で、俺達は5000ゴールドを手に入れる事が出来、旅支度を調える事が出来た。
とても大事なお金だ……無駄遣いは出来ない。
節約の為、宿代以外は薬草を数個買うだけにしようと思ったのだけど、リューノちゃんが『回復アイテムは私が持ってるから、シンは装備を揃えなさい!』って言われ、恐縮ながら“鱗の盾”を買わせてもらいました。
何でもリューノちゃんの使う鞭には、彼女のお父さんが細工をしたらしく、グリップエンドに“賢者の石”という回復アイテムが付いているらしい。
鞭に慣れない最初の頃、自身を傷付けてしまったので、鞭を振るうたびに回復できるようお父さんが改造したとか……
そんな訳で気力体力を回復した俺達は、颯爽とエンドールという町へ訪れました。
このエンドールとは、ブランカ王国の西に位置し、稀代の大商人トルネコさんが開通させたトンネルを通って行き来する事が出来る土地です。
着いて早々リューノちゃんのお父さんについて、情報を集め回ったところ『良く当たる占い師が居るから、彼女に聞いてみると良いかもよ』って言われ、所謂女の子には占いはどんな情報よりも信頼が置けるらしく、直ぐさま向かう事になりました。
俺個人は胡散臭そうに思ったのですが……
そして占いの館があるという場所にやって来ると、突然リューノちゃんが男性に向かって走り出し、泣きながら抱き付いたのです!
最初はお父さんに再会出来たのかと思ったのですが、良く見れば男性はかなり若い方で、彼女も『お父さん』とは言わず『ウルフ』と言って抱き付いてました。
あぁ…彼氏なのかもしれないと、和やかな気持ちで見ていましたが……
我に返ったリューノちゃんは『はっ! な、何を馴れ馴れしく抱き付いてんだコノヤロー!』と男性の鳩尾に強烈な一撃を喰らわせました!
基本的に身勝手な少女だと感じてましたが、これ程までとは予想外です。
ウルフさんと呼ばれた男性も、お連れの美しい女性に背中をさすられ身悶えてます。
「な、何だ…こ、この……理不尽な…暴力は……」
うん。全くその通りだと俺も思う……でもそれを口に出して彼女を怒らすのは避けるべきだろう。
「てめ~……この馬鹿娘……こっちが優しくしてやりゃ付け上がりやがって! リュカさんの娘じゃなかったら、今頃スカート捲り上げてパンツ拝んでやるところだぞ!」
「ふざけんな馬鹿ウルフ! そんな事は常日頃から色んな娘に行っているお前の悪行だろ!」
「人聞きの悪い事言うんじゃねーよ! 俺が何時そんな事をしまくった!? お前の母ちゃんに“オッパイ揉ませて”って言っただけだろが!」
「そんなこと言ったのかコノヤロー! 十分有罪じゃねーか!」
「何だ有罪って? 無罪じゃボケェ! お前の母ちゃんは頭が緩いから、ちょっと試しただけだよバ~カ!」
「お、お前……言うに事欠いてお母さんの事を悪く言ったな! 妹の事を悪く言っても良いが、両親と私の事を悪く言うのは許さん!」
た、大変だ……
折角再会出来たお知り合いなのだろうに、お互いにもの凄い罵り合いを始めちゃったぞ!
どうしよう……周囲にギャラリーが増えてきた!
「こら、お店の前で騒いじゃ迷惑でしょ! 少し頭を冷やす為に家に入りなさい!」
直ぐ側のお店から出てきた綺麗な女性の方が、大声で罵り会う二人の耳を摘み、引きずる様に室内へと連れて行く……
誰だか分からないけど助かります。
さて……
綺麗な女性の機転で室内へ入っていった二人を追い、俺達もお店の中に入らせてもらいました。
先に入った二人は、さぞかし険悪な雰囲気で睨み合っているのだと思いましたが…
「んで……リューノも一人で放り出されたってワケ?」
「ウルフも!? 参るわよね……家族纏めて巻き込んだのだから、この世界に登場するのも纏めておいてほしいわよ!」
女性の方が用意してくれたお茶を飲みながら、テーブルに向かい合って座りノンビリ近況報告をしている二人……
先程の剣幕は何だったのだろう?
「あの……仲がよろしいんですね……ご紹介していただけないのですか?」
ウルフさんと一緒にいた女性が、遠慮がちに話しかける。
こう言う場合、リューノちゃんが俺を紹介してくれるまで黙っていた方が良いのかな?
