久遠の神話
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第四十話 同盟結成その六
「あれもまた」
「確かに狂気以外の何者でもない思想であり行動でしたが」
「純粋だったんですか」
「紛れもなくです」
そうだったとだ。大石はそのポルポト派のことを上城に語った。
そしてだ。こうも言ったのである。
「純粋に。共産主義を実行に移そうとするあまり」
「あれだけのことをしたんですか」
「はい」
大石は強張った顔で上城の言葉に頷いた。ポルポトは八百万のカンボジアの人口のうち三百万を殺したと言われている。これがとんでもない数字であり割合であることは言うまでもない。
「その通りです」
「純粋な世界はそうしたことも起こるんですか」
「そして寛容な世界はです」
大石は続いてその世界のことも話してきた。
「よくありますが清濁併せ呑むです」
「清濁ですか」
「ではわかりますね」
「汚職とか腐敗ですか」
「それに浸ってしまう場合もあります」
「そうしたことも起こり得るんですね」
「そしてその果てにです」
どうなるかというのだ。その結果。
「腐敗しきってどうしようもなくなります」
「両方共欠点があるんですね」
「お互いにそれを批判し合います」
「そして剣士の人達がそれぞれの世界を目指すなら」
「衝突が起こります」
それぞれを目指す剣士達がどちらも善人であってもだというのだ。
「善人だからといってもです」
「戦いは起こるんですか」
「そういうことです。おわかりになられたでしょうか」
「ちょっと。それは」
「今すぐおわかりになられなくてもいいです」
今はだとだ。大石はこうも述べた。
「ですが考えられていて下さい」
「そうしてですね」
「はい、考えられて下さい」
大石は運転して前を見ながら述べていく。
「そうすればおわかりになられますから」
「そうしてですか」
「考え。そうして」
「そのうえで」
「人は結論に向かうものです」
大石はどちらかというと教師の口調で上城に話した。
「ですからよく考えて下さい」
「わかりました。それなら」
「それでお願いします。ではです」
大石はここでこうも言った。
「お二人からの返事を待ちましょう」
「そうですね。待てばいいですね」
「今私達ができることは」
それが何かもだ。大石は上城に教えた。
「生きることです」
「生きることがですか」
「剣士は戦い。そして」
「生き残るものですね」
「何時戦いがあるかわかりません」
これが剣士だった。本当に何時戦いが起こるかわからない。
しかもだ。ただ戦うだけではないのだった。
「戦いを止める為にはです」
「戦いから生き残ることですね」
「それが大事ですから」
それ故にだというのだ。
「お願いしますね。最後まで生き残って下さい」
「この戦いの最後まで」
「そうして下さい。では」
「はい、それでは」
こうした話をしながらだ。二人は今は帰った。それから暫くは怪物との戦いはあったが剣士との戦いは二人共なかった。そうして。
大石が上城に連絡をしてきた。携帯からこう言ってきたのだ。
「今工藤さんから連絡がありました」
「工藤さんと高橋さんからですね」
「はい、メールで」
それが来たというのだ。
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