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三つのオレンジの恋

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第二幕その七


第二幕その七

「オレンジを手に入れただけでなく姫まで手に入れられたのですから」
「このままでは王子は安泰よ」
 クラリーチェの言葉も顔も今にも暴れそうな感じであった。
「どうすればいいのよ」
「案ずることはないわ」
 三人の中でファタ=モルガーナだけは冷静だった。落ち着き払った顔で二人に対して言うのだった。
「まさかオレンジを手に入れるとは思わなかったけれど」
「途中で死ぬって思ったのね」
「そうよ。私のショーツを見ていいのは彼氏だけよ」
 ここで庭での祭りのことを思い出し身体をわなわなと震わせはする。
「あの人だけよ」
「あの人って誰よ」
「チェリーよ」
 彼だというのである。
「悔しいけれどね。この世がはじまった時から一緒で」
「あんた達付き合っていたの」
「夫婦じゃないけれどね」
 こう言いはする。
「それでも。まあ付き合いが長くて」
「随分と仲が悪いみたいね、その割には」
 このことを突っ込むクラリーチェだった。
「あんた達の仲の悪さは有名よ」
「わかってるわ。それでもよ」
 ファタ=モルガーナの言葉が言い訳めいてきていた。
「とにかく。私の純潔はあいつにだけだから」
「純潔って柄にもない」
「これでも女の子よ」
 そこは譲らない彼女だった。
「彼氏以外に見られるなんてね」
「ってことはもう寝たりしたのね」
「まあそれは」
 このことを言われると頬を真っ赤にさせるファタ=モルガーナだった。
「だから。この世がはじまった時から一緒だから」
「それでなのね」
「人リで寝るのは寂しいじゃない」
 言い訳以外の何者でもなかった。
「だから。まあつまりはね」
「あんたって思った以上にずっと純情なのね」
「仕方ないじゃない。とにかくよ」
 顔を真っ赤にさせたうえで言葉を続けるのだった。
「王子のことは任せて」
「任せていいのね」
「王子はまずお城まで行かせて」
 そこまでは行かせるのだという。
「そこから仕掛けるから」
「そう。幸せの手前でね」
「そういうことよ。じゃあわかったわね」
「ええ、私はそれでいいわ」
 クラリーチェには異論はなかった。
「それでね」
「あんたはどうなの?」
「私もです」
 レアンドルにはある筈もなかった。
「それで」
「よし、じゃあ話は決まりね」
 二人の言葉を受けて確かな顔で頷くそうしてそのうえで黒人の女を二人の前に出してきた。彼女はやたらとはっきりとした目を持っていた。
「黒人?」
「そうですね」
「スメラルディーナっていうのよ」
 彼女のことを二人に紹介するのだった。
「私の召使でね」
「それがこの黒人女なのね」
「中々可愛いですな」
 褐色の肌に黒い髪、それにそのはっきりとした目に厚い唇である。確かに中々可愛い感じである。
「この娘を使ってどうするの?」
「それで一体何を」
「まあ見ていなさい」
 自分の召使の肩を抱きながら微笑むファタ=モルガーナだった。
「この娘が上手くやってくれるから」
「そう。それじゃあ」
「期待していますね」
 こうして再び手を打つ三人だった。騒動はまだ続くのであった。
 
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