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ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍

作者:ユキアン
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第5話


「これをオレがやったのか?」

イッセーの目の前にあった岩山は全て吹き飛び、更地となっている。

「そうだ、それこそが聖闘士の技、廬山昇龍覇だ。といってもまだ扱いきれていないようだがな」

技の反動でイッセーの両腕がボロボロになっている。小宇宙が少なかった証拠だ。ひとまず真央点を突き、止血だけは施しておく。

「素のままでは使えないな。最低でも小宇宙を2倍に倍加する必要があるな」

「肉体の強化が32倍で小宇宙の強化は8倍までか。溜めた力を割り振れないのが弱点だな」

「赤龍帝の篭手の方は専門外だ。ドライグと一緒に確実に鍛えろ。鍛える方面は倍化の力を溜める時間を減らす方向でだ。小宇宙の方はまだまだ伸びるし、肉体の方も小宇宙で強化すれば良い。だが、10秒と言うのは聖闘士の戦いの中では長過ぎる。言ったはずだが最低クラスの青銅ですら音速、つまりはマッハ1程度。白銀でマッハ2~5、黄金では文字通り光の早さが最低基準だ。その中で10秒と言うのは長過ぎる。せめて1秒で1秒の倍化位にしなければ邪魔なだけだ。ちなみに今のイッセーはギリギリマッハ1に届いていないからな」

「そこまでやらないと駄目なのか?」

「ああ、今のままではグレモリー先輩達と互角、戦術面では劣っているから敗北する可能性がある。さらに小宇宙を高めるか、赤龍帝の篭手をもう少し上手く扱わなくては天野を救いきれるか分からんぞ。分かっていると思うが、お前が死にそうになれば私は天野を殺してでもお前を救うぞ。例えお前に恨まれようとも」

「分かってる。ドライグと一緒に鍛えてくる。それが出来たら夕麻ちゃんの元に行っても良いんだな」

「私も共に行くがな」

「恥ずかしいけど、見守っててくれ。それじゃあちょっと鍛えてくる」

そう言ってイッセーは駆け出していった。それを見送ってから私は緊張を解いた。

「イッセー、お前は一体何者なんだ。いや、何に変わってしまったんだ。一度見ただけで廬山昇龍覇を放つなんて」

歴代聖闘士の中で最も多くの技を使える私でも一度で扱える様になる物などは極少数だ。廬山昇龍覇はそれほど難しい技ではないが、それでも一ヶ月も修行していない素人が一度見ただけで扱える様になる技ではない。

「時代がイッセーを必要としているのか?イッセーの本来の守護星座はペガサスにも関わらず、ドラゴンの技を使いこなすのか?」

イッセーの守護星座が二つ見えた理由、それは赤龍帝の篭手に宿っているドライグの物とイッセー本来の守護星座が見えたからだ。だが、それこそありえない。文献には双子座の聖闘士には一つの身体に二つの魂を者が選ばれる事があるが、その両方の守護星座は双子座であった。いや、この例は当てはまらないな。元は同一の者が別れたのだから。まてよ、ハーデスか。確かハーデスは二つの守護星座を持っていたな。自分自身と媒介にしている者の二つを。それと同じ事か。ならば、イッセーの本質はドライグということになるのか?考えても仕方が無い。こうなればイッセーには私の全てを叩き込むしか無い。力のある者は自ずと力が必要となる運命にある。それから生き延び、愛する者を守れる位に鍛える必要がある。

「となると今のままでは色々と不安だな。とは言っても聖衣は神器にされてしまっている以上どうする事も出来ない。待てよ、古い文献に鋼鉄聖衣とか言う物があったな。あまり覚えていないが捜してみるか」

色々と今後の事を考えながら私は再び聖衣の修復に取り掛かる。とはいえ後はマスクだけなのですぐに終わるだろう。















それを感じたのは翌日の昼間だった。

「イッセー、グレモリー先輩達が動いた、いや、動いている」

「なっ!?予想より早すぎるんじゃ」

「あくまで予想だ。準備は良いな」

「早く!!」

小宇宙を一気に高め、天野の近くに空間を無理矢理繋げる。

「アナザー・ディメンション!!」

歪んだ空間に二人で飛び込む。

「それじゃあ、消えなさい」

アナザー・ディメンションの異次元空間から飛び出した先では丁度グレモリー先輩が天野に止めを刺す所だった。グレモリー先輩の腕に真紅の光が、おそらく魔力が集り、撃ち出される。

「させるかーー!!」

『Explosion!!』

予め溜めていた倍化の力を解放したイッセーが弾丸となって天野をグレモリー先輩の魔力弾から救い出す。中々早いな、マッハ3位か?

