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万華鏡

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第二十六話 江田島へその三

「その表現って」
「いや、そのままだから」
「確かに学校の制服は軍服が元だし」
 これはブレザーもだ、セーラー服にしても海軍の水兵の服が元である。詰襟は陸軍の軍服を黒くしただけだ。
「海軍のあの白い詰襟もね」
「白ランの元よね」
「それか黒の詰襟を白くしただけか」
「そっちなの?」
「ううん、私もその辺りはよく知らないけれど」
 里香は自分のお好み焼きをへらで切りながら彩夏に答える。彩夏が食べているのは豚玉である。
「それでもあの詰襟はね」
「着てるわよね」
「普段は着ていないの」
 そうだというのだ。
「白い制服は確かにあってもね」
「えっ、そうなの」
「あの制服は礼服なの」
「礼服だから普段はなのね」
「そう、着ていないの」
「じゃあ普段はどんな制服なの?」
「夏は白い制服だけれど略服っていう服でね」
 里香は彩夏にその略服のことも話した。
「半袖で薄い生地で襟が開いた」
「涼しい服なのね」
「そうなの」
「それを来てるのね」
「そう、礼服は滅多なことでないと着ないから」
 だから見ることは出来ないというのだ。
「ちょっとね」
「ううん、それは残念ね」
「礼服は一回着たらね」
 そうすればそれでだというのだ。
「すぐにクリーニングに出すみたいよ」
「一回着ただけで?」
「十分位着ただけでもね」
 それだけだ、まさに。
「クリーニングに出さないといけないのよ」
「白だから汚れるからね」
 景子が言う。
「白って光跳ね返して見栄えも綺麗だけれど」
「汚れやすいわよね」
「ええ、だからよね」
「そうなの。だから十分着たら」
 例えそれだけでもだというのだ。
「もうすぐにクリーニングに出さないといけないの」
「つまりあれね」
 琴乃は里香からその事情を聞いてこう言った。
「その学校の傍でクリーニング屋さんしたら仕事には困らないわね」
「実はね」
 里香もこのことを否定しない。
「そうみたいなのよ」
「だろうな、いい商売だよな」
「うん、他にも制服売るお店もね」
「そっちもか」
「コンスタントにいい商売になってるみたいなの」
「確かにいい商売だよな」
 美優も話を聞いて納得して頷く。
「自衛隊の傍にいて引き受けますとか言うだけで成り立つからな」
「けれど確か自衛隊って制服とか支給してくれるんじゃないの?」 
 彩夏はこのことに気付いた。
「そうじゃないの?」
「それはそうだけれど」
 それでもだというのだ。
「完品の制服とかって仕立てが今一つよくないらしくて」
「それでなの」
「そうなの、それに一つだけだといざっていう時に困るから」
 少なくとも業者さんはこう言う。 
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