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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第68話

麻生は非常に機嫌が悪くなっていた。
数時間前、開会式が始まる前だった。
美琴と上条が勝手な勝負を決め、さらに自分も巻き込まれて機嫌が悪くなっていた。
その時、チアガールの服にコスプレしている小萌先生が麻生達に駆け寄ってきた。
こうして見ると、小萌先生は本当に年上なのか非常に気になってしまう。

「みなさ~んー!!
 大変ですー!!」

慌てた表情をしているが、どこか嬉しそうな感じに見えた。

「実は私達の高校が開会式の選手宣誓に出る事が決まりましたですよー!!」

大覇星祭は学園都市の中でもかなり重要な行事だ。
なぜなら、全国に中継される。
これは「外」の人間が学園都市の世界をテレビ越しだが見る事になる。
能力を持った学生を子供達が見て、学園都市に興味を抱き入学してくる可能性が出てくる。
学園都市は学生が入ってこなかったら存続する事は出来ない。
故に、こういった見せ場をしっかり見せないと今後に関わってくる。
開会式の選手宣誓には学園都市の中でも名門校ばかり集まってくる。
さらに選手宣誓は超能力(レベル5)にやらせるという気合の入れようだ。
麻生達の高校は下から数える方が早いくらい、下の学校だ。
本来なら選手宣誓に出る事などありえないのだが、小萌先生は嬉しそうに説明を続ける。

「前に麻生ちゃんが常盤台に一時編入したですよねー。
 それが相手側の理事長さんが麻生ちゃんを大変に気に入ったらしいですー。
 今回その理事長さんの発言などがあり、我が校が開会式の選手宣誓に出る事に決まりましたのですー!!
 我が校、始まって以来の大出世ですー!!」

小萌先生は喜んでいるが麻生はその話を聞いた途端、何かとてつもなく嫌な予感を感じた。
麻生の直感力は凄まじい。
スキルで表すならAはいく。
簡単に説明するとランクAだと第六感はもはや未来予知に近い。
そんな凄まじい直感を持っている麻生が嫌な予感を感じたのだ、それは当たらない訳がない。

「その開会式を出るのは麻生ちゃんに決定しているのですー!」

それを聞いた瞬間、麻生を除く生徒達は心の中でガッツポーズをした。
なぜ、心の中でしかしないのかというと、その場でしてしまえば麻生からの報復が待っているからだ。
麻生は何かに耐えているような表情をしながら小萌先生に話しかける。

「一応、理由を聞いておきましょうか。
 どうして俺なんですか?」

「麻生ちゃんは前に一時編入をして、無事に帰ってきた生徒ですー。
 なので、周りの先生からは一目を置かれているのですよー。
 だから、先生が直々に麻生ちゃんを推薦したのですー。」

その言葉を聞いた瞬間、麻生の中で何かが切れた。
それを感じ取ったのか周りの生徒達は麻生の腕などを掴みながらも麻生を静める。

「お、落ち着け、落ち着くんだ、麻生恭介!!」

「そうだ、小萌先生は悪くない!!」

「あんな子供のような笑み、実際にはもはや子供だが、お前の為を思っての事なんだから怒りを鎮めるんだ!!」

本当なら彼ら生徒達も前日の夜で騒ぎ過ぎたせいで、一睡もしていないというグロッキーな状態だが、ヤバい雰囲気を出す麻生を見たらそうも言っていられなくなった。
生徒達の説得が効いたのか、小さくため息を吐く。

「どうせ、俺に拒否権はないんでしょう?」

「はいですー。」

舌打ちをして、選手宣誓の集合場所に向かう。
そして、今に至る。
自分の学校の旗を持ちながらも麻生は何度目になるか分からないため息を吐いた。

「そんなにため息を吐いていると幸せが逃げちゃうぞぉ。」

聞きなれた声が聞こえたと思い、後ろを振り向こうとしたが目の上から何かに覆われ、背中には柔らかい感触を感じた。

「だれ~だ?」

「・・・・・操祈だろ。」

「大当たり♪」

後ろにいたのは食蜂操祈。
麻生の両目を覆った両手を首の位置まで下げて、後ろから抱きつくような状態になっている。
周りの男子生徒からは殺意のような視線を感じたが麻生は無視する。