「兵藤君!?」

グレモリー先輩達が驚いている中、天野はぽかんとした表情でイッセーに抱かれている。

「あ、あんた、なんで助けたのよ。私はあんたを」

「オレは夕麻ちゃんの彼氏だ。助ける理由なんてそれで十分だ」

イッセーはそう言って天野を放してグレモリー先輩達と対峙する。初戦が1対4か。かなり厳しいものになるだろうな。うん?あそこに倒れているのは先日のシスターか。やはりはぐれシスターだったか。傍に近づいてみると生命力を感じない。外傷は無いが、死んでいるのか?周りに浮かんでいるのは魂の欠片か?
私はシスターを抱きかかえて天野の傍まで歩いていく。

「運が良かったな」

「お前は!?」

イッセーの戦いぶりを見ていて私の存在に気付いていなかったようだ。おそらくグレモリー先輩達も私に気が付いていないだろう。

「どうだ、イッセーの奴は。例えお前に殺されそうになったとしてもお前の為に人の身であそこまで強くなったぞ」

「訳が分からないわよ。なんで、私の事が憎くないのよ。騙して、命を奪おうとしたのに」

「私はイッセーではないのでな。その問いには答えてやれない。それより、このシスターに何をした」

「……神器を抜き取って私に移植したわ。その子の神器『聖母の微笑』はかなり特殊な物だったのよ。本来なら癒す事の出来ない悪魔でも癒す事が出来る。それさえあれば、私は、私は」

そこで黙り込んでしまう。何かの葛藤があるようだが、私には関係がない。

「神器を戻せば彼女は蘇るのか?」

「無理よ。神器は魂と繋がっているの。それを無理矢理抜き取った事で魂が砕けたわ。砕けた所に戻した所でそれが元の形に戻る事は無いわ」

「そうか」

やはり先程の物は彼女の魂の欠片だったか。一応集めておいて良かった。
再びイッセーの戦いに目を移す。ボロボロになりながらも既に木場と塔城さんを撃破しており、グレモリー先輩と姫島先輩も追いつめているが、このままではイッセーが負けるだろう。既にイッセーの小宇宙はかなり減少している。廬山昇龍覇も撃てて後1回。だが、一度で二人を倒すのは無理だろう。さて、イッセーはどうすr

「何だと!?あの構えは」

イッセーの構えの軌跡がペガサスを描く。馬鹿な、聖衣もなく見せてもいない技を使うと言うのか。

「ペガサス流星拳!!」

イッセーから高速の拳撃が飛ぶ。その数1秒間に238発。それも両手を使い、グレモリー先輩と姫島先輩を同時に倒す。だが、反動に耐えられずにイッセーの両腕が砕ける。更には

『Burst』

「ガハッ!!」

その音声と共にイッセーの全身から血が噴き出し、力が一気に霧散していく。それを見て座り込んでいた天野がイッセーに駆け寄っていく。膝から崩れ落ち、倒れそうになるイッセーを抱きしめる。そして、おそらく神器であると思われる指輪の力を使いイッセーの治療を始める。もう天野の事は良いだろう。殺すつもりなら態々治療する必要は無いのだからな。邪魔にならない様にグレモリー先輩達を連れて帰るか。一応、メモだけ残しておこう。
シスターを抱えたまま局所的にアナザー・ディメンションの異次元空間を開き、オカルト研の部室まで転移する。それから死なない程度に傷の手当てを行なう。イッセーの方はどうなったかは分からないが、グレモリー先輩達と話を付けるしか無いな。








