トーゴの異世界無双
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第六十八話 さあ、大会の始まりだぜ!
「ところでやっぱり来たんだなステリア」
「やっぱり?」
「だって言ってただろ? 一か月後を楽しみにしてろってさ」
そう、彼女と別れる時、確かにそのようなことをステリアは言っていた。
だから一か月後にある『ヴェルーナ魔武大会』に参加するのだと思っていた。
「参加するんだろ?」
「う~ん、したいのはやまやまなんだけどねぇ……」
残念そうに言葉を放つ彼女を見て闘悟は首を傾げる。
「しねえのか?」
「しないんじゃなくて、できないのよね」
ステリアはここに来た理由を話した。
その話を聞いて闘悟は納得したように頷く。
というより、それが当たり前だと改めて認識する。
「そっか、代表の付き添いで来たのか」
「そうでもしなきゃ、城から出られそうになかったしね。ま、それでもママは渋ってたけどね」
父親であるブラスは付き添いに賛成だったが、それを母親であるメアリスは反対した。
一人旅などではないので安全は期待できたとしても、やはりお転婆なステリアのことが心配だった。
いつ気まぐれで勝手な行動をするか不安だった。
だから最後まで頑(かたく)なに首を縦に振りはしなかった。
だが、そこで兄であるギレンが母親の説得をした。
自分が責任を持って妹の面倒を見るからと許しをもらおうとした。
渋々であるがメアリスは了承したのだった。
「だから、今回は観戦で甘んじておくわよ。でもいつかは必ず参加してみるわよ!」
おいおい、どんな王女だよ。
母親の気持ちが痛いほど伝ってくるぞ!
こんな好戦的な性格の王女ってどうなんだろうか?
「前にも言ったけど、一応立場も重要なんだと思うぞ?」
「そんなもんどうでもいいわよ」
「そ、それはどうかと……」
話を聞いていたクィルが口を開く。
ハロは残念ながら興味の無い話だったのか、睡魔(すいま)に負けて今では闘悟の膝の上で夢の中だ。
「いいのよ! アタシはアタシだもん!」
前にも思ったけど、ホントに気持ちのいいくらいのポジティブ精神だな。
クィルも彼女の気性(きしょう)を理解しているのか、諦めたように肩を落とす。
「ははは、ところでクィルとステリアって仲良いの?」
人見知りの激しいクィルが、おどおどせずに話しているので、初対面では無いと考えた。
それに、ステリアのこともよく知っている感じが伝わってくる。
「あ、はいです。隣国同士ですから、昔から交友もありますです」
「そうよ、まあ、そうしょっちゅう来てるわけじゃないけどね」
「そっかぁ……あれ? でもハロはステリアのこと知らなかったよな?」
確かに闘悟は冗談でステリアに「誰だ?」と聞いたが、ハロは本気で知らないみたいだった。
「あ、それは単にハロが覚えていないだけなのです」
「というと?」
「実は、ステリア様がこちらに来られたのは三年ぶりなのです」
「ああ、それで」
三年ぶりだとすれば、ハロがステリアと会ったのは二歳の時だ。
ハロが覚えていなくても無理は無い。
「もう、クィルったら、その様付けいつになったら取れるのよ?」
「え……えっと……」
ステリアが口を尖(とが)らせて言うと、クィルが焦ったように目を泳がす。
「はぁ、もういいわ。気長に待つわよ」
諦めたように溜め息を漏らす。
クィルもホッとしたように息を吐く。
「ありがとうございますです。ですが、こちらも驚きましたです。まさかお二人がお知り合いでしたとは」
ステリアがここに来る前、さらっとステリアから話は聞いていたものの、もっと詳しい話を聞きたいと思っていた。
特に闘悟とステリアの出会いの話を細かく聞きたいと感じていた。
それがどういった感情からくるものなのかは分からないが、自分が知らない闘悟をステリアが知っていることが、少し不安に感じたのも事実だった。
それから三人は楽しそうに話をした。
その後、起きたハロが仲間外れするなと怒りながら詰め寄ってきたので、宥(なだ)めるのに苦労した。
そして迎えた大会当日。
今日から三日間は予選が行われる。
それで振るいに掛けられて本選出場者が選ばれる。
今までは参加者数が少なかったため、予選も一日で終わっていたが、今回は大掛かりになっている。
また、その予選の内容も出場者には知らされていない。
その内容は、今日発表されるはずだ。
だが、千二百人以上もいるので、どんな予選にするのか、誰もが楽しみにしていた。
そして今、出場者達はヴェルーナの闘武場(とうぶじょう)に集結している。
開催宣言を受けるためだ。
皆の前に現れたギルバニア王が、太い筒のようなものを持って話す。
「この度はよく集まってくれた!」
声が大きく響き周囲に行き渡らせる。
ん~いわゆるあれはマイクみたいなやつってところかな?
そう思ったので、近くにいるカイバに聞いてみる。
すると、筒の中には『拡音鉱石(かくおんこうせき)』という特殊な鉱石が嵌(は)め込まれているらしい。
文字の如く、音を拡張させる働きがある。
つまりは闘悟の判断通り、マイクの役割をしてくれている。
「ま、長ったらしい挨拶なんか面白くはねえ! そんじゃ始めるぜ!」
ギルバニアがニヤッと笑って大きく息を吸う。
「ただ今から『ヴェルーナ魔武大会』を開催する!!!」
その発言を聞いた者達は一斉に声を張り上げる。
さすが千人以上の熱気。
大気を震わせるほどの声が轟く。
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