「どうしてお前が此処にいるんだ?」

「私は今回の選手宣誓をする超能力者(レベル5)として呼ばれたよ。」

「意外だな。
 お前はこういった事はしないと思っていたんだが。」

「最初はやる気がなかったんだけどぉ、ちょっと上の人とお話をしてする事にしたの♪」

操祈は自分の身体を麻生に押し付ける。
柔らかい感触が背中に強く感じる。
一般男児なら興奮するかもしれないが、何度も言うように麻生は普通ではない。

「暑いからさっさと離れろ。」

麻生がそう言うと渋々といった感じで麻生の背中から離れる。
すると、運営委員が選手宣誓の準備をするので整列するように、と指示が聞こえた。
操祈はまた後で♪、と言って自分の持ち場に戻る。
少ししてから、列が動き始める。
ドーム状のスタジアムの観客席には満席だろうか見渡す限り人で埋め尽くされていた。
テレビカメラも何台も設置されていて、麻生はそれだけ世間が注目している事を再認識する。
整列し終ると、二人の男女があらかじめ置いてある壇上の上に上がっていく。
一人は食蜂操祈。
もう一人は削板軍覇。
彼も超能力者(レベル5)で順位は第七位。
「原石」の一人でもあり、世界最大の「原石」であると言われている。
ひどく繊細かつ複雑で、それ故に研究者が手を出すこともできなかったという。
どういう原理で何が起こっているか全然わかっていないため、そもそも超能力者に分類していいのかさえ本来は不明とまで言われている。
麻生はその削板の周りで旗を掲げる。
二人が壇上に上がると、選手宣誓が始まる。

「「選手宣誓っ!!」」

「俺たち!!」

「私たちは」

「「スポーツマンシップにのっとって本年の大覇星祭に臨みっ」」

「「若人の夢と熱い血潮を力に換えて」」

何事もなく選手宣誓が終わると誰もが思っていた。
だが。

「消える事のない絆を・・・・絆を・・・あーなんだっけな。
 ま、いっか。
 消える事のない絆とかのいろいろは漲る根性でどうにかして!」

削板のアドリブが入った瞬間、教師達は嫌な予感がした。
もちろん、麻生も感じ取っている。

「日頃の鍛練と根性の成果を十分に発揮しっ!」

「日頃学んだ事の成果を発揮し・・・・」

「その雄姿と根性を性根の腐ったやつらに見せつけてっ!!」

「己の成長した姿を見せる事で父兄への感謝を表し・・・」

徐々に操祈の声も小さくなっていき、逆に削板の声が大きくなっていく。

「この大会が最高に根性の入った思い出になるよう、あらゆる困難障害艱難辛苦七転び八起きが立ちはだかろうとも!!」

すると、削板の背後に赤青黄色のカラフルな煙が集まっていく。

「全て根性で乗り切る事を誓うぜっ!!!」

削板が右手を振り上げた瞬間、削板の背後が爆発を起きた。
当然、後ろにいた生徒達は爆発の勢いで吹き飛んでしまった。
ある男以外は。
土煙が晴れるとそこに一本だけ旗を掲げている生徒が一人いた。
言わずもがな麻生恭介である。
削板の能力は不明だが、それを防ぐくらい麻生にとってどうという事はない。
はぁ~、と大きなため息を吐きながら麻生は依然と旗を掲げている。
一応、カメラも回っていて、この会場には麻生の両親もいるはずだ。
イライラ、が結構来ている麻生だが下手な行動をする事はできない。
開会式も終わったのかどうなのか分からないこの状況で麻生ができる事といえば、ただ自分の高校の旗を掲げるくらいしかできない。
削板が後ろを見るとただ一人だけ立っている麻生を見てにっこり、と笑みを浮かべて壇上から降りて麻生に近づいてくる。
何かしてくるのか?、と警戒する麻生に削板はこう言った。

「お前、すげぇ根性あるな!
 俺の名前は削板軍覇!
 お前は?」

「・・・・・・・麻生恭介。」

答えるつもりはなかったが、削板の予想外の発言に戸惑いながらも答えてしまう。
削板は恭介、恭介、と呟きながら麻生の肩をバシバシ!、と強く叩く。

「恭介だな。
 覚えたぜ、その名前。
 なぁ、これから根性について」

削板が何かを言おうとしたが、これで開会式を終了します、というアナウンスが流れる。
それを聞いた麻生は削板の言葉を聞かずに旗を持って、立ち去って行く。
自分の言葉を全く聞かなかった麻生に対して削板は気分を悪くするどころか、むしろ楽しそうな笑みを浮かべて言った。

「あいつ、根性がすげぇな!」

むしろ、麻生に感心しているようだった。
それが聞こえた麻生は疲れたようなため息を吐いて思った。

(また、変な奴と知り合ってしまった。)

その後、自分達のクラスに戻ると小萌先生が心配そうな顔をして麻生に近づいてきた。
どうやら、麻生があの爆発で怪我をしていないのか、心配なのだろう。
怪我一つない事を小萌先生に言って自分の出場する競技場に向かうのだった。 
 

 
後書き
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