しばらくすると一番傷の浅かった塔城さんが目を覚まして威嚇してきたが、私はそれを無視してワインを傾ける。私の数少ない楽しみの一つだ。私に敵意が無い事を理解した塔城さんはグレモリー先輩達を起こしにかかる。先輩達が全員起きるとタイミングよく天野とイッセーが部室に転移してくる。

「さて、役者が全員揃った所で交渉と契約、いや取引を始めようか」

「交渉と……取引?」

「双葉?」

グレモリー先輩とイッセーが頭を傾げる。

「ああ、今回の事を出来る限り丸く納める必要があるからな」

「この状況で貴方は何を言うの!!」

グレモリー先輩がテーブルを叩きながら立ち上がる。

「敗者は勝者に従うのは世の定め。それは悪魔でも変わらないでしょう。グレモリー先輩達はイッセーに負けたんだ。聖闘士見習いのイッセーに」

「あれが聖闘士、しかも見習い?」

「そうだ。昨日小宇宙に目覚めたばかりのひよっこだ。最も、グレモリー先輩が外れだと思っていた龍の手が本来の姿である赤龍帝の篭手に目覚めたおかげでもありますけどね」

「「赤龍帝の篭手!?」」

グレモリー先輩と天野まで驚く。

「ふむ、やはり有名な神器だったみたいですね」

「有名どころじゃないわよ。数多くある神器の中でも神自体も殺せるだけの力を持つ神滅具の一つじゃない!!」

「ほう、良かったなイッセー。これでお前の価値が更に上がった」

「狙われる価値がか?」

「いや、そうでもない。狙われるのは無所属だからだ。お前はグレモリー先輩の配下になるんだよ」

「「「はああああああああ!?」」」

「代わりに、天野の身の保証をして貰いましょうか。それだけの価値はあるでしょう?それにイッセーはまだまだ成長します。そう遠くないうちに黄金クラスまで。それでも駄目だと言うのなら、更に上乗せして私がイッセーの使い魔になっても良い。そうなれば間接的ではありますが、グレモリー先輩は最強に近い力を手にする事が出来る」

「……貴方が配下になるって言う選択肢は?」

「私は人の身が好きなのでね。人として生きて人として死にたい。無理矢理にでも転生悪魔にすると言うのなら抵抗させてもらいます。悪魔勢全てを敵に回すとしても」

「ちょっと待て双葉、オレは」

「お前は人間、天野は堕天使。長く生きれてもあと100年、転生すれば10倍以上だ」

「グレモリー先輩、先程は失礼しました。オレに出来る事なら何でもするのでレイナーレを助けて下さい」

私の言葉に土下座をして頼み込み始めた。欲望に忠実なのは変わらないなイッセーは。

「いや、まあ、兵藤君を配下にするのは構わないし、むしろこちらから頼みたい位だけど。レイナーレに関してはこのままの状態って言うわけにはいかないわ。少なくとも私の領地で事件を起こしたのだし」

「だから、その分の贖罪に必要な事もオレがやりますから」

しばらく考え込むグレモリー先輩に私は別の話をする。

「グレモリー先輩、私としてはもう一つ用件があるので天野、レイナーレの事は一旦保留にしてもらっても良いですか」

「もう一つの用件?」

「彼女を蘇らせる事は出来ますか」

部室の隅のソファーに寝かされているシスターに顔を向ける。

「あの時のシスターじゃないか」

「レイナーレが言うには神器を無理矢理抜かれて魂が砕けたと聞いています」

「悪魔に転生すれば蘇れるけど無理ね。理由としては三つあるわ。一つ目は神器が無いっていうこと。二つ目は時間が経ちすぎて魂が既に散らばりすぎているわ。三つ目として彼女自身がそれを望むか分からないわ。悪魔に転生すれば神にお祈りする事も出来なくなるんですから」

「一つ目に関してはレイナーレが元に戻せば良いでしょう。二つ目に関しては私が確保しています。聖闘士にはそういう技もありますから。三つ目に関しては本人に聞いてみましょうか」

