ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ダイシーカフェにて
大澤祥恵さん、そしてその娘の瑞恵ちゃんが去ったダイシーカフェでコーヒーを飲んでいると詩乃が思い出したように言った
「そういえばどんな罰でも受けるって言ったよね、燐」
「ま、まあ……」
確かに言ったが……どんな刑が執行されるのだろうか、と背中に冷たい汗が流れる
「な、なら今週の日曜日に私をあの遊園地に連れて行って!」
顔を赤らめて叫ぶように言い放った
もちろん答えは……
「わかった。朝に駅集合でいいか?」
「うん!」
詩乃は頷くと女性陣の集まっているところへ戻って行った
そして、ワイワイなにやら話している
……女性が三人(アスナ、リズベット、シノン)集まれば姦しいというが、本当だな
「おい、燐。まさかと思うが……」
「たぶん……俺の自惚れでなければ、な」
「そうか! それはめでたい!」
まだ決まったわけではないのに満面の笑みを見せる壁、もといエギル。
……サムズアップして脇腹をつつくのはやめろ
「……なにがめでたいんだ?」
相変わらず男女の関係に対する機微がわからないキリト
例に漏れず今回もわからなかったらしい
よくアスナはこんな鈍感男を捕まえられたよな
……捕まえてからも大変だろうが
「……鈍感男は置いておこう」
「……そうだな」
処置なし。アスナやリズベットやシリカには悪いが更正は諦めよう
ここまでいくともはや清々しい
「ちょ、ちょっと待てよ。教えてくれたっていいだろ!?」
「自分で考えろや」
「三分以内に気付けなかったら去ね。お前の場合死なないと治らんかもしれん」
「酷くない!?」
全く酷くない。泣かしてきた女は両手の指に余るほどの男の敵だ……たぶん
「俺はこんなやつより彼女いない暦が長かったのか……」
「それに以上は今現在進行形で窓に貼りついてるやつが滝のように目から汁を落としそうだからやめてやってくれ」
エギルが入り口の扉の横にある窓を指差しながら言う
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら指で差している先を目で追うと……
「うわぁ……」
「なにをやってんだよ、クライン……」
年齢=彼女いない暦。将来の魔法使い候補(店に行かなければ)であるクラインが窓に顔を押しつけながらこちらを見ていた
……目が合った
「……とりあえず営業妨害を理由に警察に電話するのが正解だと思うんだが……どう思う?」
「公前猥褻罪とかは?」
「余裕」
「とりあえず本当にそうならないように中に入れないか?」
「……しょうがないな」
俺は数秒間黙考しクラインを中へ招き入れることにした
今日の飲み代はクライン持ちということで
「ほら、クライン。中にさっさと入れ」
「あ、ああ……」
扉を開けてクラインを招き入れるとクラインはのっそりと肩を若干落としながらキリトの横に腰掛ける
「エギル、ちょい強めの酒をくれ」
「あいよ」
エギルが店で上から数えた方が早い……かつクラインがギリギリ払えるであろう値段の酒をグラスに注ぎ、ロックアイスを浮かべてクラインの前に出した
クラインはそれを一気に飲み干すとグラスを机の上に置いた
「さすがエギル。商人の鑑だな」
「おいおい、ネタバレはやめてくれよ?」
「当然だろ?そんなつまらないことをするわけがない」
すべてはクラインが伝票をもらったとき、だ
「まあ、いいか。それよりもクライン……仕事はいいのか?」
クラインの懐の氷河期の訪れを予見したキリトは俺とエギルの悪人面を見てなにかを諦めた
「今日は午後休をとってきたんだよ。こうやってたまに休みをとらねぇと過労死しちまうって……」
「なんで辞めないんだ?」
「そりゃ、SAOに囚われていたのにも関わらず面倒見てくれるのの恩返しっつうか……」
クラインの勤めている会社は仕事による拘束時間が労働基準法スレスレの超ブラック企業ではあるがSAO事件の折、昏倒し続けていたクラインを解雇せず有給扱いにしてくれていたらしい
会社の思惑はどうであれグチグチと文句を言いながらもクラインは恩義を感じてしっかりと働いているのだ
「そんなことよりさぁ……やっぱいいよな」
引き締まっていた表情がいきなりだらしなく緩む。視線の先には明日奈と里香と詩乃の姿があった
「確かにあの一角は華やいだ雰囲気だよな。なぜかは知らないが美人ばっかだし」
クラインの言葉にエギルが乗った
SAOやGGOで数少ない女性プレイヤー……それもここまでレベルの高い面々が集まるとか偶然を通り越して呪いレベルだ
いわゆる主人公の呪い(フラグ)
「あれ?」
「どうした?」
「いや、知らない娘が一人いるんだが……まさか、この俺様の春がついにーッ?!」
SAOのオフ会でクラインは以前から見知っているアスナはもちろんゲーム内では接点の無かったリズとも顔を合わせている
つまり消去法でいってクラインが知らない娘というのは……
「クライン、死んだな」
「ああ、燐の逆鱗に触れるとは……な」
お前らは俺をなんだと思っているんだ?
