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万華鏡

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第二十七話 江田島その十二

「だからね」
「この組み合わせも抵抗なくね」
「飲めばいいわね」
「そういうことね」
「いや、本当に美味いよ」
 二人の横では美優がカキフライを口にしていた、ソースはタルタルソースだ。
「牡蠣だけじゃなくて衣さ」
「うん、調理自体がね」
 里香もそのカキフライを食べて目を丸くさせている。
「いいわね」
「ここのホテルの人料理上手だよ」
「お吸いものもね」
 彩夏はそれを飲んでいる、若布と麸のあっさりしたものだ。
「いいわね」
「御飯だってさ」
 美優は今度は御飯、主食のそれを食べている。右手の箸が軽快に動いている。
「いいよな」
「うん、お酒が美味しいから」
 里香もまたこのことを言った、景子と同じく。
「それでよね」
「だよな、けれどな」
「どうしたの?けれどって」
「後で御飯お代わりしたら駄目かな」
 こう言ったのである、ここで。
「そうしたらな」
「お代わり?皆してるわよ」
「いや、二杯目な」
「二杯目をどうするの?」
「お茶漬けはどうかなってさ」
 美優が今考えているのはこれだった。
「最後にさ」
「全部食べた後で」
「締めにって思ってるんだけれどな」
「女の子がこうした場でお茶漬けはよくないんじゃないかしら」
 彩夏がその美優に顔を向けて言って来た。
「それはね」
「ああ、おっさんみたいだしな」
「男の子達いるからね」
 目の前で全員馬鹿騒ぎになっている彼等を見ながらの言葉だ。
「だからね」
「だよな、男子の目があるからな」
「女の子はこうした場ではお茶漬けは止めた方がいいかも」
 彩夏はこう考えてこのことを美優に話すのだ。
「それはね」
「じゃあ止めておくか」
「ええ、その方がいいと思うわ」
「男子は食ってるけれどな」
 見れば早速食べている男子がいる。
「それでもか」
「お茶漬けはね」
 彩夏は言う。
「どうしてもね」
「ああ、男子の食べ物だよな」
「だからね」
「じゃあ最後は別のものにするか」
 とはいってもだった。
「けれど何があるかな」
「アイスあるわよ」
 里香が野菜料理を食べながら言う、そういったものもあるのだ。
「それがね」
「ああ、アイスか」
「お豆腐のアイスね」
「それ何処にあったんだよ」
「売店よ」
 ホテルのそこにだというのだ。
「そこにあったわ」
「売店かあ」
「一個百円よ」 
 アイスのオーソドックスな値段だ。
「どうするの?」
「とりあえず飲んでから決めるか」
 そのアイスを買って食べるのは、というのだ。 
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