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万華鏡

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第二十七話 江田島その九

「浴衣は危ないからね」
「その方がいいわよ」
「そうですよね、やっぱり」
「浴衣は危ないですよね」
「その危なさが人気だけれどね」
 誰に人気かというと。
「男の子からはね」
「刺激的だからですよね」
「それでなんですね」
「ええ、そうよ」
 まさにそれでだった。高見先輩が五人に話す。
「お風呂の時も言ったけれどね」
「それで考えたんですけれど」
「ジャージにしました」
「ジャージのいいところは露出が少ないことよ」
 それで学校の体育の授業にも定着した。
「露出が少ない、即ち色気がない」
「ジャージって野暮ったいですしね」
「しかも動きやすいし汚れてもいいし」
「そうよ」
 今度は宇野先輩が言う。
「ジャージにした方がいいのよ」
「じゃあこの格好で、ですね」
「いざ晩御飯に」
「牡蠣にお酒よ」
 この二つだった。
「もう凄いからね」
「よし、それじゃあ」
 今度はそちらだった、七人でその食事の場に来た。すると。
 場には牡蠣があった、どういった状況かというと。
「あの、この量って」
「ちょっと」
 見れば相当どころではない、牡蠣の貝殻がこれでもかと積まれている。まさに山の様に堆く積まれていた。
 琴乃はそれを見てこう言った。
「食べj放題?」
「みたいね」
 宇野先輩が応える。
「どうやらね」
「またえらく豪快ですね」
「名産っていってもね」
 宇野先輩も唸る顔であった、流石に。
「これは凄いわね」
「あの、広島っていつも牡蠣をこんなに食べるんですよ?」
「多過ぎるからね」
 先輩はこう琴乃に言った。
「例外よ」
「やっぱりそうですか」
「一人当たり百個ね」
 その堆く積まれた牡蠣を見ての言葉だ。
「それだけあるわね」
「百個ですか」
「生牡蠣だけじゃないし」
 見れば他にもだった、卓にあるのは。
 牡蠣フライもあった、そして酢のものも。
 宇野先輩はそういったものも見てそのうえで言った。
「それだけはあるわね」
「ううん、凄いですね」
「ビスマルクみたいね」
 今度は里香が言う。
「百個って」
「あれっ、何でそこでビスマルクなんだよ」
 美優は目をしばたかせて里香の今の言葉に応えた。
「ドイツの宰相だよな」
「そう、あの鉄血宰相よ」
 里香もこう美優に答える。
「あの人実は凄い大食漢でね」
「へえ、そうだったんだ」
「身長は一九〇を超えてて」
「でかいな」
 当時のドイツでもかなり大きい方だった、尚ワーグナー好きで有名なルードヴィヒ二世もそれだけあった。 
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