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万華鏡

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第二十七話 江田島その十四

「流石にもうこれ以上は駄目だけれどな」
「それでもね」
「おおい、いいか?」
 引率の中で一番年配の男の先生が言って来た。
「ここにあるものは全部飲んで食えよ」
「全部ですか?」
「ああ、全部だ」
 残すなというのだ。
「食べ物は残すな、飲み物もだ」
「じゃあ今ここにあるのはですね」
「全部ですね」
「注文はこれで終わりだからな」
 酒の飲み放題もタイムリミットだった。
「もう頼むな、いいな」
「それで今あるのをですか」
「全部ですね」
「とにかく残すな」 
 先生はこのことを強調する。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 生徒達も先生の言葉に頷きそうしてだった。
 皆最後の戦いに入った、琴乃達もそれに加わろうとする。
 しかしその五人に宇野先輩が言って来た。
「もう止めとけえ」
「えっ、宇野先輩」
「五人共充分飲んで食べたけえ」
 こう酔った顔で言って来たのだ。
「無理はあかんけえ」
「けれど残すなって言ってますし」
「ですから」
「それぞれの分終わらしたら充分じゃけえ」
 動こうとする五人への言葉だ。
「だからええけえ」
「そうですか、じゃあ」
「今は」
「もう部屋帰り」 
 五人に優しい声で告げる。
「後はうち等でするけえ」
「じゃあ先に」
「お部屋に戻って」
「大丈夫やったらお風呂入ってきい」
「お風呂ですか」
「そこでお酒抜いてきい。けどな」
 それでもだというのだ。
「あまり無理せんとき」
「身体によくないからですね」
「お酒入ってのお風呂はお酒抜けるけど危ないけえ」
 これが常識での話である。
「だからじゃけえ」
「それで、ですね」
「そう、気いつけえ」
「私等先にお部屋戻ってるわ」
 高見先輩も来て言って来た。
「そうするさかいな」
「ほなお風呂行ってきいや」
 宇野先輩はまた言う。
「わし等もうお部屋にいるけえ」
「それでや」
「わかりました、それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
 五人は先輩達の言葉に頷きそうしてだった。 
 一旦風呂にまた行った、そこでだった。
 屋内の湯船に入りそこでだった、それぞれ顔を見合わせて話をしたのだった。見れば周りには五人と同じ様に酒を抜いている娘達ばかりだ。
 その湯船の中でだ、景子が言った。
「ねえ、先輩達って」
「そうよね、酔ってね」
「言葉出てたわね」
「方言がな」
 四人もこう返す。 
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