ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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剣の実力
アルンに到着する
ここはいつも多数の種族が入り混じり、お祭りのような様相を示している
「賑やかな街だね!」
ひとしきり涙を流したユウキは再び元気を取り戻し、俺と一緒にアルンの街並みをキョロキョロしながら歩いていた
「俺はもう少し落ち着いた感じの街がいいがな」
「ふーん。ボクは賑やかな方がいいと思うけどなあ」
「それで、石碑に名前を刻むために頑張るんだな?」
「うん。リンを信じてないわけじゃないんだけど、ボクみたいな境遇の人たちと約束しててね。リンにも今度紹介してあげる!」
「それは楽しみだ」
その人たちを助けるのか?と聞かれると俺はいいえと答える
主人公でもない俺の手は狭い
どんなに足掻こうとも一人を救うだけで精一杯だ
すべてを救おうなんて聖人君主ではない
ユウキは以前のシノンと重なった見えたから……放って置けなくなっただけだ
「全員分、刻みたいんだな?」
「うん。それも同じところにね!」
それは難しいとしか言いようがない
全員分を刻むためには一パーティー七人以下の人数では狩らなければならない
しかも、フロアボスは以前のデスゲームだった頃の時よりも大幅に強化されている
かつて、俺とキリト、クライン、アスナの四人で第74層のボス、グリームアイズを狩ったことがあるがそれとは難易度が桁違いだろう
「まあ、それについては頑張れ、としか言い様がないな。それで、ユウキはこれからどうする?」
「うーん……とりあえず石碑を見て、それからリンに付いていく!」
「まあ、いいか」
ユウキの実力は折り紙付き
リズベットにでも頼んで最高級の武器と防具を揃えてもらえば、ユウキの言った石碑に名を刻むことへの第一歩となるだろう
とりあえず、リズベットが今ログインしているか確認して……いるな
フレンドメールを送っておこう
「石碑を見てからでいいからちょっと寄りたいところがあるんだが、いいか?」
「うん、いいよ」
俺とユウキは翅を広げてアルンを飛び立ち、アインクラッドへと向かった
†††
「えっと、リン。正気?」
「普通に正気だが?」
場所はリズベット武具店
石碑を覗いたあと、ユウキの武器を調達するためにリズベットの店に出向いたのだが、正気を疑われた
まあ、リズベットの店は武具店としては最高峰に近いし、そこの最高級品ともなれば下手な魔剣よりは遥かに強い
それを初心者装備に身を包んだ初心者(ニュービー)にいきなり与えようとしているんだから疑われるのも無理はないか
「ふぅん……」
ユウキをじろじろと観察するリズベットにユウキは笑顔を引きつらせながら一歩下がる
「あんた、シノンはどうする気なのよ。まさかと思うけど乗り換える気じゃないでしょうね」
「アホか。俺はそんな軽い男じゃない」
いきなり何を言いだすかと思えば……
俺が詩乃を裏切るような真似をするわけがないだろう
「えっと……シノンって誰?」
「そこの真っ黒な男の彼女よ。全く、こっちが胸焼けしそうな位、仲が良いんだから……」
「胸焼けって……。普通に付き合ってるだけだろ」
「キリトとアスナも酷いけど、あんたたちも相当よ?見せ付けられるこっちの身にもなりなさいよ!」
ヒートアップし始めるリズベット
……自分がキリトといちゃつけないからって俺に当たるなよ、と内心思っているが、口にはしない
「……なんか、そっちの子、ユウキだっけ?……が固まってるんだけど」
「うん?本当だ。ユウキ?」
「えええぇぇぇ?!」
ユウキは堰を切ったかのように女性にあるまじき大絶叫
近くにいた俺はもちろん、カウンターの中にいたリズベットまでも咄嗟に耳を押さえる
「えっと、リン。彼女持ちだったの?」
「そうだが?」
「ははーん……」
ユウキはある程度落ち着くと改めて質問してきた
その様子を見たリズベットが何かを悟ったような顔をする
多分、俺の出した結論と同じ結論に達してるんだろうな……
「もしかしてあなた。リンに惚れた?」
「うっ……そ、そんなことないよ!」
顔を赤くしてそっぽを向きながら言っても説得力皆無だぞ、ユウキ
ユウキのその様子を見てニヤニヤを加速させるリズベットは標的をユウキから俺へと切り替えたようだ
「この間カップルが成立したばかりだっていうのに罪な男だねぇ~、リンは」
「残念ながら、そんなことで揺らぐような仲じゃないしな。ユウキのことはちゃんとけりをつけるさ。これからも、長い付き合い(・・・)になるんだし……な」
「リン……」
「……ふられたのに、なんでそんな反応ができるの?」
