万華鏡
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第二十六話 江田島へその四
「それで基地の中にお邪魔したりお店も出したりして」
「制服売ってるのね」
「それも」
「あと靴や帽子もね」
制服だけでなくそうしたものも売っているのだった。
「それも扱ってるから」
「ううん、そういうことなの」
「クリーニング屋さんも同じでね」
こちらの商売の話に戻る。
「アイロンをかけるより完璧に出来るっていうことで」
「礼装なら余計になのね」
「そう、礼装はとても自分では洗えないから」
それはとてもだった、詰襟は洗濯機では洗えない。
「クリーニング屋さんが引き受けるの」
「そういうことなの」
「自衛隊は身だしなみに五月蝿くて制服とか作業服はそうした学校では絶対にアイロンをかけないといけないの」
「えっ、それ凄いわね」
彩夏もその話にはびっくりした、他の面々もだ。
「制服に絶対なの」
「それも毎朝ね」
アイロンをかけていないと駄目だというのだ、そしてこれは海上自衛隊では特に厳しかったりする。
「あと靴も磨いて」
「靴もなの」
「どっちも皺も埃もついていないと駄目なのよ」
「それ何処のお嬢様学校?」
琴乃が呆然とした顔で問い返す。
「いや、そんなのとてもね」
「私達の学校じゃないわよね」
「そんな人いるかしら」
景子にもそれを問う。
「私はとても」
「私もよ、アイロンなんてね」
「かけないわよね」
「靴もね」
それもだった。
「磨くこともね」
「しないわよね、景子ちゃんも」
「それを毎日って」
「私もね」
今の話の中心にいる里香もだった、それは。
「そうしたことはね」
「しないわよね」
「ええ、衣替えの時にはクリーニングに出すけれど」
それでもだというのだ。
「アイロンかけたりとか磨いたりとかは」
「っていうか埃なんて付くし皺も出来るだろ」
美優は高校生の理屈から話した。
「普通にな」
「それでその江田島もなの」
「そうなんだな」
「江田島が一番厳しいの」
その身だしなみにだというのだ。
「もうちょっとでもあったら再チェックらしいから」
「一年いたらいいお嫁さんになれそうだな」
美優は里香の話を聞いて言った。
「アイロンに靴磨きってな」
「お掃除の点検も厳しいらしいわ」
「余計にだな」
掃除も聞くとさらにだった、美優は肉玉を食べながら言った。
「一体どんなところだろうな」
「行ってみてもお楽しみだけれど」
琴乃はまだ驚きを引きずっている、そのうえでの言葉だった。
「ううん、お話を聞くとね」
「かなりだよな」
「うん、怖いところね」
これは五人全員の感想だった、はじめての部活の合宿、中学校ではなかったのでそうなることについて期待にそうしたものも加わっていた。
だが大阪のお好み焼きを食べてそしてだった。
塾に行きこの日も過ごした、それから。
暫く夏を過ごした、七月が終わった。
そして本格的に暑くなる八月にだった、八月最初の部活の前に部長が他の部員達に対してこう言ったのだった。
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