ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍
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第4話
聖域の双児宮にて、イッセーは大岩を背負いながらスクワットを行なっている。
「……998……999……1000」
「よし、もう降ろしていいぞ。少し休憩した後に瞑想だ」
背負っていた大岩を降ろしながらイッセーが地面に転がる。
「はぁ、はぁ、はぁ、ごほっ、はぁ、はぁ」
「呼吸が乱れているぞ。どんな時でも呼吸を乱すな。呼吸を整えればどんな時でも全力を発揮出来るし、疲労も抑えられる」
イッセーが倒れている隣で、私は黄金聖衣に血を掛けながらガマニオンとスターダストサンドを用いて聖衣を修理している。それにしても聖域が残っていた助かった。さすがに血だけでは完全修復は出来なかったからな。他にもアテナの神具は既に小宇宙が残っていなかったけど、再び小宇宙を込めればある程度は使えるはずだ。
「双葉」
やっと呼吸が整ったイッセーが呼びかけてきた。
「どうした」
「こんなので、本当に間に合うのか?確かに強くなってるのは分かる。だけど、それは人間での範囲内だ。昨日見せてくれたグレモリー先輩達とはぐれ悪魔の戦いを見てると、自信が無くなる」
「そうだな。確かに今のイッセーではまだあのはぐれにすら勝てないだろう。だが、お前は筋が良い。普通は何年もかけて習得するはずの小宇宙を欠片とは言え扱えているのだから」
驚いた事だが、イッセーは修行を初めて2日目には小宇宙に目覚めていた。数回の莫大な小宇宙に触れる機会があったおかげなのかも知れないが、小宇宙を既に扱えている。あとはこれを鍛え上げるだけだ。
「感じるんだイッセー、己の中にある宇宙を。そして一体化するんだ。そのとき初めてお前は人を越える力を持つ事になる」
「双葉が言うことは分かるんだ。双葉が神器を出した時に、双葉が言う小宇宙を確かに見えたんだ。だけど、オレの中にあるはずのそれが見つからないんだ」
「焦るなイッセー。そもそも修行は何年もかけて行なう事なんだ。それを一月も立っていない状況でここまで扱えている時点でお前は天性がある。少し思い詰め過ぎだ。今日は休みにして気分転換に行こう」
「いや、そんな事をしている暇は」
「師である私が必要だと判断しているのだ。黙って付き合え」
「……分かった。着替えてくる」
自室に戻るイッセーの姿を見て溜息をつく。
「ここまでの才が潰れるのは見たくない。だが、時間が無いのも確かか」
アナザー・ディメンションを応用した技で天野の様子を見張っているが、数日中に何か事を起こすのだろう。部下がひっきりなしに動いている。最悪、中途半端なままでイッセーは立ち向かわなければならなくなるのか。
いつもの商店街を私とイッセーは歩いている。何時も寄っているゲーセンや本屋などに入るが、イッセーは何処か上の空のままだ。ふらふらと歩いているから誰かとぶつかりそうにって、ぶつかったか。
「すいません、大丈夫ですか」
ぶつかったのは小柄なシスターで、どうやら日本語が通じていないようだ。
『連れが失礼をしました。手を』
『あ、ありがとうございます』
私が英語で謝罪するとそれにシスターが答えてくれた。
『申し訳ない。私の連れは少し悩み事がありまして、気分転換に街を歩いていたのですが気分は晴れなかったようで』
『そうですか、あの、懺悔をなさいますか?』
『いえ、自らの過ちにではなく、今の自分の無力さを嘆いているのです』
『それでも、誰かに話す事で救われると言うのなら』
『聞いてみます』
「双葉、彼女はなんて言ってるんだ?」
「とりあえず謝罪は済ませて、逆にイッセーの事を心配された。悩みがあるのなら話を聞く。無関係だからこそ、気軽に話せるのでは?ってな」
「こんなこにまで心配されてるのかよ」
イッセーが落ち込むが仕方ない。商店街のおばちゃんたちも心配そうにしてたからな。
「それでどうする?」
「そんな事言っても彼女、日本語がわからないんだろう」
「だからこそ気軽に話せる。独り言だと思えば良いんだよ。少しはすっきりする」
「……そうだな。頼めるか?」
「分かった」
『連れの方の了解も取りました。どうか連れの事をお願いします。ここではなんですから一緒に食事でもいかがですか。連れの、親友のこともありますし奢らせてもらいます』
