DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第3章:武器屋トルネコと幼女騎士リューラ
第5話:脱獄教唆
(ボンモール)
トルネコSIDE
リューラさんのお陰で薬草を持ち歩かずに済む様になり、代わりに保険として貴重なアイテム『キメラの翼』を購入する事が出来た。
この『キメラの翼』は、値が張る品物ではあるのだが、身に危険が迫ったら即座に行った事のある町や村に帰る事が出来るアイテムなのだ。
尤も、1つにつき1人しか効果が無いのだが…
リューラさんならば、1人になっても生き抜けるだろう!
私用の取って置きとして大事に使うとしよう!
さて…
そんな保険を用意して挑んだボンモールまでの旅…
リューラさんの活躍により、危機に陥ることなく目的地まで辿り着く事が出来た。
早速城下で情報収集をしていると、何やら不穏な空気を感じる事が出来る。
どうやらこの国は戦の準備を進めている様で、色々と物資が不足がちだという話だ。
これはチャンスか? 武器屋として王様に謁見し、この破邪の剣を高値で売りつける事が出来るかもしれない。
だが私はまだ駆け出しの武器屋…
唯一の武器、破邪の剣1本では大した利益を得られないかもしれない。
他の武器を要求されたら、何とかリューラさんを説得して、彼女の武器も売りに出そう。
お父上を捜す為には資金が必要なんです…って言えば信じるだろう。
決意を込めた私は、早速ボンモール国王に謁見している。
駆け出しだが武器屋である事を告げ、私に出来る事はないかを尋ねる…が、
「武器は間に合っている! 我が国は防具の方が不足がちなのだ…」
と、敢えなく儲ける事は出来なかった。
しかし…
「お前は北にあるレイクナバからやって来たと言ったな!? 途中で『ドン・ガアデ』に会わなかったか? エンドールへ行く為の橋が壊れてしまった為、ドン・ガアデに直す様依頼をしたのだ。材料を手に入れると言い、北の森に入っていったきり帰ってこなくなった…直ぐにでもエンドールへ攻め込みたいのに、困った事だ。お前等もドン・ガアデを見つけたら、大至急橋を直すようにと伝えておけ!」
と新たなる情報を入手!
私も北の森に赴き、橋修理の材料になる物を集め、ボンモール王国及びドン・ガアデに売りつければ、儲ける事が出来るかもしれない。
早速材料集めをしようと思い、王様の前を恭しく立ち去る。
気持ちが焦っていたらしく、謁見の間から出るなり走り出してしまい、前方不注意で誰かに激突し尻餅をついてしまった。
「も、申し訳ありません!」
「この痴れ者が! ボンモール王国の王子、リック殿下にぶつかるとは何事か!」
どうやらこの国の王子様にぶつかってしまい、側にいた性格の悪そうなメイドに大声で怒られてます…
権力を笠に着ていけ好かないですねぇ…
「ははは…良いんだよ。僕も前を見ていなかったのが悪いんだから。旅の商人さん…貴方は大丈夫ですか?」
同じように尻餅を付いていたのに、私より先に起きあがり手を差し伸べてくれる王子様…
このメイドとは違い心優しい様だ。
「殿下!? その様な卑しき身分の者に触れてはいけません! 先日捕らえられた詐欺師も、この者と同じレイクナバ出身と言われております…殿下に近付くのが目的で、ワザとぶつかってきたのかもしれませぬ。早々にこの場を離れるのが良いと思います!」
何とも腹の立つ女が側にいるものだ…
心優しい王子様が、真っ直ぐ育たれて本当に良かった。
この女の性格が感染したしまったら、まさに悲劇としか言いようがない!
そんな事を考えながらメイドを睨んでいると、優しい王子様は私を立たせ…
「後で城下にある武器屋の裏に来てください…貴方にお願いしたい事があります。人目に付かない様注意してください…」
と、耳元で囁き去っていった。
はて…一国の王子様が、駆け出しの武器屋如きに何の用だろうか?
“後で”と言っていたが、どのくらい後が良いのかな?
もう行って待っていても良いのかな?
