三つのオレンジの恋
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第二幕その五
第二幕その五
「その通りです」
「またそれは実に」
「面妖な話ですな」
王子だけでなく道化師も言った。
「その様なことがあったとは」
「しかしこれで貴女は助かったのですね」
「はい。ただ」
「ただ?」
「私は・・・・・・」
ここまで言うと急に力をなくしその場に倒れこむニネッタだった。そうしてそのまま事切れ彼女も彼女を包んでいたオレンジの皮も消えていく。最初のオレンジはこうして消え去ってしまった。
「消えた」
「これまた実に面妖な」
二人はそのオレンジも王女も消え去ったのを見て言った。
「どういうことなんだろう」
「ええと、確か王女は」
道化師は彼女の言葉を思い出しながら王子に対して話す。
「三つの命を持っていると仰いました」
「そうだったね」
「そしてそれが三つのオレンジに封じられていると」
「じゃあ残る二つにも」
「そうだと思います」
こう答える道化師だった。
「残る二つの中にも」
「よし、じゃあ」
王子は彼の言葉を聞いてすぐに剣で二つ目のオレンジを斬った。するとそこからもニネッタが出て来たのだった。最初の時と全く同じ姿であった。
「また御会いしましたね」
「ええ」
王子は彼女の言葉に応えた。
「またですね。本当に」
「それでですが」
二人目の彼女はここで言うのだった。
「私に」
「貴女に?」
「命を」
こう言うのである。
「命を・・・・・・下さい」
「命をって」
「そうすれば私は」
また声が弱くなってきていた。
「貴方と共に・・・・・・」
こう言い残してまた倒れ込んだ。そしてまたオレンジと共に消え去ったのである。
王子と道化師は残る一つのオレンジの前にいた。そうしてそのうえで話すのだった。
「命とは」
「ええ。それが欲しいと仰っていましたが」
怪訝な顔で話す。
「それは一体何なのでしょうかね」
「わからないな。命といえば」
「人間食べないと命はありませんがね」
ここでこんなことを言う道化師だった。
「とてもね」
「そうだね。それに水も」
「そうそう、それもです」
王子の言葉を聞いて頷くのだった。
「むしろ水がなくてはですね」
「その通りだ・・・・・・ということは」
「ということは?」
「そうか、そういうことか」
王子はここで納得がいった顔になった。そうしてしきりに頷くのだった。
「そういうことだったんだな」
「何かおわかりで?」
「水筒を出しておいてくれないか」
ここでこう道化師に話すのだった。
「水筒をね」
「これですか」
「よし、それでいい」
道化師が水筒を出してくると満足した顔で頷いた。
そうしてその剣で最後のオレンジを斬った。
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