三つのオレンジの恋
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第一幕その九
第一幕その九
「喧嘩に夢中になってそれで」
「奇麗なのに下着まで見せて」
王子は笑い続けている。
「それもあんなこけ方ってないよ」
「王子が笑ったぞ」
「はい」
王もパンタローネも顔を見合わせて言い合う。
「何ということじゃ」
「奇跡です、これは」
「王子様が笑われたぞ」
「しかもあれ程明るく」
他の者達もこれには驚いていた。
「いや、何と素晴らしい」
「全くですな」
皆このことに驚いたうえで喜んだ。二人を除いて。
「どういうことなの!?これは」
「魔法が解けたようです」
レアンドルが驚いているクラリーチェに対して告げていた。
「どうやら」
「あの魔女がパンツを見せたからなの?」
見ればファタ=モルガーナも上体を起こしたまま呆然となっている。相変わらずその見事な脚と下着を露わにさせたままであった。
「そのせいだっていうの!?」
「若しくはあの時の喧嘩に夢中になって」
「何てことなの」
事態を理解したクラリーチェは今度は忌々しげな顔になって呻いた。
「それでこんなことになるなんて」
「どうしましょうか」
レアンドルはおずおずと主に尋ねた。
「この事態は」
「様子を見守るしかないわ」
とりあえずはこう言うクラリーチェであった。
「今はね」
「左様ですか」
「魔法が解けたのは癪だけれど」
事実は事実として認めるしかないということだ。
「ファタ=モルガーナだってこのままじゃ終わらないでしょうしね」
「そうですな。それでは」
こうして二人は今は様子を見守ることにした。王子はなおも笑っている。
「しかもまだパンツも脚も見せたままだし」
「えっ・・・・・・」
王子の今の言葉で自分の状況に気付いたファタ=モルガーナだった。
「いけない、これじゃあ」
慌てて服を元に戻し隠すべきものを隠す。そうして立ち上がって身なりを整えて。そのうえでまだ笑っている王子をきっと見据えるのだった。
「見たわね」
「見たも何も見せてくれたじゃない」
王子の言う方が正解だった。
「違うの?それは」
「許さないわよ」
しかしこの場合正論は何にもなりはしなかった。かえってファタ=モルガーナを怒らせるだけであった。
彼女はその身体をワナワナと震わせそのうえで。右手から黒い星が付いたステッキを出してそれを王子に突き付けて叫んだのだった。
「呪われるがいいわ!」
「呪い!?」
「そうよ、三つのオレンジに恋をしなさい!」
怒りのまま叫んだのであった。
「そうして死ぬ程苦労して本当に死ぬがいいわ!」
「何っ!?まさか」
「あの女は」
ここで皆やっと気付いたのだった。
「まさか本物の」
「ファタ=モルガーナなの!?」
「さあ、王子よ」
呪いをかけ終えてもまだ怒っているファタ=モルガーナはさらに王子に対して告げる。
「そのオレンジを観つける旅の中で野垂れ死になさい!」
こう言うと彼女のいる場所に派手な爆発が起こった。そうしてその中に消え去ったのであった。
「消えた・・・・・・」
「じゃあやっぱり」
これではっきりとなった。彼女はやはりファタ=モルガーナだったのである。あの悪名高き。
「本物だったとはのう」
「全くです」
皆そのことに呆然となっている。それは王とパンタローネも同じであった。
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