| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 江田島その十一

「美味しいわよね」
「広島はいいところよ」
 宇野先輩は同級生に誇らしげに返す。
「高ちゃんのところにも負けてないから」
「言うわね、岡山だって凄いから」
「桃よね」
「マスカットにママカリにね」
 そういったものがあってだというのだ。
「黍団子もあるから」
「黍団子は欠かせないのね」
「桃太郎はね」
 岡山なら、というのだ。
「桃とね」
「そうよね、岡山はね」
「けれど広島も好きだから」
 高見先輩は目を細めさせてその牡蠣達を見た。
「さて、それじゃあね」
「牡蠣一杯食べようね」
 こうしてだった、皆その席に着く。そうして先生達が来て。
 一応の注意が為されてからだった、後は。
 無礼講だった、その牡蠣達が口の中に入れられ。
 酒が飲まれる、琴乃はその広島の地酒を飲んで言う。
「私基本日本酒派じゃないけれど」
「それでもよね」
 神社の娘なので日本酒には縁のある景子が応える。二人共その顔が次第にだが赤くなろうとしている。
「このお酒はね」
「ええ、美味しいわね」
「広島ってお米もいいからね」
 景子はだからだと返す。
「お酒もね」
「お米がいいとお酒もね」
「そう、美味しいのよ」
 景子は笑顔でその酒を飲んで言った。
「この通りね」
「そうよね、牡蠣にも合うわね」
「ええ、牡蠣にはやっぱりね」
「日本酒かしら」
 琴乃は生牡蠣にぽん酢をつけてから食べて言う。
「この組み合わせ?」
「そうよね、ただ」
「ただ?」
「日本酒が一番かも知れないけれど」
 景子もまた生牡蠣にぽん酢をつけたうえで食べながら言うのだ。
「他のお酒もね」
「合うのよね」
「琴乃ちゃん基本ワインよね」
「うん、そうよ」
「シャンパン好きだったわよね」
 学生なので無論安物だがそれでもだ。
「洋酒系統よね」
「ティータイム好きだしね」
 これもあった、ティータイムで飲まれるのは紅茶だけとは限らない。シャンパンもまた飲まれるからである。
「だからね」
「そうよね、魚介類って白ワインでも合うから」
「そっちも悪くないのよね」
「琴乃ちゃんシーフードの時は基本白ワインよね」
「ええ、そうよ」
 実際その通りだというのだ。
「健康のこともあるしね」
「ワインがお酒では一番身体にいいから」
「それでだけれど」
 こう景子に返す。
「そうしてるけれど。ただ」
「ただ?」
「日本酒もいいわね」
 実際に牡蠣と一緒に飲んでみての言葉だ、コップの中のそれを見ながら言う。
「これはこれでね」
「そうよね。確かに日本酒は糖尿が怖いけれどね」
「いつも飲まないとね」
「それでいいから」
 これはワインにも言える、やはり飲み過ぎは危ないのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