「トルネコ…レイクナバの人が、牢屋にいるって…」
私が待ち合わせ場所に行こうとしていると、先程の囁きを聞いてないリューラさんが、意地悪メイドの『先日捕らえられた詐欺師も、この者と同じレイクナバ出身』を指摘し、牢屋へと私を導いて行く。
罪人なんか放っておけば良いのに…
下手に見つかると、私達まで共犯者扱いされてしまいますよ…
だが、私の手を掴んだリューラさんは、ズンズンと地下牢の方へと進み行き、危険な場所へと連れ去るのだった…
ジメジメと湿気漂う地下牢。
イヤイヤではあるのだが、子供とは思えない凄い力で私を導くリューラさんに連れられ、見張りの兵に見つからない様に牢の中を覗きまくる私達。
すると、1つの牢に見覚えのある顔が…
誰だったかな?
じっくり眺め思い出そうとすると…
「あ、トルネコさん!? もしかしてレイクナバに住んでいるトルネコさんだよね!?」
「は、はい…私はトルネコですが…貴方は?」
突然に話しかけられた為、素直に名を名乗ってしまったが、失敗だったかな?
「俺だよ! トム爺さんの息子…ジェリーだよ!」
「!? 貴方が…トムお爺さんの…?」
突然の自己紹介……嬉しそうに驚くのはトム爺と心を通わせているリューラさん。
しかし何でトム爺さんの息子がボンモールの牢屋に囚われているんだ?
もしかして…さっき性格の悪そうなメイドが言っていた、レイクナバの詐欺師ってのは彼の事なのか?
だとしたら関わり合わない方が身の為だろうなぁ…
これ以上話しかけられる前に立ち去りたいです。
「なぁトルネコさん…助けてくれよ…出来心だったんだ。もう二度と悪い事はしないからさぁ…」
助けろと言われてもどうしようもないだろうに…
そろそろ見張りが此方にやって来るタイミングだ。
早くこの場から逃げたい…と言うより、大きい声で話しかけないでもらいたい!
「頼むよトルネコさん!」
「た、頼まれても困ります…大体どうやって助ければ良いのですか!? 私は牢屋の鍵を開けられませんよ。コネも無いから、釈放をお願いする事も出来ませんからね!」
私は小声で遠回しに断りを入れる。
これ以上此処にいるのは本当に危険なのだ。
こんな場面を見張りに見られたら、絶対に仲間だと勘違いされ一緒に投獄されてしまう。
「トルネコさん…キメラの翼を持ってないか? 商人だったら、あんな便利アイテムを持っているだろう? それを1つくれれば、俺は静かに逃げ出せる。逃げ出せればレイクナバに戻って、真っ当に生活しようと思ってるんだ!」
「残念ながら「トルネコ…キメラの翼、買ってた…トムお爺さんの息子に、キメラの翼あげて…」
関わり合いたくない上、大事なキメラの翼を渡したくない私は、嘘を吐いて逃げ出そうと思ったのだが、トム爺さんに思い入れが出来てしまったリューラさんが、本当の事を言って脱獄を手伝わせようとする。
「ほ、本当かい!? 是非貰えないだろうか!? 一生恩に着るからさ!」
声がデカイ…
見張りが気付いてしまうじゃないですか!!
あぁ…困った。
隣ではトム爺さんを喜ばせたいリューラさんが、瞳を輝かせながら私を見上げている…
ここで私が断固拒絶をすると、リューラさんは私の事を嫌ってしまうかもしれない。
折角の無料ボディーガードを手放すのは非常に惜しい!
「わ、分かりました…貴方にキメラの翼を譲ります。……しかし、絶対に約束してください…もう二度と悪事を行わないと…そしてレイクナバから出ないと約束してください!」
脱獄の手助けをして、また彼が掴まったら…私の罪まで明るみに出てしまう。
「約束する! 本当に懲りたんだ…もう二度と悪い事はしないし、レイクナバで残りの人生を過ごすつもりだ!」
正直口約束なんて信じられないのですが、見張りの足音が近付いてきているので、急いでこの場を離れなくてはならない。
投げる様にキメラの翼をジェリーに渡し、リューラさんの手を引いて牢屋から逃げ出す私。
ジェリーが無事脱獄出来たのかは知らない。
結果を見る事もなく、急いでお城から出てしまったので、結果は分からない。
私が罪人にならなければそれで良いのだ。
トルネコSIDE END
後書き
トム爺さんと息子のジェリーです………
はい。その通りでございますよ。
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