「本人に?」

「レイナーレ、神器を」

「……これよ」

素直に神器を渡してくれたのでそれを確保していた魂に混ぜ合わせる。そして小宇宙を高めて、魂を視覚化させる。

『……ここは?』

『昨日ぶりですね』

『貴方は、昨日の』

『ご自分の事はご理解出来ていますか』

そう言うと、シスターの魂は周囲を見渡し自分の身体を見つめて悲しそうな顔を見せる。

『私は、死んじゃったんですね』

『ええ、そこに居るレイナーレによって』

『……そうですか』

私とシスター以外はあまりの出来事に何も言えないままで居る。

『そんな貴方ですが、選択肢が二つあります。一つ、このまま死ぬ。一つ、悪魔に転生して蘇る。このまま現世に留めておくのは出来ません。出来ればすぐにでも結論を出していただきたい』

『悪魔に転生ですか。その悪魔の主の方は』

『そちらの紅い髪の女性です』

シスターがグレモリー先輩に向かい合う。

『あの、こんな状態ですけど、お願いを聞いてもらえますか?』

「え、ええ、神代君が対価を払ってくれるから大丈夫よ」

『私の神器をレイナーレ様に譲渡した上でレイナーレ様を悪魔にしてあげて欲しいんです』

「アーシア!?あんた何を言ってるの」

『神器が抜かれて魂がバラバラになった後も、何となくですけど意識だけは残っていたんです。レイナーレ様の望みも、そちらの方との事も見せて貰いました。その上でお願いしているんです。それに主に背く事も私には出来そうにありません』

『それが貴方の望みなのですね』

『はい。態々このような機会を作っていただいてありがとうございます』

『本当にそれで良いんですね?今ならまだ引き返せますよ』

『良いんです』

シスターの決意は固いようで、私には覆そうに無い。ならばせめてあの世までの水先案内人を務めよう。

「グレモリー先輩、レイナーレを悪魔にする事に問題はありますか?」

「いいえ、本人の心情くらいよ。レイナーレ、どうする?正直言ってこれ以上無い条件だけど。貴方が私の配下になると言うのなら上への報告を多少改竄すれば問題は無くなるわ」

「……少しだけアーシアとイッセーだけにして」

その言葉に頷き、私達は廊下に出る。

「レイナーレの話が終わり次第、私は席を少し外させてもらいます」

「何処に行くつもり?」

「彼女が迷わぬように、悪魔に攫われぬ様に確実に冥界に連れて行ってきます」

「冥界に?いえ、おそらく私の知っている物と違う冥界なのでしょうね」

「ええ。死者か冥闘士か、エイトセンシズに目覚めた者しか入ることの出来ない死の世界です」

「また聞き慣れない単語が出てきたけど今は良いわ。貴方が彼女を連れて行っている間に兵藤君とレイナーレを悪魔に転生させておくわ。貴方が帰ってきたら、そうね、兵藤君の使い魔となってもらうわ。安心して、マーカーを付けて識別出来る様になるだけだから」

