| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 江田島その十

「レスラーみたいだな」
「身体が大きかったから食べる量も凄くて」
「牡蠣百個かよ」
「それだけ食べたことがあるのよ」
「牡蠣もそれだけあるとな」
 一個一個は小さくてもだ。
「ちょっとな」
「多いわよね」
「というかあたし達にビスマルクになれっていうんだな」
 美優はこう解釈した。
「つまりは」
「いや、多いだけで」
「それはないか」
「ビスマルクってちょっと普通の人じゃなかったのよ」
「あれっ、変態だったのかよ」
「そういう普通じゃないのじゃなくてね」
 ではどう普通ではなかったかというと。その巨体以外に。
「学生時代二十回以上の決闘を経てきてるのよ」
「二十回以上かよ」
「そうなの、それでついた仇名が乱暴者」
 乱暴者ビスマルク、それが彼の仇名だったのだ。
「顔には向こう傷まであったのよ」
「それはまた凄いな」
「普通じゃないわよね」
「ああ、ちょっとな」
 美優もその話を聞いて言う。
「無茶だよな」
「そうでしょ、ちょっと誰もがなれるって訳じゃないわよね」
「あたし喧嘩嫌いなんだよな」
 美優は腕を組んで首を傾げさせて言った。
「暴力とかはさ」
「私もよ。その決闘はフェンシングのものだと思うけれど」
「それでも決闘って尋常じゃないよな」
「ええ、シーボルトも凄い数の決闘してきたらしいけれど」 
 彼に至っては顔中傷だらけだった、さながらフランケンシュタインのモンスターの様だったと言われている。
「決闘をしろとかはね」
「普通は言わないしな」
 今の日本の教育ではそうだ。
「だからか」
「そう、だから今のこれは」
「ただ楽しんでくれってころか」
 美優はあらためてその牡蠣の山を見て言った。
「そんなところかね」
「そうだと思うわ。じゃあ」
「ああ、今からな」
「食べよう」
 微笑んで美優だけでなく他の面々に告げた。
「この牡蠣ね」
「一人で百個も食べられるかしら」
 そうは言っても景子の顔はにこにことしている、畳の宴会の間に設けられた場に生徒達が次第に集まってきている。
 景子はその中で牡蠣達を見て言うのだ。
「ちょっと心配ね」
「いやいや、これ位あった方がいいでしょ」
 彩夏は今にも涎を垂らさんばかりだ。
「牡蠣もね」
「牡蠣は栄養もあるから」
 宇野先輩もその目をきらきらとさせている、無論牡蠣を見てだ。
「いいわよ。デザートもね」
「あっ、柑橘類ですね」
「一杯ありますね」
「広島だからね」
 それも瀬戸内だからだ。
「そっちもあるのよ」
「広島もいいところなんですね」
「牡蠣だけじゃなくて」
「だから山陽の中心地なのよ」
 それになっているというのだ。
「いい場所だからよ」
「海の幸なんか特によね」
 高見先輩が言って来た、牡蠣だけではないというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