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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-4 magical girl of blond hair

 
前書き



金髪の魔法少女。


 

 



なのはが魔法少女になってから数日。
非現実的な力――――魔法を手に入れても何も変わらない日常。


あのフェレット、名前をユーノ・スクライアを言い、今は高町家のペットとして過ごしている。
そして授業中に思考回路から魔力を通して言葉を相手に直接送る念話というものを使って、なのははユーノから魔法とはなどといった、雑学的なことの説明を聞いていた。


周りから見るといつもと変わらないなのは。
だが、アリサ・バニングスは敏感に感じ取っていた。
なのはが時々上の空になっているのだ。話しかければすぐに気付いて、返してくれる。
だが、何かが違うのだ。何かが――――。


アリサがなのはから感じ取っているとき、なのはは燐夜のことを考えていた。
燐夜が昨日あそこにいた理由は知らない。一人暮らしなため、燐夜が一から十までやらなくてはならないのだ。だから、何をしようが燐夜の責任。
勿論そんなことはなのはにはまだ分からない。まだ小学3年生なのだ。責任とは何かと哲学みたいなことは分かる筈もない。


そうではない。
何故、燐夜はあのタイミングで出てこられたのか。
もしなのはが魔法少女になっているところを見られていたら……
思わず頭を振って恥ずかしい思いをかき消した。軽く頬が赤くなっているが、何とかして誤魔化す。
まだ顔が赤いが、もう大丈夫なはずだ。


魔法の力をどうするか。
このままただ、持っているだけでもいいのか。それとも強くなるためにあのフェレット、ユーノ・スクライアから指導を受けて、強くなってあの化け物たちを倒す力を手に入れるか。


「――――よしっ!!」


胸の前で両手を握って握り拳を作り、大きく意気込んだ。
なのはが選んだのは後者、即ちユーノに教えを乞い、強くなること。
ユーノのことを手伝いたい気持ちだってある。
でもそれ以上に燐夜に近づきたかった。


三桜燐夜は強い。
なのはの中で一番強いのは自分のお父さん。次に燐夜が来るのだ。
燐夜はあんな強い仕打ちを受けても、なのはが強く願ったため、あれから3年の時間が過ぎてから翠屋に顔を出したのだ。なのはと共に――――。


      ◯


「たっだいまー!」
「お帰り、なのは。――――? ねえ、君。」
「…………何でしょうか」


なのはと共に翠屋に入ると、なのはの母親である高町桃子がいた。
桃子は、有名なレストランでパティシエの修行をして、夫である士郎の助けもあり、お店と出すまでに至ったのだ。


最初、燐夜はなのはの陰に隠れるように翠屋に入ってきた。
だが、桃子は燐夜も見つけてなのはが入学してもう男友達を連れてきたと驚く。
それと同時に見覚えのある容姿をした少年だった事に疑問を抱いた。
小学校での異性などといった関係は、そんなに関係ない。そんなことを思うのは過保護な親とマセてるガキだけだ。
そして、過保護な親――――ではなく、過保護な兄が一瞬にして燐夜の前まで来て、胸ぐらを掴んで近くにある道場へ連れ去っていった。


あまりにも一瞬のことに桃子は反応が遅れた。
すぐに士郎を奥から呼んで自分たちの息子が仕出かしたことをそのまま士郎に伝える。
すると、見る見るうちに顔を怒りの表情に染めた士郎がゆっくりと道場の方へと歩いていった。


そのころ道場では小刀木刀を二本持った恭也と長めの太刀一本だけを持った燐夜が相対していた。


「本当にその武器でいい――――」
「ウザいからさっさと始めてくれないか?」


恭也はせっかく親切心で扱いが難しいとされる長刀を変えてやってもいいと言っているのに、燐夜から放たれた一言が恭也の心を押し留めていた理性がどこかへ弾け飛んだ。


加減のことなど歩法である縮地を使って、燐夜の頭に向かって木刀を振り下ろそうと腕を振ったときまで忘れていた。当然、燐夜に恭也の渾身の一撃が襲い掛かる。
燐夜は恭也の一撃を半身ずらすことで避けて、後ろに距離を取って居合の構えを取った。
恭也は理性が飛んでいたとはいえ、思いっきり力を込めた一撃を紙一重で避けられたことに驚きを隠せない。
――――その隙が命取りになるとも知らずに。


「――――」
「! くっ!」


音もなく斬りかかってきた燐夜。
上からの袈裟切りに合わせるように木刀を二本交差させて守ろうとしたが、想像以上の力に押し負けて後ろに二本とも弾き飛ばされてしまう。
しかし、燐夜の攻撃はまだ終わっていない。
刀身を反転。下からの逆袈裟切り。
視界に入っていなかった死角からの一手。恭也は対応出来ない。一種の放心状態に陥って次来るかもしれない攻撃のことが頭に入っていなかったのだ。


――ドコォッ!!