「とりあえずファーストコンタクトが大事だよな!」
そう言ってネクタイを締め直すとクラインは立ち上がった
「なあ、エギル。フライパンを貸してくれないか?」
「一つでいいか?」
「二つあるとありがたい」
「わかった」
エギルがカウンターの下にある収納スペースから二つのフライパンを取り出して俺に貸してくれた
その間にクラインは詩乃の前に移動している
「俺の名前は壺井遼太郎っていいます。24歳独身です」
「は、はぁ……」
「ちょっとクライン! なにしにきたのよ」
「クラインってこんな性格だったっけ?」
面むかって知らない男に話しかけられた詩乃は困惑気に生返事を返し、里香がいつも通りクラインに噛み付く。そして、あまりにもキャラ崩壊が過ぎたため明日奈がぽつりと呟いた
「突然ですみませんが俺と付き合って……」
その先の言葉が出ることは無かった
「詩乃、大丈夫か?」
「う、うん。平気だけど……」
俺の足元に転がっている屍に目を向ける女子三人
「いい音したわねぇ……」
「生きてる……よね?」
俺がやったことは単純。クラインの顔をフライパンでサンドイッチにしただけだ
よい子と狙った場所に当てる技術を持たない者はたとえ手でやるとしても真似をするなよ?
耳の中へ空気が勢いよく押し出されて鼓膜が簡単に砕け散るから
「こいつのことは気にするな。クマムシ並みの生命力を持ってるから……」
「えっと……知り合いなんだよね?」
「一応はな。……邪魔して悪かった。引き続きガールズトークを楽しんでくれ」
「燐君も一緒に話さない?」
「遠慮しとく。黒一点になるほど図太くないからな」
キリトは余裕でこれをこなす。図太いというか空気が読めないというか鈍感というか……
「そう……あ、そうだ」
「なんだ?」
「子供ができたら報告してね?」
詩乃が飲んでいた紅茶を危うく噴き出しそうになりあわてて飲み込むとゴホゴホとむせた
明日奈の天然は今に始まったことではないので俺は(多少動揺しながら)普通に返す
「お前は俺の親かなにかか?」
「うん」
「そういえばそういう設定もあったな……」
ここ最近の出来事が濃厚過ぎて本気で失念していた
このまま明日奈を暴走させるとR15じゃきかなくなるため会話を打ち切らせてもらう
「燐……」
「ん?」
「や、優しくしてね……」
詩乃のその言葉に思わず頭を抱えた
里香の方を見ると苦笑して首を左右に振った
「まあ……そのうちな」
そういえば、まだ(・・・付き合って無かったな……俺たち
「そのうちだって。よかったね、詩乃ちゃん」
「う、うん……」
「そろそろお開きにしたいんだが、いいか?」
「わかったわ。あたしが明日奈を止めておくから」
エスカレートする明日奈をチラリと見て疲れたように里香が言った
「ああ、任せる。代金はこっちで払っておくから」
「ん、ありがと」
クラインをズルズル引きずりながら再び男性陣の方へ
エギルとキリトがニヤニヤ笑ってるのがちょっとイラつく
「うちの家ではヤるなよ?」
「クラインと割り勘させるぞ、キリト」
フライパンはいつでも準備オーケーだ
「わ、わかった。もう言わない……」
お前が俺を弄ろうなどと五不可思議年(50000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000年)ほど足りない
「さて、エギル。クラインをここに転がしておくから代金はこいつから徴収しといてくれ」
「あいよ。毎度あり」
伝票を見せてもらったのだが桁の数が五つあったのにはちょっと驚いた
同情はしないけど
「じゃあ、帰るかね」
「また今度……駅でね」
「おう」
俺と詩乃がそう話している後ろで額を寄あうキリト、アスナのニ人
「……家からの尾行だな……」
「……キリト君、それはバレやすいと思うんだけど……」
十分聞こえてるし、バレてるんだが
後書き
次回、デートと作者のピンチ←
作者の蕾姫です
ようやく……ようやく、燐と詩乃がくっつきます
作者なんて彼女の影すらないのに……
残りのサブヒロインは略奪愛に目覚める……のか?
うーん……直葉の性格からするとずっと見守ってて生涯独身なんてこともあり得なくもない?
いっそ妾に(ぉぃ
ちなみにミユはヒロインではありません。何人か勘違いをされていたみたいなので、念のため明記しておきます
では、感想や意見をよろしくお願いします!
ページ上へ戻る