| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十一話 鍛えた結果その十四

「びっくりするから」
「じゃあ一回観てみるわね」
「他の国の映画とか観ると色々文化の違いが出るけれど」
 それはドラマも同じだというのだ。
「凄いからね」
「わかったわ。観てみるわね」
「うん、そうしてみて」
「二人で観ようね」
 樹里はささやかな反撃を仕掛けた。
「そうしようね」
「二人でって?」
「私のお家でね」
 微かだが思わせぶりな笑みでの言葉だった。
「そうしない?」
「村山さんのお家でっていうと」
「二人で観ましょう」
「いや、村山さんのお家だと」
 樹里の反撃は失敗に終わった。上城には効果がなかった。
「おじさんや弟さんがいるから」
「ええと。つまりは」
「つまりはって?」
「だから。私の部屋でね」
 反撃は失敗に終わってもそれでもだった。樹里は何とか食い下がりそのうえでまた彼に仕掛けたのである。
「一緒に観ましょう」
「パソコンで」
「だから。テレビで観ないじゃない」
「言われてみればそうか。検索するんだし」
「そう。だから二人でね」
「わかったよ。そういうことだね」
 上城がわかったのは表面的なことだった。それだけだった。
「じゃあ一緒にね」
「そう。一緒にね」
 何とかだ。樹里は話をこぎつけたことに内心安堵しながら応えた。
「観ようね」
「うん、それじゃあね」
「二人でよ」 
 かなり切実に言う樹里だった。
「わかってくれた?」
「わかってるよ。安心して」 
 こう返す上城だった。
「充分にね」
「そうかしら」
「うん。だからね」
「だといいけれど」
 樹里はいささか不安な顔で述べた。
「本当にね」
「何かあるみたいな喋り方だけれど」
「別に」 
 樹里はこのことは隠した。
「何もないから安心してね」
「そう。だったらいいけれどね
「ええ、それじゃあ今度ね」
「私のお部屋で台湾ドラマね」
「それ観ようね」
 こうした話もしたのだった。二人は今は学生としてそれなりに学生らしい話をした。それは上城にとってもいい息抜きになった。戦いの合間の。


第四十一話   完


                  2012・7・30 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