万華鏡
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第二十八話 浴衣その一
第二十八話 浴衣
五人が部屋に戻るともう布団が敷かれていた、七つきちんと。
その布団達で埋められた部屋で先輩達がいた、見れば。
二人共浴衣姿だ、その赤く火照った感じの顔でとろんとした目で五人を見てこう言ってきたのだ。
「ああ、今帰ったん」
「待ってたけえ」
布団の上に座って五人を見て言って来た。
「じゃあ今からお喋りするで」
「色々と聞きたいことあるけえ」
「あの、宇野先輩」
酒をかなり抜いて我を持っている琴乃は今の宇野先輩の格好を見て目を見張って言った。
「今のお姿は」
「何かあるんけえ?」
「ありますよ、あの片膝ついてますから」
右足をそうしている、それでだった。
「浴衣のところから脚丸見えですよ」
「あっ、そうじゃけえ?」
「付け根まで」
あともう少しでだった。
「見えてますから、そのままだと」
「安心してはいてるけえ」
「はいてても見えますよ」
見えてはいけないものが、というのだ。
「今の格好危な過ぎますよ」
「女同士だからいいけえ」
「よくありませんよ、危ないですよ」
琴乃が男なら非常に危ない姿だった、少なくとも部屋で二人きりだと堪えきれない男はいないまでにである。
「浴衣がちょっとずれたら」
「そこまで言うんなら」
「ちゃんと座って下さい」
琴乃の言葉は切実だった。
「お願いですから」
「わかったけえ、ほなな」
「本当にお願いします」
「もう、宇野ちゃんだらしないんやから」
高見先輩は座りなおす宇野先輩に横から抱きついて言う。
「もっとちゃんとせなあかんで」
「わしちゃんとしとるけえ」
「ちゃんとしてへんから言われるんやないの」
「そうなるけえ?」
「なってるんや」
こう甘い声で言う、その高見先輩はというと。
里香が顔を真っ赤にさせてそのうえで言った。
「あの、高見先輩も」
「うち脚出してへんで」
「胸が」
上の方だった、高見先輩の問題は。
胸のところが開いてそれで大きな胸が見えている、白いブラも。
里香はそれを見て琴乃と同じ様に顔を赤くさせて言ったのだ。その顔は酒と風呂でだけ赤くなっているのではなかった。
「丸見えですから」
「あっ、そうやったん」
「気をつけて下さい」
くれぐれもだというのだ。
「女同士ですけれど」
「そんな気にすることないと思うけど」
「目のやり場に困りますから」
だからだと返す里香だった。
「本当にお願いします」
「真面目やね、そこんとこ」
「真面目とかじゃなくて」
そうした問題ではなく、というのだ。
「あの、目のやり場が」
「またそう言うん」
「男子が見たらびっくりしますよ」
「ええ子やったらそのまま誘惑するで」
「それ冗談ですよね」
「冗談やと思う?」
浴衣のその上をなおしながら言う、宇野先輩からも離れる。
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