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三つのオレンジの恋

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第一幕その五


第一幕その五

「お祭で何か出来るわけはないわ」
「それでは」
「すぐにファタ=モルガーナを呼び出して」 
 クラリーチェはレアンドルに告げた。
「いいわね」
「はい」
 こうして二人は手を打った。その後で祭が開かれた。場所は王宮の中庭であった。雪が降る白い世界の中で王は王子と並んで座っている。そのうえで我が子を心配そうな顔で話しているのであった。
「祭で本当に上手くいくのか?」
「やってみないとわからないかと」
 王の横に立つパンタローネがこう答える。庭にはクラリーチェやレアンドルだけでなく多くの大臣た貴族達が揃っていた。そこにはあの悲劇役者に喜劇役者、詩人に呆けた者、ピエロ達も揃っていた。彼等はそれぞれの芝居や歌の打ち合わせに余念がなかった。
「そしてここでは」
「よし、そうしてだ」
「そのうえで皆で」
「盛り上げよう」
「頑張ってな」
 こんな話をして打ち合わせをしている。クラリーチェとレアンドルは隣にいる長い銀髪を後ろで束ねたファタ=モルガーナとあれこれと話をしている。
「それでだけれど」
「頼んだぞ」
「任せておくことよ」
 ファタ=モルガーナは自信に満ちた顔で二人に告げていた。
「私が来たからにはね」
「大丈夫なのね」
「何があろうとも」
「私を誰だと思っているのかしら」
 こんなことも言うのだった。
「私は地下の魔女よ」
「ええ」
「それはよくわかっているつもりだ」
「私の魔術には誰もあがらうことはできはしない」
 その自信はここでも健在だった。
「絶対にね」
「それじゃあ今も」
「頼んだぞ」
 こう言葉を交えさせてそのうえで祭が開かれるのを待っていた。やがて道化師が庭の真ん中に出て来てそのうえで一同に告げるのであった。
「さあさあ皆々様」
「おお、道化師だ」
「いよいよはじまるな」
 貴族達は彼の姿を認めてそれぞれ言った。
「さて、それじゃあ」
「何がはじまるかな」
「まずはこれを御覧下さい」
「やあやあどうもどうぞ」
「お邪魔します」
 まず出て来たのはピエロ達だった。それぞれ過渡やかに動き回りながらおどけてみせている。
「こうしてほいっ」
「どうでしょうか」
 逆立ちをしてそこから飛び跳ねたり奇妙なダンスを踊ったり。それが最初に一同の興味を引いた。
「これはかなり」
「見事な」
「今我々は明るく働き」
「明日の為に笑いましょう」
 今度は詩人達が出て来て歌う。呆けた者達は彼等の演奏に合わせて芸をしてみせる。
「ほいっと」
「はいっ」
 腹を見せるとそこには顔が描かれている。
 それを動かしてみせる。すると一同大笑いになった。
「おお、これは面白い」
「蛇も操ってみせているし」
 見れば蛇を出してそれを詩人に向ける。すると詩人達は演奏は続けているがびっくりした顔になって逃げ惑う芝居をしたのであった。
 
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