清教徒
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第二幕その三
第二幕その三
「ですがもう議会で決まったことなのです。いえ」
言葉を変えた。
「クロムウェル閣下が決められたことなのです。それはもう仕方のないことなのです」
「私もクロムウェル閣下のことは知っている」
ジョルジョはそう言った。
「それでは」
「うむ。しかし変えることはできる。誤った決定は変えられなければならない」
「それを私に仰るのですか」
「他に誰に対して言えというのか」
「いえ」
また口を固くさせた。
「私以外に言われることはないでしょう」
「そうだ。私はあの時のことを知っている。あの貴婦人は王妃様だったな」
「はい」
「そして彼はあの方を御護りした。違うか」
「いえ、その通りです」
リッカルドは答えた。
「それを君は通した。おそらく君にも思うところがあったのだろう」
「否定はしません」
そう答えた。
「それにより彼女が不幸になった。それはわかるな」
「・・・・・・・・・」
答えることができなかった。それは肯定の沈黙であった。
「君は彼女を不幸にしてしまった。そしてもう一人不幸にしたいのか。いや、言葉を付け加えよう」
さらに言った。
「彼女をさらに不幸にしたいのか。愛する者を永遠に奪うことで」
「それは・・・・・・」
「私は君のことも知っている。君はそのようなことをできるような者ではない」
「それは」
「そうであろう。今君も後悔している筈だ」
「はい・・・・・・」
遂に頷いた。それを認めたのであった。
「わかりました。全てを認め貴方に従います」
「よし」
ジョルジョはそれを聞いて頷いた。
「やはり君は私が思った通りの男だった。私の目に狂いはなかったのだ」
それが嬉しくもあった。
「それでは今から私と君は同じだ。共に永遠の信義を誓おう」
「はい」
互いに腕に剣を入れた。その傷口を付け合う。こうして二人は血の繋がりとなった。
「この血において誓おう」
「この血において誓いました」
互いに言い合う。
「我々は二人の命の為に全てを捧げようぞ」
「はい。ですが一つ気になることがあります」
「友よ、何だ」
リッカルドの言葉に顔を向けた。
「我々は戦場に向かわなくてはなりません」
「うむ」
「その戦場に彼がいたならば・・・・・・。どうしますか」
「彼は死ぬことはない。絶対に死ぬことはない」
それに対してにこやかに笑ってそう答えた。
「何故でしょうか」
「彼もまた神の加護を受けているからだ」
「神の加護を」
「そうだ。だから迷うことはない。我々は戦場においてはただ勇ましく、誇り高く戦うことだけを考えればいい。わかったな」
「わかりました」
リッカルドは頷いた。
「戦うことだけを考えよう。そして力の限りな」
「はい」
「ラッパの音と共に進もう。そして我等は栄光と勝利を手にするのだ」
「我等の手に栄光と勝利が」
「そうだ、よいな」
「わかりました、我が同志」
「うむ、我が友よ」
彼等は固く誓い合った。そして互いに命をかけることを約束したのであった。
それからまた暫く経った。戦いがはじまりそれは清教徒達に有利に進んでいた。だが王党派の中にアルトゥーロの姿は見えずその行方はようとして知れなかった。エルヴィーラの様子はそれを受けてか一向によくはならずやはり狂気のていを示したままであった。だがジョルジョもリッカルドも最早迷いはなかった。彼等はただ戦場で力の限り戦うのであった。
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