| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編
  第6話 ログアウトできません


 それはクラインは、ログアウトをしようとウインドウを開いた時だった。
 
 そこに、その項目に有る筈のモノが無い。何度か確認するが、有る筈のものがないのだ。

「あれ……?ログアウトボタンがねぇ……」

 そう異常、それはクラインのその言葉から発覚し、始まった。

「無い? そんな訳無いだろ? よく見てみろよ」

 キリトにそういわれ、クラインは再び確認するが。首を横に振った。一度、ウインドウを消し もう一度出して確認しても無いのだ。

「ん……やっぱ、何処にもねーよ」

 リュウキは、クラインが初心者だから、探せないのか?と一瞬思った。だが、文字さえ、簡易的な英語だが、読むことが出来るのなら、探せないわけは無い。

「……メインメニューの一番下に無いのか?」

 リュウキは、クラインにそう言いつつも自分の目で確認をする。指を振り、メインメニューを呼び出して確認するが。そのメニューには ≪Option≫と≪Help≫その二項目だけだった。

 本来、その一番下に有る筈のものがなかったのだ。

「………確かに無いな」

 リュウキもそう答えた。自分の目で確認したのだ。βテストの際にも何度も確認をした筈の項目だ。そして、別のオプションメニューの中にあるのか? と何度か探ったがそれでも見つける事が出来なかった。

「本当か? ………本当だ無いな」

 キリトもリュウキに続いてウインドウ内を確認するが、リュウキやクラインの言うとおり、ログアウトの項目が無かった。

「まっ!今日が正式サービス初日だからな、こんなバグもあるだろう。今頃運営は半泣きだろうな」

 クラインはそう楽観的に言うけど。明らかに致命的なミスだろうと思える。致命的であり、……初歩的なミス。それも、βテストから、追加する項目ならまだしも、だ。

「あの男がそんな初歩的なミスを見逃す……か? ありえないと思うが」

 クラインの言葉を聞いてリュウキの頭は疑問でいっぱいだった。このSAOを作った茅場晶彦の事はよく知っているつもりだ。

 彼の仕事の能力は完璧に近い。

 技術は勿論、仕事に打ち込む姿勢も、その全てが最高水準だった。だからこそ、リュウキは、あの男と再び共に仕事をしたいとまで言ったのだ。

「ん? 何か言ったか?」

 キリトは、リュウキの呟きを聞いてなかったようだ。少し耳に届いた程度だったようだが、別に言う必要もないとリュウキは判断する。

「いや……なんでもない。それより、クライン。お前は楽観的に構えててもいいのか?」

 リュウキはクラインにそう聞く。さっきクラインが言っていたログアウトをする理由についてだ。

「あん?どう言うこった?」

 どうやら、クラインはリュウキが言っている意味がわからないようだ。少しため息をして、リュウキはウインドウに表示されている現在時刻を指差す。

「……時刻を見てみろ。今17:25だ。確か、後5分だろ? 出前が届くのは」

 リュウキの言葉を訊いて、クラインは数秒……固まった。2度、3度と時刻を見直し、そして叫ぶ。

「あっ……ああああああああ!!!! オレのっ! オレのっ! テリマヨピザとジンジャーエールが!!!!」

 クラインは、リュウキの言葉を聞いて、漸く理解した様だ。夕食を頼んでいる時間帯が刻一刻と近づいている事態。そして、自分は起きる事が出来ないから、出前を受け取る事が出来ない。その事実を悟ってクラインは絶叫をしたようだ。

「はぁ……さっさとGMコールしろよ」

 キリトはそう言う。こんなトラブル発生の時の為の措置は勿論ある。その一つが、≪Help≫の項目にある≪GM≫だ。

「はぁ……そんなもんとっくに試したさ。でも全然反応が無いんだよ。他にログアウト方法は無いのか?」
「ん……無い」

 キリトはリュウキの問いに答えた。この世界からログアウトするには、プレイヤー自身にはその方法しかないからだ。

「……これは、明らかにおかしいな」

 リュウキは、クラインの言葉が正しいかどうかを確認する為にGMコールを試した。だが、それの反応は全く無い。『暫くお待ちください』と言った反応すら無いのだ。
 そのことの異常さが、深刻さがわかった。

「どう言う事だ?」
「《プログラムのバグ》=《顧客の信用を失う》も動議だ。システム的バグ1つで信頼は地に落ちることだって少なからずある。……それが、この手のバグだったら致命的だ。 一度インして、そしてログアウトできないんだぞ? そんなバグが見つかったと、少なくとも1万人に知られたわけだ。そんなゲーム……今後誰がやってみたいと思う? ゲームをプレイしていて、止める事が出来ない。……現実に戻る事が出来ないんだぞ?」

