万華鏡
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第二十七話 江田島その十五
「何かね」
「凄かったわね」
「宇野先輩なんてね」
特に彼女がだった。
「広島弁出てたわね」
「ええ、普段標準語なのね」
「酔ったら出てくるのね、方言って」
「そうみたいね」
「あたしは別にさ」
沖縄生まれの美優が言って来た。
「出ないけれどな」
「美優ちゃん子供の頃に神戸来たのよね」
「ああ、そうだよ」
この八条町にだというのだ。
「来たよ」
「だから方言もね」
「こっちだからか」
神戸に、というのだ。
「あたしは沖縄の方言出ないんだな」
「先輩は高校の時からだから」
今二年だ、八条町に来てまだ一年半になるかならないかだ。
「だからね」
「それでなんだな」
「そう思うわ」
景子はこう考えていた、そして。
秋田生まれの彩夏にも顔を向けてこう言った。
「彩夏ちゃんもね」
「子供の頃からこっちだからなのね」
「うん、それでね」
だからだというのだ。
「方言がないのよ」
「秋田の言葉ね」
「秋田弁も癖強いわよね」
「東北の言葉はね」
実際にそうだと返す彩夏だった。
「強いわよ」
「そうよね」
「お父さんとお母さんは酔ったら結構出るわ」
その秋田の言葉がだというのだ。
「お兄ちゃんはそれ程じゃないけれど」
「あっ、うちもだよ」
また美優が言って来た。
「親はどっちも酔うと出るよ」
「沖縄の言葉がね」
「ああ、出るよ」
実際にそうだというのだ。
「半分何言ってるかわかないよ」
「そうなのね」
「沖縄の言葉も癖強いんだよ」
ちょっと聞いただけでは日本語ではないのではないのかとさえ思える程だ、そこまで標準語とは違っているのだ。
「ウチナーとかいってさ」
「ウチナンチュね」
「それが沖縄人って意味でさ」
これに対して日本本土の人間はヤマトンチューという。
「まああたしこの表現好きじゃないけどさ」
「どうしてなの?」
「変な奴来るんだよ、結構」
沖縄にだというのだ、美優は顔を顰めさせて話す。
「沖縄にさ」
「どういう人がなの?」
「沖縄は被害者とか本土の犠牲になったとか言う奴がさ」
「そういう人が来るの」
「で、ヤマトンチュがどうとか言うんだよ」
「確かそういう人って」
里香が言って来た、そうした人間のことを。
「運動家よね」
「それだよ、口では綺麗なこと言ってさ」
その実はというと。
「裏じゃ汚いことばかりやってるんだよ」
「そういう人って何故か北朝鮮とお付き合いがあるのよね」
「そう、あるんだよ」
実際にそうだというのだ。
「北朝鮮って特撮ものの悪役だよな」
「そのモデルになってるらしいわ」
これは実際にそうらしい、ある特撮番組の悪質な宇宙人のモデルになっていたのではないかとさえ思われる。
「砂浜でか弱い宇宙人を誘拐しようっていう」
「拉致、だよな」
「そう、それよ」
まさにそれだった。
「そのお話のモデルになったりしてたから」
「北朝鮮なんてな」
今では日本では子供でも知っている、北朝鮮がどういった国かは。
「とんでもない国だよな」
「関係している組織もね」
朝鮮総連のことだ、悪名高きテロ支援国家の出先機関だ。
そうした組織とだというのだ、美優は顔を顰めさせて語る。
「来てあえて言うからさ」
「口では綺麗事言ってもなのね」
「あたしも最初はいい人達かなって思ったけれど違うんだよ」
裏の顔、それがあったというのだ。
「とんでもない連中だよ、本当に」
「詐欺師は普段はいい顔をするから」
彩夏は真理を語る、自分から詐欺師だと名乗る人間なぞいない。
「気をつけないとね」
「全くだよな、じゃあ次は水風呂入って」
美優は言う。
「そこで思いきり冷やしてまた熱いお風呂に入ったら」
「うん、お酒かなりなくなるよ」
「せめて二日酔いはしないようにしないとな」
美優は今度は景子に応える。
「明日朝起きたらすぐに走るんだよな」
「そうよ」
所謂早朝ランニングだ、健康的ではある。
「走ってそれからサーキットトレーニングもしてから朝御飯だから」
「健康的だよな」
「朝早く起きていきなり走るから」
それでだと、景子は話していく。
「二日酔いはないに限るわね」
「だよな、じゃあ今のうちにお酒抜いておくか」
美優は言った、そしてだった。
五人共水風呂、凍る様な冷たさのそこに入って身体を冷やしきってからまた熱い風呂に入る、それを二回程繰り返して。
お酒をかなり抜いてから自分達の部屋に戻る、ただ五人は気付いていなかった。同じ部屋の先輩達も気が変わって風呂場に来ていた、そこで半端に酒を抜いていたのだ、かなり抜いた五人とは違ってそうしていたのだ。
第二十七話 完
2013・3・17
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