我が剣は愛する者の為に
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真相
前書き
また短くて申し訳ないです。
部隊を率いて出発する。
すると、門の近く秋蘭と月火の部隊と鉢合わせた。
彼女達も近くで現れた賊の討伐の任務の為、部隊を率いて一昨日くらいに出発していた。
場所も近くだったので早く帰ってこれたのだろう。
「後ろの部隊を見る限り縁達も討伐の任に赴くのか?」
秋蘭が声をかけてくる。
今回は今までの討伐任務とは少し違うのを簡単に説明する。
「その人は地位の高いの?」
「うむ、少なくとも華琳様より上だな。」
「ちょっと面倒そうだが、華琳が行く訳にはいかないしな。」
口にはしないが、その州牧と賊との間には何かしらの関係があると、俺は踏んでいる。
この城の主である華琳が出向かせる訳にもいかない。
原因は不明だがここ周辺で賊の被害の報告が多数あがっている。
賊による被害は分かっているのだが、どうして毎日といっていいほどの頻度で、それもここ周辺だけなのか。
他の地域でも賊の被害を受けているが、俺達の居る地域ほどではない。
(この州牧の所に行けば分かる筈だ。)
「にしても縁。」
月火が俺に近づいて、耳元で小声で話しかけてくる。
「胡蝶と二人だけど、大丈夫なの?」
答えに困り、苦笑いを浮かべる。
正直、胡蝶を制御しきれる自信は全くない。
最悪、前のように武力で御しる事は可能だが仲間である彼女に、手荒な真似は極力したくはない。
前は本当に時間と状況が悪すぎたので武力で治めたが。
ちらり、と胡蝶の様子を窺う。
何やら嬉しそうな顔をしながら、鉄扇や糸の手入れをしている。
不気味に見えるのは俺だけだろうか。
「ま、まぁ何とかなるだろう。」
「声震えているわよ。
でも、縁以外なら付き添っていたけど、縁なら大丈夫でしょ。」
「お前も何言っている。
胡蝶が俺の言う事を聞くと思うか?」
華琳も同じことを言ってたな。
あの胡蝶だぞ?
いつもいつもネタにされ、弄られてばっかな俺があいつを制御できるはずがない。
制御できたらどんなに嬉しいか。
俺は月火の顔を見ると、驚いた顔をしている。
何で驚いているの?
「意外ね、縁って鈍感なのね。」
「えっ?」
「これに関しては自分で気づきなさい。
疲れたし寝させてもらうわね。」
呆れたように首を振りながら、城の中に入って行く。
助けを求めるような視線を秋蘭に向ける。
「自分で考えるんだな。」
と言って、部隊を率いて城に戻っていく。
首を傾げるしかない。
二人は一体何を悟ったんだろう。
非常に気になる。
「縁、早くしないといけないんじゃないの?」
少し考えていたら珍しく胡蝶に注意された。
彼女自身、今回の任は楽しいものだと感じ取っているからか早めに向かいたいらしい。
事実、遅れていけばかなり面倒な事になるし、月火と秋蘭が言った言葉の意味は後で考えよう。
俺達が目指す街はそれほど遠くはないが、馬は走らせて二、三日くらいかかる。
そして。
「着いたな。」
街の姿は俺達の視界で見えるくらいまで近づいていた。
と、街の方から何かが出てきて砂塵を舞いながらこちらに向かってくる。
おそらく、あの街の兵だろう。
未確認の部隊が突然やってきたのだ。
斥候にでも姿を確認されていてもおかしくはない。
兵士の一人に曹と俺の旗を掲げるように言い、俺達はその場で動きを止める。
ここで変に動けば警戒させてしまうかもしれない。
やってきた部隊から一人、近づいてくる。
黒い服に黒の鎧。
全身を黒く染め上げた男の髪も黒く短い。
「お前達は何者だ。
旗を見た限り、曹操の部下と見るが。」
「貴殿の主からの緊急要請で来た、名は関忠という。
こちらは副将の司馬懿。」
軽く頭を下げる胡蝶。
意外かもしれないが、彼女は自分が面白い事を体験できるのならきちんと礼節はする。
「私は雲流。
思っていた以上に速い対応助かる。
