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久遠の神話

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第三十九話 君子の絆その七

「そうした方ですか」
「はい、それで高橋さんも」
「警察官の方ですね」
「警部さんです」
「警部さんですか」
「まだお若いですが」
 それでもだ。階級はそうなっているというのだ。
「そうらしいです」
「おそらく。お二人は」
「工藤さんと高橋さんは?」
「日本政府から剣士として剣士の戦いを止める様に命令を受けていますね」
 大石は二人のそれぞれの組織での階級を聞いて言ったのだった。
「お二人共まだ二十代ですよね」
「はい、そうです」
「二十代でその階級ですと」
 一尉、そして警部だというのだ。
「特例の可能性が高いです。そして特例を受けるということは」
「剣士としてですか」
「そうです。剣士であることを政府に認められて」
「そのうえで、なんですか」
「はい、それで政府も戦いのことをある程度は知って」
 大石は二人に話していく。工藤と高橋が戦いを止める為に戦うというその事情についてだ。推察をしてそのうえで話していくのだった。
「そうしてです。彼等にです」
「戦いを止める様に作戦を出しているんですか」
「そうです。そうしています」
「政府が関わっているんですか」
「私はそう思います」
「あの、政府が関わっているとなると」
 上城は目をしばたかせながらそのうえで大石にこう述べた。
「世界の盟主になるとか。日本が」
「二人が勝ち残りそのうえで、ですね」
「そう願わせればいいんじゃないですか?」
 首を捻りながらだ。彼はこの考えを述べたのである。
「けれどそうしないんですか?」
「日本政府、それに日本人は野心ということに関しては実に稀薄です」
 大石はいぶかしむ上城、そして彼の隣にいる樹里にこのことを指摘して話した。
「アメリカや中国とはそこが違います」
「ううん。何か」
「違うと思われますか。そこは」
「はい、よくそうした漫画とかありますよね」
「漫画は漫画ですから」
「実際は。そういえば」 
 上城もここで考える顔になって述べたのだった。テレビやそうしたものからの知識でだ。
「あれですよね。日本人も政府も」
「無欲ですね。少なくとも世界の盟主だのになろうという野心は」
「はい、ありません」
「だからですか。むしろそんな戦いは」
「困るのです。ましてや良からぬ者が剣士なら」
 このことは既にあった。加藤の様に戦うことだけを求める剣士が勝ち残ればどうなるか。それは永遠に戦い続ける世界になるのだ。
 若しくは残る四人がよからぬ意図を持っているのならばだとだ。こう言うのだ。
「日本政府にとってはとんでもないことです」
「世界を滅ぼすとか考える人が剣士なら」
「はい、絶対に止めたいことですので」
「お二人にですね」
「はい、戦いを止めることを指示しているのでしょう」
「政府が関わっているんですか」
「この場合はよい関与ですね」
 日本人の無欲な国民性と彼等が構成する政府の野心のなさがだ、幸いしているというのだ。
「幸いにして」
「そうですね。戦いなんてものは」
「何も生み出しません」
 大石はこのことは淡々とした口調で述べた。
「本当に何もです」
「そうですね。政府もいいことはするんですね」
「します。そういう時もあります」
「それじゃあ僕達は工藤さんと高橋さんにも」
「安心して協力できますね」
「そうですね。政府が後押しをしてくれるのなら」
 それならばだとだ。大石も微笑んで言う。 
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