「分かりました。詳しい話は後日でも構わないでしょうか?レイナーレの戸籍を用意したり、細かい事がありますので」

「それでいいわ。よろしくね」

「ええ、こちらこそ」

しばらくの間グレモリー先輩達と雑談をして時間を潰しているとイッセーがドアを開けて顔を見せた。

「神器の移植が終わった。1回抜いた事があるせいかアーシアの魂も綺麗なままで残ってる」

「そうか。では、私は彼女を送ってくる」

私はパンドラボックスを呼び出し、修復が完了した双子座聖衣を取り出す。オブジェ形態のそれがバラバラになり、私の身体に装着される。

「これが、黄金聖衣。なんて神々しいの」

「聖衣自体が小宇宙を宿してる。それも強大な」

軽く身体を動かして不備が無い事を確認してからアーシアの魂に向き合う。

『では、私があの世までお送りいたします』

『よろしくお願いします』

右手の指先に紫色に光る小宇宙を集め、アーシアに向かって振り下ろす。

「積尸気冥界波!!」

その光と共に私はアーシアの魂を黄泉比良坂に連れて行く。

『ここは?』

『ここは黄泉比良坂、あの世とこの世の境に位置する異界です。死した魂は全て此所から冥界へと送られ、冥界の者達によって死後の事を仕分けられます』

『想像していたのとは大分違いますね』

『想像している様な天国は確かに存在しています。ですが、そこまで辿り着ける者はほとんど居ません。そこは奴に取っての場所ですから』

『奴?』

『冥府の王、ハーデス。奴の本体が眠る為だけの楽園、エリュシオン』

転生してから黄泉比良坂に来た事が無かったので気付かなかったが、懐かしい小宇宙を感じる。後ろを振り返ると、そこには私と共に戦った戦友達と、歴代の聖闘士、更には私達の後を戦ってきた聖闘士が終結していた。

『双葉よ』

『教皇様』

聖闘士の集団の中から私の時代の教皇様が姿を現す。私は膝を付き、頭を垂れる。

『双葉よ、今でもアテナの事を恨んでおるか』

『……はい。アテナは言いました。私達の様な力を持つ様な者達は不要だと。ですが、実際はどうですか。滅んだはずの世界は再誕し、神々もまた争いを繰り返し、聖闘士は生まれ、そして滅んでいく。アテナは同じ選択を繰り返し、今度は完全に別の存在となってしまった。そんな時代に産まれてしまった私は、何を相手にこの力を振るえば良いと言うのですか。地上の愛と平和を極端に乱す存在は居らず、むしろ私が一番危険な存在だというのに』

『……』

『悩んでいた幼き頃にイッセーに出会わなければ今の私はこの力を何に使っていたか分からない。イッセーは言いました。自分勝手にすれば良いと。だからこそ、私は好きな様に生きてきました。その時まではアテナの事を恨みはしませんでした。ですが、双子座聖衣の小宇宙を読み取り、アテナがまた皆を騙しながら全てを滅ぼしたと知り、恨みました。恨んでも、辞めたと思っていましたが私は根っからの黄金聖闘士です。地上の愛と平和を乱すアテナが現れると言うのなら、私はアテナを滅ぼします』

『そうか。お前がそう決めたのならそうすれば良い。今の時代に小宇宙を操れるのはお前とお前の弟子のみだ。そしてお前が聖闘士としての使命を忘れずにいると言うのなら戦え。お前が地上の愛と平和を乱すと判断した者を。我らはそれを支持する。お前が必要だと思うのなら聖衣を集め、与えるのだ。そして聖闘士を再結集するのだ。今このときより、お前は教皇となるのだ』

『謹んでお受けいたします』

『うむ、そちらのお嬢さんは我らが連れて行こう。安心すると良い、力づくでも天国へと送ろう』

『ありがとうございます。ですが、私が見る限りではそのような事がなくとも自ら天国へと辿り着けるでしょう』

『ふむ、そうか』

『では、アーシアの事をよろしくお願いします』

『任せておけ』

『アーシア、後の事はこの人たちに任せておけば良い』

『あの、ここまで色々とありがとうございます』

『イッセーの悩みを晴らしてくれたお礼をしているだけです。あの後、イッセーは一皮も二皮も抜けてレイナーレを、愛する人を救う事が出来たのですから』

『それでも私はあなたに感謝しているのです』

『なら、その礼を受け取りましょう。そろそろお別れです』

『お世話になりました。貴方に神の祝福を』

『生憎、この身は神殺しに特化していましてね。神の祝福は受けられないでしょう』

『なら、私からの祝福を』

『ありがとうございます。では』

最後に一度だけアーシアに頭を下げ、黄泉比良坂から部室へと戻る。そこでは既に背中から悪魔の羽を生やしているイッセーとレイナーレが居た。

「無事に転生出来たようだな」

「ああ、オレが兵士を8つ、レイナーレが僧侶1つでな。アーシアは?」

「無事に逝った。心配する必要は無い」

「そうか。結局ちゃんとしたお礼が出来なかったな」

「私が出来る限りの事はしておいた。細かい所は私とグレモリー先輩で詰めておく。今日の所はもう帰って、ああ、両親への説明があったな。仕方ない、今日の所は私の部屋を貸してやる。レイナーレと共に休んでいろ」