 リュウキはそう2人に聞いた。仮にクライン同様に現実世界で用事等があった場合、帰れなかったら、その状況次第では ユーザーからの反発をかなり買う事だろう。

 ……そして、リュウキのその問いに2人の顔が曇る。

 クラインは、どうにかしてログアウトしようと色々唱えたりしてるが、無駄だ。マニュアルの中にも緊急切断システムは無かった。

「……そして、GMは対応の初歩中の初歩を怠っている」
「そりゃなんだい?」

 クラインはリュウキの言葉に首を傾げた。

「……初期の対応として、まずは一斉アナウンスをして 全プレイヤーの強制ログアウト措置を取る。そして、システムをオールチェックだ。運営側が何度かテストをし、且つバグを可能な限り潰してから 改めて謝罪を行う。……そうだろう?」
「う……ん〜〜……」
「確かにな。異常があった時、β期間だったらアナウンスがちゃんとあった。信用問題にならない様に措置はしっかりとっていたのに……」

 キリトも自身の経験からそう答えた。

「だったらどうすりゃいいんだ? おっ! そうだ、ナーヴギアを外すとか!!」

 クラインは『おりゃ!』っと掛け声を上げながら、現実で頭に装着されているナーヴギアをあげるような仕草をするが、全く反応は無い。

「……無理だ。現実世界では身体は全く動かない。動かせない。ナーヴギアの後頭部の部分が脳から身体に伝える信号を遮断しているんだから」

 キリトはそう答えた。この仮想空間にいる以上は、現実世界の身体は動く事は無い。そもそも、簡単に動けるような仕様にしてれば、怪我をする危険性もあるだろう。過去のゲームでさえ、そう言ったニュースが何度かあったのだから。

「……く〜〜どうすりゃいいんだ!」

 クラインは、もう無理、お手上げだ。と言う感じで、座り込んでいた。

「後は、現実でナーヴギアを外してもらうしかない……か」
「え~……、でも オレは1人暮らしだし……」
「オレは、2人暮らし。じい……祖父がいる。だが、外したりはしないと思うな」

 祖父、爺やにはこのゲームを始める前に言ったのだ。その事については、だが別にとりあえずは問題ない。そもそも、リュウキはこちらの世界に何日でもいるつもりだったからだ。

「オレも妹と母親がいる。夕食には起こしてくれると思うが……」

 クラインはキリトのその言葉を聞いた時、座り込んでいたのにすかさず立ち上がった。驚きの表情を見せている。

「ッ!!! な……なにっ? キリトには妹がいるのか??」

 そして、キリトの両肩にガシッ!っと掴みかかった。一体何をしているのか? とリュウキは思った様だが、キリトは大体察した。

「ちょっ!妹は体育会系で……ゲーム嫌いだし、何よりオレ達とは人種が……」
「いいじゃねえかよっ! 今度、紹介してくれって!」

 クラインは喰らい付くのをやめなかった。やっぱり、リュウキは話を聞いていても、何をそんなに必至になっているのかはわからない。でも、判る事はある。

(……異性の兄妹とかが、いなくてよかったな)

 つまり、妹か姉の様な兄妹、姉弟が居れば、クラインに食いつかれる、と言う事だ。だからリュウキはこの時そう感じていた。
 もしも仮にいたとして、つい口に出していたらひょっとしたら、今のキリトの様になっていただろうから。考えただけで頭が痛くなりそうだ。

「っていい加減にしろって!」

 “ゲシッ!!!”っと、キリトの蹴りがクラインの金的に直撃(HIT)する。クラインは、さっきの戦いの時に食らった時同様のリアクションをとっていた。股を押さえながら悶絶している。

「ギャーース!! ……ってそうか、別に痛くないんだった…」

 だが、痛さは感じない為、直ぐにクラインは起き上がった。軽くリュウキは、ため息をして2人に向き直る。

「さて……と。悪ふざけもそこまでにしたらどうだ? オレは、ログアウトするつもりは無かったし、システム的不備と運営に関しては 確かに。ずさんだと思うが、別にオレとしては、とりあえずは問題ない。……解散するか?」
「まあ、まて。明らかにおかしいんだ。少なくとも原因が分るまでは、一緒にいた方がいい。情報を共有するのも良いだろう」
「オレもそう思うぜ? 日も暮れるし」
「まあ、お前達がそう言うなら、別にそれでもいいが……」

 リュウキは、とりあえずは、この2人と共に行動することにした。そしてその時だった。
 “ゴォーーン……ゴォーーーン………”と、はじまりの街に巨大なある鐘が鳴り響いた。

 この時、リュウキは……、いや違う。恐らく3人が感じただろう。 

 

 この鐘の音。……何かが始まるの合図の様だと。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