鈍い音と共に恭也が地面に崩れ落ちる。
カランと軽い音を立てて燐夜が持っていた長刀も地面に落ちた。
額についた汗をぬぐっていると道場に誰かが入ってきた。


「君は燐夜君じゃないか!」
「……お久しぶりです、士郎さん」


この後、高町夫婦と高町美由希とは和解できた。
というより、高町夫婦は燐夜のことを何一つ疑わなかった。美由希はそんな親を見て、自分がいかに恥ずかしい行為をしていたか反省して、すっかり刺々しさは無くなっていた。
燐夜を見て、すぐに謝ってきたのだから。


だが、恭也との関係は改善されることなかった――――。


      ◯


「……ちっ、いやな夢だ……」


燐夜は公園のベンチに寝転んでいていつのまにか寝てしまっていたようだ。
寝てた場所が悪かったのか、いつもは見ないいやな夢を見てしまったのか。
あの夢は8歳の頃の時だったはずだから3年前のことだ。


もうあんな夢は見たいとは思えない。
頭を振って一度クリアにしてから、今自分が置かれている状況を確かめようと辺りを見渡す。


暗い。公園には街灯しか明かりが入らない。
住宅街とは違って家から漏れ出る光が入らないのだ。
しかも、木に周りを囲まれているため、街灯の光も遠くまで届くことなく街灯で照らされているところは、ごく狭い範囲になってしまっている。
地域の人も夜はあんまり寄りつくことの無い公園だからこの暗さも改善されそうにないのだ。


そんな公園の一角が妙に青白い。
気に覆われているから住宅の方に光が漏れることはないが、燐夜がいるベンチから青白い光が見えることは確かだ。


燐夜は寝起きで怠い体を動かしてその光のもとまで歩いていく。
特別光が強いというわけでもなく、直接見ても目に影響は与えない程度だと思う。
勿論、暗い所にあるわけだから幾分かは眩しく見える。
ようやく寝起きでふわふわとした足取りがしっかりとしたものになってきた。


「これは……宝石?」


燐夜が手に取ったものは青い綺麗な宝石だった。
アイオライト、いやあれよりも青いかもしれない。サファイアに近い。
くすみのない綺麗な青。
サファイアは高いもので40万は下らないという。


そこまで考えたところで頭に何か聞こえてきた。
低い声、掠れて……男の声だ。


〔汝、何を願う。願いを申せ、さすればこの力で汝の願いを叶えることだろう……〕


願い……。
これはあれか。力がほしいとか願えばこの宝石が光り出すやつか。
だが、こうして考えているのを読み取って強制的に願いをかなえさせるものもあるが……。
これはどうやら違うようだ。
頭に聞こえてきたように、この宝石に語りかけるように何か願いを口にすればいいのだろう。


…………。
願いはない。それにいきなり願い事を言えと言われても思いつくのはないだろう。


こんな感じに考えながら道を歩いていると声をかけられた。
その声に反応して振り返ると、少女がいた。
おそらく長いであろう金髪を二つにまとめて、それを揺らしながら宙に浮いている。
普通じゃ考えられない。
これじゃあまるで、あの時に見たなのはじゃないか。


闇夜に紛れる黒いレオタードにも似た服を着て、同じように黒いマントを羽織って、その黒さが金髪を映えさせている。
だが、一つ異彩を放つものがある。手に持つ斧のようなもの。


「それをこちらに渡してください」
「それは別にいいんだが……おなか空いてないか?」
「いや、そんな……」


金髪少女の言葉は最後まで続くことはなかった。
少女の言葉に重なるようにおなかから音が鳴る。おなかが空いたときになる空腹の合図。
それを目の前にいる少年に聞かれたことが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして俯いた。


「あーっと……何か食うか? 俺の家に来なきゃないけど」


金髪少女は最初こそは首を横に振った。
だが、再度おなかから音が聞こえた。体は正直だった。
少年の言葉を信じてみるか、それとも強制的にあれを奪い取るか。少女に決断が迫られている。


