ヘタリア大帝国
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TURN70 ドクツ軍の崩壊その十一
「より数を多くしておくべきだったか」
「けれどドクツの国力では」
「済まない、倒れていた数ヶ月が仇になった」
まさにその数ヶ月が今の致命的な事態を招いてしまった、レーティアにとってもドクツにとっても悔やんでも悔やみきれないことだった。
「全ては私の責任だ」
「違うわ、全て貴女に頼り切っていたからよ」
グレシアも今ようやくわかった、ドクツ第三帝国がどういった国か。
「それで貴女に負担を強いて」
「だがそれは」
「ファンシズムの限界ね」
グレシアも痛感した、独裁体制の限界を。
「国は一人で動かすものじゃないのよ」
「その一人に多大な負担を強いるからか」
「ええ、それでね」
「私は自信があった、だからやってきたが」
「人には限界があるわ」
体力的にだ、如何に人類史上最大の天才でもだ。
「私もそのことに気付かなかった。迂闊にもね」
「私達は重大なことを見過ごしていたのだな」
「ええ、それでだけれど」
「ドクツのことか」
「もう終わりなのね」
「エイリスもソビエトも私達の降伏は許さない」
ここがイタリンと違う、戦争の主敵であり散々苦しめた相手だからだ。
「だからだ」
「私達は裁判にかけられて処刑でしょうね」
「絶対にそうなる」
「どうするの?私達が両軍に出れば皆は助かるわ」
自分達の命を出してだと、グレシアはレーティアに言った。
「そうする?」
「そうしたい。それが今のドクツにとって最良の選択だ」
「ええ、私達が犠牲になればね」
「だがそれは出来ない」
レーティアは今自分がいる窓の外を見た。その窓の向こうには。
ドクツの民衆達がいた、彼等は熱狂的に叫んでいた。
「ジークハイル!」
「ハイルアドルフ!」
レーティアを讃える言葉が木霊していた、その数は何百万いるかわからない。
「総統、最後まで戦います!」
「俺達は総統とずっと一緒です!」
「だから戦いましょう!」
「総統には指一本触れさせません!」
「私は愛されている」
レーティアは彼等の熱狂的な声を聞きながらグレシアに述べた。
「彼等は戦いを選んでいる、誰一人として私を差し出そうとはしない」
「そして貴女が行くことも拒むわね」
「そうする、絶対にな」
「いい国民ね、皆」
「グレシア、御前は行方を眩ますことが出来るが」
「何言ってるの、貴女を見出したのは私よ」
グレシアはレーティアの言葉に微笑んで返した。
「それはね」
「ではか」
「ずっと一緒にいさせて、私も」
「そうしていいのか」
「ええ、私も最後まで一緒よ」
「私は幸せだ」
レーティアは泣きそうになるのを必死に堪えながら述べた。
「多くの者が私を心から愛してくれているのだからな」
「貴女だからよ」
グレシアはそのレーティアに微笑んでこう告げた。
「貴女だからなのよ」
「私だからか」
「そう。貴女だから皆愛するのよ」
レーティア=アドルフ、彼女だからだというのだ。
「そうなのよ」
「だとすれば余計に幸せだ。ではだ」
「最後の作戦ね」
「何とかドクツ国民を生き残らせる」
レーティアは既にこのことを考えていた。
「絶対にな」
「その為の最後の戦いになるけれど」
「提督達と国家の諸君を集めてくれ、作戦会議だ」
レーティアは告げた。ドクツに最後の刻が迫っていた。
TURN70 完
2012・11・20
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