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万華鏡

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第二十話 蚊帳その八

「畳のお部屋がなくなってるせいね」
「洋風だとどうしてもベッドだからね」
「そうよね。私の家は神社だから」
 こう琴乃に話す。
「お布団よ。一家全員ね」
「それで蚊帳なのね」
「そうなの」
 その通りだというのだ。
「蚊取り線香でもいいけれど。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「私だけなのよ、家で蚊帳使ってるのは」
 もうそうなっているというのだ。
「流石に減ったわね」
「ううん、そうなのね」
「そうなったのね」
「蚊帳っていいのに」
 残念そうな言葉だ、言いながら倉庫から蚊帳を出してそれを脇に抱える。 
 そのうえで物置を閉めて鍵をかける、そして言うのだった。
「もう蚊取り線香やペープマットがあるからってね」
「そっちの方が便利かもね」
「蚊帳よりもね」
「お父さん達もそう言ってるのよ」
 実際にそうだというのだ。
「それも私達には」
「残念?」
「そうなの」
「かなりね。それに私蚊取り線香も使うし」 
 それもだというのだ。
「お部屋の端に置いてね。蚊帳の傍に置いたら蚊帳に火が点いて危ないから」
「ちょっと待って、蚊帳も使ってるの」
「そうなの」
 景子は彩夏にはっきりと答える。
「そっちもね」
「蚊帳も張ってなの」
「二重にしてるの」
「そんなに蚊が嫌いなの」
「大嫌いなのよ」
 繭を顰めさせての言葉だ。
「あの音だけでね」
「ああ、夜に聞こえてきたら」
「刺してくるかって不安になって」
 そして血を吸われることがだというのだ。
「後痒いしね」
「ムヒとか塗らないとね」
「それでなのよ」
 蚊帳と蚊取り線香で二重にしているというのだ。
「そうしてるの」
「そうしてるのね」
「自分でもやり過ぎかもって思うけれど」 
 それでもだというのだ。
「とにかく蚊が嫌いだから」
「そういうことね」
「うん、まあとにかく蚊帳も出したし」 
 景子はこのことは素直に喜んでいた。
「これで安心よ」
「それはなのね」
「そう。後は早速破れているところがないか」
 そのい為にもだというのだ。
「一旦吊ってみるわね」
「蚊帳の吊り方って難しいの?」
「別にね」
 それはないというのだ。
「コツはあるけれどね」
「難しくないのね」
「ええ、簡単よ」
 景子は微笑んで里香に話す。
「蚊帳を吊るのはね」
「そうなの」
「上の四隅をそれぞれ上から吊るすの」
 その吊り方も話す。 
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