久遠の神話
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第四十話 同盟結成その五
「服は脱げば終わりですが本質はそうではありませんね」
「性格はですね」
「服を縫いでも残ります。ですから」
「大事なのはそれなんですか」
「はい、性格です」
また言う大石だった。
「それになります」
「何か。人を見るのは」
「難しいですね」
「そうですね。凄く難しいんですね」
「剣士もですよ。僕達もまた人ですから」
それ故にだというのだ。
「難しいですよ。人それぞれですから」
「だからですか」
「善人だけではないです。それに」
「それに?」
「善人であってもです。その目的が違えば」
その場合はどうなるかもだ。大石は話した。
「衝突します」
「そういえば」
「心当たりがありますね」
「はい」6
その通りだとだ。上城は少し俯いて大石に答えた。
「実は剣士の人にもいまして」
「そうなのですか」
「はい、そうなんです」
中田のことを思い浮かべながらだ。上城は大石に答えた。
「実は」
「そうですね。実際にそうした人とのことを考えますと」
「善人であろうともですね。その人が」
「目的が違えば。それによって」
「純粋な世界を築こうとします」
大石は例えてきた。上城に対して。
「しかしです」
「それでもですね」
「そうです。純粋な世界ではなく寛容な世界を築こうとする善人なら」
「純粋と寛容は違うんですか?」
「時として」
そうだとだ。大石は語った。
「そうなります」
「どっちもいい意味の言葉だと思いますが」
「しかしです。純粋は完璧を求め時として他者を排除します」
「そうなるんですか」
「キリスト教でもそうです」
キリスト教の過去のその歴史を思い出してだ。彼は述べた。その顔は辛い感じのものになっていた。その顔上城に言うのである。
「カトリック、純粋のその教義を求めるあまり」
「異端審問ですか?」
「そして宗教戦争です。どれもその裏には政治もありましたが」
要因は一つではないというのだ。複数あるというのだ。
「純粋を求めてです」
「ああしたことになったんですか」
「そうです。純粋さを利用されたかも知れませんが」
政治にだ。それがだというのだ。
「しかしです。純粋を追い求めればです」
「そうした惨劇になるんですね」
「あくまで時にはですが」
「そうなんですか」
「もっと近くの時代で言えば革命です」
「ええと。共産主義革命ですか」
「カンボジアのポルポト派は御存知でしょうか」
「聞いたことがあります。極端な共産主義者ですよね」
それもかなりのだ。共産主義の持っているエッセンスを極限まで純粋培養させた、それがポルポト派だったのである。
「学校も宗教も。文化も何もかもを破壊したんですよね」
「産業もです」
「農業だけですか」
「はい、国家のあらゆるものを破壊しました」
「それは聞いたことがありますけれど」
「あれが最も極端な例ですが」
「純粋な世界ですか」
大石の言葉を受けてだ。上城は彼の運転する助手席で難しい、そして暗い顔になった。そのうえでの言葉だった。
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