再び顔を赤くしてこちらを見るユウキ。それを見てリズベットは不思議そうに首を傾げた
ユウキの持つ裏事情を知らなければリズベットの様な反応をするのが当たり前かな
「あ、そうだリズ。俺を弄ろうとしたんだろうが……覚悟はできてるか?」
「ヤバッ……そうだ! ユウキの武器を打ってこなきゃー」
俺の言葉にリズベットは冷や汗を流し、奥の部屋に引っ込もうとするが、俺はその肩をハラスメントギリギリの力を込めて掴み、引き留める
ギギギと油の切れた機械のような動きで振り返ったリズベットに笑みを浮かべ、俺は口を開く
「ユウキにどういうタイプの剣がいいのかって聞いていなかっただろ?それなのにどういう剣を打とうっていうんだ?」
「あ、あたし位になると人の体格とかを見るだけでそのタイプがわかるようになるのよ」
「ふーん……ないな」
「一刀両断?!」
見た目とは正反対な武器を使うやつも結構いる
キリトも体格は細いくせに重い武器を多用しているしな
「まあ、諦めろ。逃がす気はないから」
「終わった……」
この日、リズベット武具店では客に弄られ、段々顔から生気が抜けていく店主の姿が見られたとさ
「もう……お嫁に行けない……」
数十分後、さめざめと泣きながら店主はカウンターに突っ伏していた
「キリトにもらってもらえばいいだろ。側室にでもしてもらえ」
「時代が違うわよ……」
重婚は犯罪だが、不倫は犯罪ではなかったりする
倫理的にアウトなのだが、少なくとも刑法で裁かれることはない
明日奈が許せば、側室も行けるだろう
結婚は諦めた方がいいだろうが
「ユウキはどんな武器がいい?」
「うーん……片手直剣で軽いのかな!」
「だとよ」
「あんたら、鬼ね……」
ユラリと顔を上げるリズベット
俺とユウキのことを鬼というが、今の姿はどちらかというとリズベットの方が鬼(幽鬼)っぽい
「じゃあちょっと振ってみて」
リズベットは店に飾ってあった一振りの片手直剣をユウキに渡す
「いくよ!」
俺が一歩下がるとユウキは弧空に向けて剣を振った
その速さにリズベットは目を丸くし、口を半開きにしたまま固まってしまった
「うーん……もうちょっと軽い方がいいかな?……あれ?」
「リズ。驚くのはいいが、客の前で固まるのはよくないと思うぞ」
「はっ! え、えっともう少し軽いのですね。では打ってくるので少しお待ちください」
そう言うとリズベットは奥の工房へ引っ込んだ
店内には微妙に気まずい空気が流れるが、対処する方法もない
結局、俺とユウキはリズベットが戻ってくるまで、沈黙を続けるのだった
「はい、できたわよ」
戻ってきたリズベットの手にあった剣は黒曜石のような透き通った黒紫色をしていた
その剣を渡されたユウキは一回、二回と振って満面の笑みを浮かべる
「うん。剣と一体になったみたい」
「その剣の銘はソリディフィダークネス。確実に私の打った剣の中ではかなり上位に位置する剣ね」
Solidify darkness 直訳すると凝固する闇かな
「えっと、代金は……」
「俺が払うよ」
「そ、そんなの悪いよ!」
「誰もやるとは言ってない。貸すだけだ。一生かかろうが払ってもらうから覚悟しろよ」
「うん……ありがとう!」
「だからなんでお礼を言うのよ……」
だから事情を知らない者には(ry
「さてと、リズ。そろそろいい時間だと思うんだが?」
「そうね。じゃあ行きましょうか」
時刻はリアルで大体11時半頃
集合は昼過ぎなのでちょうどいい
「えっと、どこ行くの?」
「リズが横恋慕するキリトと、キリトの本妻アスナのいる愛の巣へリズが殴り込みに行くんだよ。俺はその実況中継に」
「確かに合ってるけど、その言い方はやめて! 殴り込みじゃなくてクエストの作戦会議でしょうが!」
「……ねぇ、その作戦会議ってリンの彼女も来るの?」
「まあ……確かに来るな」
「じゃあ、ボクも行く!」
ユウキがそう言った瞬間、リズベットは俺の首に腕を巻き付けて顔を寄せてきた
「どうするの?いきなり修羅場になりそうな予感がするんだけど……」
「どちらかというとカオスになりそうだな」
結局連れていくことになりました
後書き
次回、修羅場?それとも混沌?
毎度お馴染み、蕾姫です
今回はユウキの武器調達の巻でした
ソリディフィダークネスはオリジナルです。念のため
原作では名前が明かされてないため、自由に付けました
厨ニなのは突っ込んではいけない
別に他の作品でこの名前が使われても一切気にしません
目指せ、公式設定っ!(ぉぃ
次回は修羅場になるのかな?それとも混沌になるのかな?
リンの彼女のシノン。リンに惚れているリーファ。そこに新参者のユウキが!
こうご期待?(笑)
ではではー
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