では、主君に会って明日にでも討伐を協力してもらいたい。」
「今日ではないのか?」
「既に私達で対応したが逃げられてな。
警戒して今日は出てこない可能性がある。
もし襲撃の報告があったら、すぐに手を貸してもらう。」
そう言って雲流は部隊を引き連れて街に戻る。
俺も彼の後を追い、やがて街に入って行く。
街には行った時の第一印象は特に悪いように見えなかった。
むしろ、賑やかで活気があるように見える。
だが、家と家の間にある暗い路地のような道を見て、俺は馬を止めて急いで降りた。
人を掻き分け、そこに横たわっている少女を抱きかかえる。
少女の服はボロボロで顔も土で汚れ、髪はバサバサで痛みきっている。
呼吸は浅く、おそらく危険な状態だ。
「このままじゃあまずいな。
おい、ここらへんに医者は」
近くにいる住民に医者の所在を聞こうと、近づいた瞬間。
「く、来るな、汚らわしい!」
汚物を見るかのようなひどく軽蔑的な目つき。
言葉を聞いて俺は足を止める。
「汚らわしい?」
「そんな泥に汚れた子供を良く抱きかかえるな。
病気でもうつったらどうする?」
「何を・・・言っている。
死にそうになっているんだぞ!」
俺の言葉に別の住人が反応して言葉を投げ返す。
「んだって、そいつ弱者で貧乏じゃん。
俺達みたいな奪う側の強者とは違うし、そもそも死にそうになっているのはそいつが悪い。」
耳を疑った。
辺りを見回すとほとんどの住人が同じ目をしていた。
「貴様ら・・・」
拳を強く握りしめ、近くの住民を殴ろうとして近づこうとした時に俺の頬を何かがかする。
薄く肌が斬れる感触と痛み、そして血が流れる感覚。
かすめた物体は黒い鉄扇だった。
鉄扇には糸が縛られており、所有者の手に引き戻っていく。
言うまでもない胡蝶だ。
彼女は軽く眉をひそめて、首を軽く横に振る。
その先には雲流が何事か、と言わんばかりの顔をしてこちらを見ていた。
人混みの雑踏のおかげでさっきの会話は聞かれていないが、ここで住民と騒ぎを起こすのは華琳にとって非常によろしくない。
怒りを抑えながら、俺は片手で少女を抱えながら馬に向かう。
住民たちは俺が近づくと急いで後ろに下がる。
まるで一瞬でも触れたくないかのように。
反応を見てまた怒りが噴き出しそうになったが寸での所で堪え、馬に乗り込む。
「司馬懿殿、どうして鉄扇を?」
「うん?
ああ、蜂が縁の首に止まろうとしていたからね。
何とか鉄扇で斬ったけど、誤って縁に当たったみたいだ。
でも、街の人には当ててないから安心しろ。」
「それならいいのだが。
縁殿、その子は?」
雲流は抱きかかえている少女の存在に気がついたらしい。
「呼吸が浅い。
今すぐ治療の必要がある。」
「しかし、あなたには君主に会ってもらう必要がある。」
「民が死にかけているんだぞ!
そんな事を言っている場合か!」
「君主に会って貰う方が重要です。
早く会って貰い対策を立てねば、多くの民が苦しむのですから。」
俺の睨みに臆することなく、睨み返す。
数秒ほど睨み合って、俺は少女を胡蝶に預けて。
「胡蝶。」
「分かったわよ。
医者は?」
冗談を言える場面でないと空気を呼んだのか、からかわずにすんなりと受け取る。
「・・・・・・・その角を右に曲がった所に診療所がある。」
部隊の代表である俺が会えばそれで問題ないと判断したのか、診療所の場所を教えて貰った。
胡蝶は馬を走らせ、診療所に向かって行った。
「では、君主に会って貰います。」
「色々とそいつに聞きたい事がたくさんある。」
軽く殺意を込めて言うが、雲流は全く気にせずに城まで案内する。
この街は俺が予想している以上に異常な街だった。
後書き
最近忙しすぎて書く時間が取れません。
何とか短いですが一話を投稿しました。
投稿ペースを戻したいです。
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