三つのオレンジの恋
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第二幕その六
第二幕その六
またニネッタが出て来た。彼女は言うのだった。
「これが最後の命です」
「わかっています。トゥルファルディーノ」
「はい」
「水筒を」
こう言って水筒を貰いそれを彼女に差し出す。すると彼女はすぐにその中の水を飲みだした。そうするとだった。
「これでいいです」
「命を手に入られたのですね」
「はい、そうです」
満足している顔と声で王子に答えてきた。
「もうこれで」
「そうだったのですね。水だったのですね」
「ええ。命は水です」
微笑んで王子に答える王女だった。
「そういうことだったのです」
「そうだったのですか」
「それで王子」
静かに立ち上がりそのうえで王子に告げてきた。
「私はですね」
「貴女は?」
「貴方のことを知っています」
こう告げてきたのである。
「貴方がどうしてあの城に来たのかを」
「それでは」
「貴方が恋をされた三つのオレンジ」
彼女が封じられていたそのオレンジ達に他ならない。
「それは私のことだったのです」
「では私がファタ=モルガーナにかけられた呪いとは」
「そうです。私を愛するようになる呪いだったのです」
それだというのである。
「ですが。それで宜しいでしょうか」
「はい」
異存なくこくりと頷いてみせる王子だった。
「呪いであっても私の想いは同じですから」
「それは私もです」
彼女もだというのである。
「こうして救い出して下さり命を救ってくれた貴方に」
「では姫よ」
ニネッタを見詰めての言葉だった。
「これからは」
「まずはお城へ戻りましょう」
王子が本来いるその城である。
「そしてそこで」
「そうですね。式を挙げて」
「はい。そうして私達は」
「永遠に結ばれます」
こう言葉を交えさせていくのだった。
「ですから」
「まずは城に」
何につけても最初はそれであった。
「戻りましょう」
「そうですね。それじゃあ」
道化師もここで言うのであった。
「もう何の心配もいりませんし城に」
こうして三人で帰路に着く。王子の帰還が間もないと知ったクラリーチェは。レアンドル、それにファタ=モルガーナをあの大広間に呼んでそのうえで話をするのだった。
「このままだと大変なことになるわよ」
「全くですな」
レアンドルは深刻な顔でクラリーチェの言葉に頷いていた。
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