結局、食欲には勝てなかった少女は首を縦に振って、了承の意を表した。


      ◯


「ここ、私が住んでるマンションだ……」
「ん? そうなのか。ここに部屋を持っている人が俺にタダで貸してくれたんだ。君は?」
「……私も同じようなもの」


意外なことに、燐夜が大家から借りれた部屋はマンションだったこと。そして、視線の先にいる少女も、おそらく燐夜が借りた人と同じ人から借りた部屋なのだろう。


二人はエレベーターに乗り込む。
その間に燐夜は部屋を貸してくれたあの老婆のことを考えていた。
部屋を貸してくれた老婆は、齢85らしい。もう先が長くないから、持っている財産を息子や孫にやることなく、燐夜にあげたも同然のことをした。金髪の少女にも同様に。
相当な資産家だった。
もう遺書まで書いているみたいだが、先は長くはないが、まだ生きていたいそうなのだ。


そうこう考えているうちにチンという音と共に燐夜が住む部屋がある階についた。
どうやらそこは少女も同じ階に住んでいるようで驚いていた。
トコトコと二人並んで歩いていく。
銀と金が並んで歩くさまは、まるで兄弟のように見えなくもない。


「ここだ」
「え!? …………この部屋の隣、私の家だよ……」
「……マジ?」
「……ほんと」


さらに意外な事実に燐夜と金髪の少女は驚き、言葉を失う。
だが、二人はこのまま廊下にいるのもあれなので、燐夜の家に入っていく。
入るときに金髪の少女が自分の家に戻って誰かを呼んで、再び出てきた。


金髪の少女と一緒に出てきたのは、橙色の髪を持った犬の耳があって、尻尾が揺れている。
そんな女性がいた。
燐夜に対して明らかに警戒心を抱いている。
女性の様子に気づいた少女が必死に宥めている。


燐夜は二人がようやく落ち着いたところで家に招き入れた。
初めて他の人の家の中に入るのか、やたらときょろきょろしていたが、別に気にすることでもないのでそのままスルーして同じ間取りであろう部屋をリビングまで行く。
一般的な家庭と変わらないリビングに二人を入れ、適当に椅子についているように言う。
燐夜は二人が座るのを確認しないうちにキッチンの方へ行き、まとめて昨日作って置いたカレーを温めて、人数分皿を用意して盛り付ける。
それをトレイに乗せて、リビングへ持っていく。


「来たよ、アルフ」
「あ、本当だ」


燐夜が来たのを少女が見て、少女にアルフと呼ばれた女性は物珍しそうに動いていたが、椅子に座った。
それから少しもしないうちに少女とアルフの前にカレーが出される。


おいしそうな匂いが漂ってくる。
アルフはもう待ちきれないようだ。尻尾がさっきからパタパタと忙しなく動いている。


「いただきます」
「……ねえ、そのいただきますって何?」
「んあ? ああ、これは食材に感謝して食べることを意味しているような気がする。まあ、感謝して食べますと言っているようなものだ。ちなみに食べ終わったらご馳走様な」
「ふ~ん……いただきます」
「いっただっきまぁす!」


少女にいただきますの挨拶の件で説明を求められ、口に入れようとしていたカレーを一旦置いてから説明した。
それを聞いた二人はすぐに実行する。少女は静かに。アルフは待ちきれなかったのか元気が良かった。
ここで燐夜はようやく思い至る。少女の名前を聞いていないことに。


「なあ、自己紹介してないよな」
「……そ、そうだったね。じゃあ私から、フェイト・テスタロッサっていうの、よろしく」
「あたしはアルフっていうんだ」
「じゃあ俺だな。三桜燐夜、よろしく」


燐夜にとって久しぶりに人と食べた夕食はとても温かく感じた。


「……ねえ、また食べに来て良い? 私たち料理できなくて」
「別にいいよ。料理も少しずつ教えてあげれるし」
「ほんと!! ありがとう!!」


フェイトの純粋て無垢な笑顔は燐夜にとって眩しく見えた。
自分の穢れた心で見ることはできない……。


「御馳走様でした」
「「御馳走さまっ!」」


 
 

 
後書き
今まで書いた話で一番長いなぁ~

バカテスの一話を投稿しました。暇な人はどうぞ。 
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