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久遠の神話

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第三十九話 君子の絆その六

「例えばです。首相経験者がです」
「?まさか」
「そうした人達が」
「はい、自国民を拉致する人間の組織にお金を渡しているとなると」
 このことだった。今言われることは。
「それはどうなりますか」
「恐ろしいことですね」
「何ていいますか」
 この若し事実であれば恐ろしい話を聞いてだ。上城も樹里も呆然となった。
 それでだ。二人共目を丸くさせて大石に問うたのである。
「そうした人が首相だったって」
「とんでもないことですよね」
「現実であればですね」
 前置きをしたうえでだ。大石はまた言った。
「こうした腐敗が日本にはあります」
「ただ。何かを貪るだけじゃなくて」
「つながりもなんですか」
「それも腐敗のうちです。腐敗はおぞましいものです」
「そうですね、本当に」
「とんでもない話ですね」
「どの様な社会にもこうした腐敗があり」
 大石はこの話に戻してきた。上城と樹里に腐敗についてある程度話してから。
「そこに色々な人がいます」
「だからですか。どんなお仕事に就いていてもですか」
「それだけで人はわからないんですね」
「その通りです。神父もまた然りです」
 大石はここでは淡々と述べた。
「このことは御承知下さい」
「わかりました。そういうことですね」
「人が大事なんですね」
「その通りです。ではです」
 大石は二人に微笑んだ。そしてだった。
 彼は上城にだ。あらためてこう言ったのである。
「ではです」
「それではですね」
「今から」
「はい、そのお二人のところに向かいましょう」
 工藤と高橋のところにだというのだ。
「そうしましょう」
「じゃあ案内しますね」
 上城が大石に申し出た。
「今から」
「そうして頂けますか」
「はい、お二人は兵庫の自衛隊の地方連絡部にいます」
「地連ですね」
「はい、そこです」
 神戸市にあるそこだというのだ。
「そこにおられます」
「そうですか。自衛隊のですね」
「工藤さんが自衛官、海上自衛隊の方なので」
「ああ、海となると」
「?何か」
「制服は黒ですね」
 制服の色の話にもなった。
「そうですね」
「あっ、それと金色です」
「では幹部の方ですか」
 このこともだ。大石は上城の話を聞いて言ってきた。
「袖のところに金の輪、モールがありますね」
「二本太いものがあります」
「では一尉ですね」
「階級もおわかりですか」
「自衛隊については興味がありますので」
 だからだ。わかるというのだ。
「やはりそうなのですか」
「はい、確かに工藤さんは」
「幹部自衛官の方ですね」
「そう仰ってました」
「成程。普通の軍では将校と呼ばれる方ですね」
 自衛隊は殆ど誰もそうとは思っていないがだ。それでもなのだ。
 国内外を含めて軍隊と見なされている。しかし表向きはそうではないので将校ではなく幹部と呼ばれているのだ。ここが自衛隊の置かれている立場の複雑なところだ。
 その将校になるとだ。大石は上城達に話したのである。 
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