八条学園怪異譚
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第二十三話 犬と猫その五
猫又は普通に後ろ足で立ってこうも言ってきた。
「ここに来た理由もあれだよね」
「ええ、泉ね」
「それを探しに来たけれど」
「泉ねえ。中々見付からないみたいだね」
猫又もその辺りは察している感じだった。
「そのうち見付かると思うけれどね」
「そのうちっていうけれどね」
「ちょっと焦りも感じてきてるけれど」
「焦る必要はないよ」
猫又は笑って二人に言う、二本足で立ち尻尾も二本だとそれはもう立派な妖怪以外の何者でもなかった。
その猫又がこう言うのだ。
「絶対にあるんならね」
「そのうち見付かる」
「そういうことね」
「そうだよ、虱潰しにいけばね」
「それはそうだけれどね」
「その通りにしてもい」
だがそれでもだという感じの二人だった、それでだった。
動物園の入り口からその中を見ていうのだった。
「で、この中にもね」
「今から入るけれど」
「だよね、じゃあ中入るんだ」
「ええ、何処に泉があるか」
「考えてるけれど」
「とはいってもここの動物園って広いよ」
猫又はこの事実をあっさりとした感じで言った。
「本当にね」
「そうよね、ここって大阪の天王寺動物園位あるのよね」
「上野動物園だった?」
「いや、大きさだと白浜のサファリパーク位だから」
広さの規模が違っていた。
「学園の関係者だけでなく一般の人も来るしね」
「そこまで広いのね」
「サファリパークって」
「だから下手に夜に入ると道に迷うよ」
あまりもの広さ故にそうなるというのだ。
「おいらここにずっと住んでるから中には詳しいよ」
「じゃあ案内してくれることか?」
「そうしてくれるの?」
「あんた達さえよかったらね」
猫又は二人に笑顔で語る。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね」
「そうね」
二人は猫又の話を受けてお互いに顔を見合わせた、そしてだった。
すぐに頷き合いそのうえでこう決めた。
「猫又さんのお誘い受けてね」
「それでね」
「そうだね、それじゃあね」
猫又も笑顔で応じる、こうしてだった。
二人は猫の妖怪の案内を受けて動物園の中に入った、するとだった。
夜の動物園の中はひっそりとしていた。檻やそれぞれの動物のコーナーの中では至って静かだった。しかも。
檻の中にはどの動物もいなかった、それを見て。
愛実はすぐに納得した顔になってこう言った。
「皆中に入ってるのね」
「そうだよ」
猫又もその通りだと答える。
「それで休んでるから」
「檻の中にも誰もいないし」
「檻はあくまでお昼に出るだけだよ」
「そうなの」
「そう、お昼はね」
「それで夜はなの」
「この動物園じゃそうなんだ。まあ爬虫類のコーナーは違うけれど」
それはどうかというと。
「ケースの中で暗くしてね」
「それで寝てるのね」
「そうなんだ、両生類とか水族館でもだよ」
「そっちでもなの」
「そう、ただね」
「ただ?」
「夜行性の生き物もいるからね」
猫又はこうした生き物のことも話した。
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