自宅の鍵を取り出してイッセーに投げ渡す。

「あっちのマンションの方だよな?」

「そうだ。私は他にもやる事があるから明日の昼頃にそちらに戻る。好きに使ってくれて構わない」

「サンキュー」

「レイナーレ、ある程度の制約は受けてもらうぞ。面倒だが世間体と言う物はあるし、人間界に居る以上人間の中で暮らさなければならない。それだけは理解していろ」

「分かってるわ。だけど、理不尽な事には反発するわよ」

「それで良い。ではグレモリー先輩、申し訳ないですがもう少しだけお時間頂けますか」

「ええ、私の方でも上への報告を作ったりする必要があるから」

「それじゃあ、とっとと片付けてしまいましょうか」

イッセーとレイナーレが部室を去ってからグレモリー先輩と細かい部分を詰めていく。レイナーレに関しては勝手に動いていた部下を粛正する為に動き、消滅しかけていたのをグレモリー先輩が配下になる事を条件に転生させた事にした。イッセーに関してはレイナーレの協力者にしておき、私も同じだ。他の勢力の者を勝手に入れても良いのかと聞いてみたが、個人の判断で可能らしい。まあ、昔の仲間に会った時に気まずいと言うか目の敵にされるみたいですけどね。そこはイッセーに頑張って守ってもらいましょう。先輩達の負傷は堕天使のせいにして向こう側の生存者ははぐれ神父が一人だそうです。普通の人間とは思えない程の反応速度らしいが今のイッセーには勝てないだろう。グレモリー先輩達に負けている時点でイッセーに勝てる訳が無い。いや、不意打ちとか人質、悪魔質?まあそういう汚い手を使われない限りは負ける事は無いだろう。
私?私の場合射程内に敵意が存在した時点で吹き飛ばせる。大体の事が話終わった頃にはそろそろ日が明けようとする頃だった。

「ではまた後日。あっ、残っているワインは差し上げますよ。今回の件の迷惑料だとでも思って下さい。そこらの名酒と比べ物にならない位の上物ですから」

私の従者や慕ってくれていた者達が小宇宙を込めて育てた葡萄から作られたワイン。質を上げる為に出来るだけ樹木1本毎の個数を減らした為に数は少ないが、それに見合うだけの物になっている。そこそこの量は残っていますが、販売する様な量はありません。また作るにしても今度は私一人で土作りから始める必要がありますから新しい物を作るにしても最低でも5、6年はかかりますね。早めに作り直しますか。

「それでは私は他にもやることがあるので、アナザー・ディメンション!!」

聖域まで再び転移して教皇の間に向かう。教皇の間に存在する書物を漁り鋼鉄聖衣に関しての記述がある物を探し出す。材料はオリハルコンにガマニオンとミスリルとスターダストサンド、そして聖衣の欠片か。聖衣の種類と欠片の大きさである程度の精度を変えれるのか。現在のイッセーの小宇宙の大きさは青銅のトップクラスか、ギリギリ白銀と言った所だ。いや、赤龍帝の篭手を使えば白銀クラスだ。となればそこそこの量の黄金聖衣を混ぜても大丈夫だろう。黄金聖衣の自己修復能力の許容範囲内で色々と研究するしかないか。

「やれやれ、なんとか本物の聖衣を、出来ればペガサスかドラゴンが手に入るのが一番なんだがな」

無い物ねだりをするのを諦め、鋼鉄聖衣を作る為の材料を集める事にする。


 
 

 
後書き
うん、やっちゃったんだ。
出来心なんです、アーシアファンのみなさん許して下さい。
レイナーレをイッセーのメインヒロインにする為に必要だったんです。
鋼鉄聖衣に関しては結構適当です。とりあえず、修理に使うオリハルコンとガマニオンとスターダストサンドは絶対として、そこに伝説上でごろごろ出てくるミスリルを混ぜて、聖衣の機能を持たせる為に一部でもあれば何とかなるだろうと思ってます。
......やっぱり無理かな? 
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