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万華鏡

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第二十八話 浴衣その二

「この言葉」
「冗談ということにさせて下さい」
 里香は思わせ振りな目で誘う感じで笑う高見先輩に返した。
「というか浴衣に着替えられたんですね」
「五人共着替えたらええやん」
 高見先輩は五人にあらためて言う。
「そうしいや」
「それがいいけえ、七人で浴衣になるけえ」
「どうする?それは」
「そのことは」
 五人は顔を見合わせて話す。
「浴衣ねえ、もう男子の前には出ないし」
「それだったら」
「もう気兼ねなくお話出来るやない」
 高見先輩はややろれつの回らない関西弁で言う。
「そやったらや」
「ううん、じゃあね」
「今からね」
 五人で顔を見合わせてからだった、あらためて先輩達に顔を戻してそのうえで言った。
「少し待っていて下さいね」
「浴衣に着替えますから」
「出来れば顔向こうにやって欲しいですけれど」
「着替えますから」
「何言うとるんけえ、気兼ねはええんじゃ」
 宇野先輩はここでも広島弁だった。
「女の子同士じゃねえ」
「そや、何も心配いらへんで」
 高見先輩も岡山弁ではなく関西弁で話す。
「別にセクハラとかせんし」
「そやからな」
「けれど一旦下着になりますし」
「ですから」
「わかったけえ、じゃあ」
「私等向こうを向いておくで」
 先輩達は五人の言葉に応えた、そうしてだった。
 五人は先輩達が背を向けている間に浴衣に着替えた、それが終わってからその先輩達にあらためて言った。
「終わりました」
「お待たせしました」
「よし、じゃあ今から」
「はじめるで」
 先輩達はすぐに身体ごと振り向いた、そのうえで話をはじめた。
 七人は車座になって話す、その中で。
 彩夏は怪訝な顔になって高見先輩に尋ねた。
「先輩岡山からですよね」
「そやで」
 その通りだと笑顔で返してくる。
「いつも言うてる通りな」
「それで何で酔われると関西弁なんですか?」
「これお母さんが大阪生まれでなんや」
「あっ、そうだったんですか」
「お父さんは岡山生まれの岡山育ちやけど」
 それでもだというのだ。
「お母さん大阪生まれなんよ、住吉に育って」
「へえ、住吉なんですか」
「住吉大社のすぐ傍にお祖父ちゃん達のお家が今もあって」
 高見先輩は母親のことを話していく。
「そんで高校卒業して船場の方に就職して」
「難波の方ですね」
「そう、そこな」
 大阪の繁華街、まさにそこだった。
「そこで暫くおって。お父さんとお見合いして」
「お見合い結婚だったんですか」
「そうなんよ。二人共同じ会社におったんや」
「八条グループの系列の?」
「八条呉服店な」
 八条グループは呉服も扱っている、本店は京都にある。
「お父さん岡山店でお母さんはその船場、大阪店に勤めてて」
「その縁でなんですか」
「両方の上司がお見合いさせようって話になってお見合いして」 
 それでだというのだ。 
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