八条学園怪異譚
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第二十三話 犬と猫その六
「だから今も起きてるかもね」
「夜ねえ」
「ジャガーとかね。夜行性の生き物もいるよ」
「妖怪もなの」
「そう、妖怪も」
その話もする。
「夜行性の妖怪多いよね」
「そう言ったら妖怪と動物って一緒?」
「かもね。まあ大した違いはないよ」
猫又は右の前足を前後に動かしながら話す。
「ただ妖術があるかどうかの違いだね」
「それだけ?」
「おいらだって猫だよ」
猫又は自分のことも話す。
「猫が五十年生きただけだよ」
「猫で五十年自体があまりないと思うけど」
愛実はこのことに突っ込みを入れた。
「二十年生きたら凄いでしょ」
「五十年生きる自体が妖怪だっていうんだよな」
「ええ、そう思うけれど」
愛実は自分の足元を今も後ろ足だけで人間の様に歩く猫又を見て言う。その二本の尻尾は左右に揺れている。
「そもそもね」
「まあ兄弟も皆二十で死んだしね」
「というかご兄弟いたの」
「いたよ、おいら入れて六匹な」
猫又は愛実達に顔を向けて話す。
「皆でずっと生きようって誓い合ったんだがな」
「そのご兄弟は皆なの」
「ああ、二十になったら死んだよ」
「二十年生きたのね、皆」
「老衰でな。皆死んだよ」
猫又は微妙な感じの顔になっていた。
「大往生だったよ、皆」
「まあ猫で二十年っていったらね」
「ああ、普通は凄いだろ」
「だから普通に長生きでしょ」
「兄弟皆その歳で死んだんだよ」
「基本的にあんたのご兄弟長生きなのね」
猫としてはだというのだ。そもそも病気にもならず怪我にも遭っていない、そのこともかなりのものと言えた。
それで愛実は猫又にこうも言った。
「で、特にあんたがなの」
「二十年三十年生きてな」
そしてさらにだった。
「五十年生きた時に尻尾がね」
「二本になったのね」
「ああ、この通りな」
ここで振り返り自分のその尻尾達を見る。
「妖怪になったんだよ」
「徐々になっていったのかしら」
「尻尾は五十の誕生日の時に急に生えたけれどな」
それでもだというのだ。
「まあ徐々に妖怪になっていったんだろうな」
「やっぱりそうなのね」
「そうだよ、妖怪は急になるものじゃないんだよ」
ではどうしてなるかというと。
「徐々になっていくものなんだよ」
「成程、そうなのね」
「そうだよ、それは送り犬の旦那もだよ」
猫又はここでこの名前を出した。
「あの旦那もな」
「送り犬っていうと」
「そろそろ出て来ると思うぜ」
聖花がその名前に反応したところですぐに言う。
「旦那もな」
「確か人の後ろについてくる妖怪ね」
聖花はその送り犬について言った。
「そうよね」
「知ってるんだな、お嬢ちゃんは」
「名前だけは」
「元々は山にいてそれで人の後ろについてくる妖怪なんだよ」
それが送り犬だというのだ。
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