『いえ、そこまでされなくても』
『いえいえ、私に出来なかったことをして貰うのですから、是非ともお礼をさせて下さい。心苦しいのであればまた別の機会にでも相談に乗ってもらえれば構いませんので』
『ですが、いえ、ではお言葉に甘えて』
そのままシスターとイッセーを連れてマックに向かう。イッセーにシスターと共に席を取りに行ってもらい、そのまま懺悔をするようにだけ伝えておく。その際、周囲に聞かれるのも嫌だろうから遮音結界の効果を持つ石に小宇宙を込めてイッセーに持たせておく。私は適当に三人分のバーガーセットを頼み、少し時間をおいてからイッセー達の元に向かう。
「少しは落ち着いたようだなイッセー」
「双葉、ああ、話してみれば結構すっきりした。もう大丈夫だ」
テーブルに三人分のバーガーセットを置いて席に座る。イッセーは早速包みを開いて食べ始める。私は先にシスターにお礼を言うことにする。
『今回はありがとうございます。親友も話せてすっきり出来たようです』
『そうですか、少しでも力になれて良かったです』
『こいつが誰かを本気で好きになるのは初めてなのですが、色々と複雑な事情がありましてね』
『そうでしたか』
『失礼、私まで愚痴を言ってしまって』
『いえ、構いません。それにしても英語がお上手なんですね』
『仕事柄世界中の言語を話せます』
『仕事柄ですか?ですが、制服を着ていると言う事は学生なのでは?』
『知り合いの神話学者の手伝いをしていましてね。古代語の翻訳には色々と知識が必要になってくるので』
『そうなんですか』
『まあ半分は趣味ですから苦にはなりません。さて、冷めないうちにどうぞ』
『ありがとうございます』
シスターが神への感謝を行なっているのを見ながら私も自分の分のバーガーを食べ始める。シスターは初めてだったのか私達を見ながらゆっくりとバーガーを口にしていく。しかしなんでこの街にシスターが居るんだ?教会はとっくに潰れているし、新しく出来たとも聞いていない。偶々やってきていたのか?待てよ、まさか堕天使側のはぐれシスターか?それにしては絵に描いた様なシスターだしな。とりあえずは保留にしておこう。害は無いのだから。
食事を終え、店の前でシスターと別れて人目につかない場所から聖域に戻る。イッセーには休みを言い渡してあるので私は自室に籠って聖衣の修理を再開する。しばらく修理を続けているとイッセーの小宇宙が2倍に膨れ上がったのを感じる。おそらく神器が起動したのだろう。肉体だけでなく小宇宙まで2倍になるとは思ってもいなかったが、儲け物だろう。そのまま確認には向かわずに修理を再開しようとしたところでイッセーの小宇宙が更に大きくなるのを感じる。今朝のイッセーから実に320倍の小宇宙を。私は急いでイッセーの元に向かう。
「イッセー」
そこには双児宮の床に大きなクレーターを作ったイッセーが立っていた。
「双葉、オレ、掴めたぜ。自分の小宇宙を、それに神器も覚醒した」
「あ、ああ。よくやったイッセー。お前は本当によくやった」
今のイッセーから感じられる小宇宙は今朝のイッセーの80倍。青銅クラスの中では中間位の大きさだ。そして、イッセーの神器の真の力はおそらく
「神器に宿っているドライグが教えてくれる。こいつの本当の名前は赤龍帝の篭手、10秒毎に倍化の力を溜めることのできる神滅具の一つだ」
やはりか。先程感じた320倍の力は20秒間力を溜めて4倍に強化した物だったか。
「双葉、これなら夕麻ちゃんを助けれるよな」
「ああ、だが、もう少しだけ修行をする必要がある。イッセーの身体が赤龍帝の篭手の倍化に耐えれるか試すのと、聖闘士の技を覚える必要がな。天野達堕天使勢以外にもグレモリー先輩達悪魔勢が居るんだからな」
「そ、そうか、そうだよな。いざとなったらグレモリー先輩達とも戦わないといけないんだよな」
「怖じ気づいたか」
「いや、今朝までならともかく今ならなんとか出来る。そう思えば気が楽になるさ。本当にあのシスターさんには感謝してもし足りない位だ」
「そうだな。今度会えたらちゃんと礼をしよう」
おそらくだが、そう遠くないうちに出会うだろう。
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