「あ、そうですね! 遅れましたが紹介します。ミネアさん、この美少女が俺の師匠の娘リューノです。娘って言っても、師匠が愛人に生ませた娘だから、俺の彼女のマリーとは腹違いになるんですけどね」
へーそうなんだ……
リューノちゃんて結構複雑な家庭に生まれたんだな。
でも本当の両親が居るって羨ましい……
「今度は私から……シン、このイケメンがウルフよ。私の妹と付き合っている、お父さんの弟子で部下な優秀野郎よ! 頭も顔も良いけど、性格と女の趣味が最悪なの……シンは真似しちゃ絶対ダメよ!」
何だろう……本当は仲が良いのかな?
意外にお互いとも、褒め認め合っている。
俺が呆然とウルフさんを見ていると、爽やかに「よっ!」って片手を上げて挨拶してくれた。
真似しちゃダメって言うけど、格好いいよなぁ……
「それから、此方の美女はミネアさんです。ちょっと色々訳あって、キングレオ地方から逃げてきました。もう一人マーニャさんって言う、見た目そっくりな双子のお姉さんが居るけど、多分今はカジノで散財してる……もうマジでソックリなのは見た目だけだから!」
「どこの双子も同じね! まぁいいわ……こっちの頼り無いイケメンはシン。何でも伝説の勇者なんだってさ……だから暮らしていた村が魔族に滅ぼされたの。悔しくて仕返ししたいから、早くお父さんに合流しようとエンドールまで来たのよ」
「あ、貴方が勇者様ですか!?」
「おわっ! ど、どうしたのミネアさん突然に……」
突如ウルフさんと行動を共にしてきたミネアさんという美女が、俺の顔を覗き込む様に見詰め可愛い笑顔で話しかけてくる。
「あの私……以前に自分を占った事があるんですが……その時に伝説の勇者様の事が何となく見えてきたんです。勇者様と共に旅立ち、世界を平和にする未来が見えたんです!」
占いで言われてもなぁ……
「なるほど……伝説の勇者の下にリューノが送り込まれた……そして、その未来を予見しているミネアさんの下には俺が……」
ミネアさんの言葉を聞き、ウルフさんが何やら考え込んでいる。
その姿は本当に格好いい。
「なぁみんな……これは俺の推測なんだけど……勇者と共に世界を平和にする者達の下に、俺達異時代の人間は飛ばされたのかもしれない! 勇者の仲間全員が集まれば、そこに俺達家族も集結するのかも……」
「なるほどね。つまり私達は、シンを中心に旅をし続ければ良いってワケね!」
「流石リュカさんの娘…理解が早くて助かる!」
占いを基に結論を導き出したけど……本当にそれで合ってるのかな?
俺……自分がそんなに凄い人物だとは思えないんだけどなぁ……
「ところで……もう一人紹介してほしい人が居るんだけど!」
「ネネさんの事かな?」
俺が自分について悩んでいると、仲の良い恋人同士みたいに顔を近付け、同時にこの店の綺麗な女性店主に視線を向ける二人。
「なぁに……アンタの現地妻? とうとうそこまで師匠の真似を始めたの?」
「馬鹿じゃねーのお前……リュカさんの真似をするんだったら、人妻に手ぇ出しちゃダメだろう! あの人は血縁と他人の女には手を出さないのだから……」
何だそれは!?
一体どんな男なんだろうウルフさんの師匠って……ってか、リューノちゃんのお父さんなんだよね!?
あぁ……だから“腹違いの”って表現が出てくる家庭なのか!
「この方はネネさん。この美人人妻愛妻弁当屋を切り盛りする貧乏人の味方! そして此方の利発そうなお子さんが、息子さんのポポロ君。素直で良い子な、お兄ちゃんになってやりたい度ナンバー1の男の子だ。お前等姉妹とは正反対のな!」
「うるせー! 序列から行けば、アンタは私の義理の弟よ。分を弁えなさい!」
「何だとー! やろうと思えばリュリュさんを口説けるんだぞ!」
「はぁ~? アンタにリュリュ姉さんを口説き落とせるワケないでしょ! 寝言言ってんじゃないわよ」
何かまた喧嘩を始めちゃった二人……
どうやら本当に仲が良いみたいだな。
でも、もしかしてウルフさんって……ロリコン?
シンSIDE END
後書き
ウルフとリューノの罵り合い……
書いてて楽しかったよ。
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