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万華鏡

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第二十話 蚊帳その七

「蜂に」
「ええ、刺されたことあるわ」
「やっぱりそうなんだな」
「小学五年の頃遠足で山に行ったのよ」
 その時にだというのだ。
「アシアガバチに刺されたのよ」
「スズメバチじゃないんだな」
「それはないわ」
 スズメバチに刺されたことはないというのだ。
「幸いね。けれどアシナガバチに刺されても」
「痛かったんだな」
「凄く、もう絶対に刺されたくないわ」
 そこまでだというのだ。
「もう絶対にね」
「それは大変だったな」
「スズメバチってアシナガバチより毒強いわよね」
「ええ」
 里香がその通りだと答える。
「比べものにならない位ね」
「そこまで強いのならね」
 絶対に刺されたくないと言う琴乃だった。
「勘弁して欲しいわ」
「気持ちはわかるよ」
 美優も琴乃のその言葉に頷いて言う。
「あたしもアブに刺されたことあるしさ」
「それ痛かったでしょ」
「かなりな」
 実際にそうだった、そしてだった。
「あたしも虫怖いよ」
「そうそう、痛いからね」
 刺されればだ。
「危険なのよ」
「蚊帳は蜂とかは防ぐから」 
 景子はこのことも話した。
「勿論アブもね」
「蠍とか毒蜘蛛は駄目でもなのね」
「どっちも日本本土にはいないからね」
 景子は彩夏にこう話した。
「そうした生き物は考えてないの」
「蚊が第一よね」
「勿論よ。とにかく蚊は防ぐから」 
 蚊帳が蚊を防がなくては話にならない、そういうことだった。
「安心してね」
「じゃあ今からその蚊帳を出すのね」
「神社の裏の物置の中にあるから」
 なおしている場所はそこだった。
「そこに行きましょう」
「ええ、それじゃあ」
「今からね」
 四人も景子の言葉に頷く、そしてだった。
 五人で一旦神社である景子の家を出てその裏庭にある物置の中に入った、そしてその扉を開けてだった。
 中にある緑の薄いマットの様なもの、巻かれてその上に白いビニールで縛ってまとめられているものがあった、それがだった。
「これがなのよ」
「蚊帳なのね」
「その」
「うん、これが蚊帳なの」
 そうだというのだ。
「開いてそれで上から吊るして」
「その中に入る」
「そうするのね」
「そうなの。夜は蚊帳の中にお布団を敷くの」
「ベッドは駄目か?」
 美優は何気にこれを出した。
「あたし実はベッド派なんだよ」
「あっ、そうだったの」
「お布団でも寝られるけれどさ」
 だがそれでもだというのだ。
「家じゃベッドだよ」
「あっ、それ私も」
「私もお家じゃベッドよ」
「ベッド、私のところも」
 琴乃に里香、彩夏もだった。
「普通にお部屋にあるし」
「そうそう、そこに座ることもあるし」
「今じゃ普通よね」
「お布団のお家って減ったわね」
 景子は四人の話を聞いていささか残念そうに言った。 
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