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久遠の神話

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第四十三話 病院にてその四

 二人は帰ろうとした。しかしだった。
 樹里がふとだ。こんなことを上城に言ってきた。
「何か飲まない?」
「ジュース?」
「そう。紅茶とかね」
「喉渇いたんだ」
「ちょっとね」
 こう上城に言うのである。
「だから紙コップの自動販売機の」
「それで一息だね」
「そうしない?」
「うん、それじゃあね」
 上城もその誘いにはまんざらではなかった。それでだった。
 樹里の誘いに頷いた。それからだった。
 二人で近くの自動販売機でその紙コップの飲み物を買った。上城はホットのアメリカンコーヒー、樹里はというと。
「ココアなんだ」
「最近これ好きなの」
 ココアがだというのだ。薄茶色のかぐわしい香りの飲み物を。
「甘くてそれでね」
「味も飲みやすいよね」
「牛乳が入るからね」
「コーヒーより味がまろやかなんだよね」
「そう。だからなの」
 それでだと言うのだ。最近ココアが好きなのは。
 そのココアを手にしたままでだ。樹里は上城にこうも言った。
「それで何処で飲もうかしら」
「ううん、喫茶室にする?」
「そうね。けれどこの病院って」
 樹里は首を微かに右に捻って述べた。
「あれよね。喫茶室も多いわよね」
「幾つかあるね」
「屋上にもあるし」
 病院の屋上、そこにもあるというのだ。
「そこでも飲めるから」
「じゃあそこで飲む?」
 上城は樹里の言葉を受けてこう提案した。
「今はね」
「屋上でなの」
「そう、そこでね」
 樹里に対してまた言った。
「そうしない?」
「そうね。それじゃあね」
 樹里も上城のその提案を聞いて頷いた。それからだった。
 二人でそれぞれの飲み物手にしたまま病院の屋上に向かった。当然そこで飲む為だ。
 二人はただ飲む為にそこに向かった。だが、だった。
 屋上に入ると会話が聞こえた。そこにいたのは。
 一人は白衣の壮年の医師だ。半分程が白髪の落ち着いた雰囲気の、如何にも医師らしい男だった。そしてもう一人は。
 中田だった。彼は切実な顔で医師に話していた。
「それで入院費用は」
「いつもお疲れ様です」
「ああ、大したことじゃないからさ」
 入院費用の話はこう返す中田だった。
「俺にとっちゃな」
「ですがお三方共の設備だけでも」
「かなり費用がかかるっていうんだな」
「それに加えての入院費用まで、ですから」
「いいんだよ。払えるからな」
 だからいいと答える中田だった。
「それに金だってな」
「法律に触れずにですね」
「稼いだものだからな」
「確か試合か何かをされて」
「それで稼いでるんだよ」
 中田は医師にこう話した。 
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