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Monster Hunter ―残影の竜騎士―

作者:jonah
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3 「★『アオアシラの侵食』2nd stage + ????」

 
前書き
エリア5は前話の6とつながっているところで、森の中といった感じですね。大きな切り株があったり、大型モンスターの攻撃で蜂の巣が現れる大木があったり…クエストによってはブルファンゴが湧いて出てきたりします。ほんとあれ、地面からボコって出てきますよね。どんな仕組み?笑

そういえばあれって小樽爆弾でも木、倒れるんですよ。知ってました? 作者は結構最近までわざわざ大樽使ってたタイプです…; ああ、無駄な出費…
回復薬G作るためにハチミツは慢性的な品不足;;
回復薬系は倉庫に100個以上ないとなんか落ち着かないタイプなもので… 

 
 再びアオアシラとまみえたのは1時間後、エリア5だった。
 蜂蜜を貪っていたアシラに後ろから奇襲をかけたのが悪かった。タイミングがいけなかったのか、それともそういう習性なのかわからないが、アオアシラが怒り狂ってしまったのだ。昼よりも激しい攻撃に、再びリーゼロッテは防戦一方となっていた。

「くぅ!」

 太刀をその腕の頑丈な甲殻に弾かれ、大きな隙を見せる。しまった、と思う間もなくリーゼロッテは殴り飛ばされた。

「きゃああああ!!」

 追撃の突進をしようと身構えたアシラの前に、小さな影が立ちはだかる。

「こ、こ、こ、こっちニャ! かかかかかかってこいニャ! くく熊めぇ!」

 ガクブルガクブルしながらも必死に標的をずらそうとするアイルーに、アオアシラは狙いを定めたようだった。うまくいったことにホッとしつつも、今度はハーヴェストが逃げ回らなくてはいけない。

「ぶニャ――!!」

 アシラの突進で後ろに逃げる奴はただの馬鹿だ。
 そうどこかで習ったことを辛うじて思い出し、アシラから見て横に横にと走り続ける。が、あまりの恐怖にパニックになってしまった。とにかく走らなきゃという意思と、逃げたいという本能がぶつかり、とうとうその場で8の字を描き始めてしまった。

「ハーヴェスト!」

 こうなるともう興奮が収まるのを待つしかない。だが、アオアシラはそれを悠長に待ってやるほど優しくもなかった。

グワアアアア!!

 しなる両腕をブンブン回しながら前進していく。最初の1撃は遠かった。2撃目はたまたま隙間をくぐり抜けた。3撃目、かすった。が、まだ余力はあるようだ。すぐ起き上がる。
 やった!

「よしっ!」

 しかし、普段通りなら3回の筈の連続ひっかきが、怒り状態になると4回になるということを、この時リーゼは完全に失念していた。
 4撃目――

「ニャンッ!!」

 悲鳴とともに、ハーヴェストの小さな身体が空を舞う。二度三度くるくると勢いよく転がってからパタリと力尽きた。

「ご主人…申し訳ないニャ……」
「ハーヴェスト!!」

 邪魔な獲物を倒したアオアシラは、今度はその殺気立った目をリーゼに向ける。一瞬怯むも、再び太刀を構えると踏み込み斬りからの突き、斬り上げ、といったところでアシラが右腕を上げていることに気づき、咄嗟に斬り下がりで間を保つ。直前までリーゼがいた場所を鋭い爪が風切り音とともに通った。

ごくり…

 思わず唾を飲む。これからは一瞬たりとも油断できない。常にアシラを視界に収めて、いつどのような攻撃が来るか備えなければならない。こんな時にモンスターの全体像を常に見ながら攻撃できるガンナーが欲しい、とリーゼは思うのだった。
 チラリと頭に浮かぶのは藍色の長髪の少女。だが、直ぐにそれを振り払った。

(なんでエリザなんか頭に浮かぶんだろ。誰があんなやつと組んでやるもんですか! あっちだってきっとそうよ。願い下げに違いないわ)

 そんな余計なことを考えていたから、リーゼは気づかなかった。アシラとの間に多少の距離が空いていたことに安心して、
 アオアシラが両腕を大きく振り上げていたことに。

 通称“ベアハッグ”

 ドスファンゴを覗く牙獣種に総じて見られる攻撃である。
 短い距離を一気に詰めつつ攻撃するそれは、後方に大きく吹き飛ばされる上に、与えられるダメージも大きい。

「きゃあああああ!!」

 攻撃を受けた瞬間と吹き飛ばされたあとの衝撃がリーゼロッテに襲いかかる。全身を丸めて衝撃に耐え忍ぶが、痛みの余韻に浸る間もなく立ち上がらなくてはいけない。ハーヴェストがいない今、完全にソロでこのアオアシラを討伐しなければいけないのだ。

「あぐっ」

 丈夫と名高いユクモの倒木に背中を強かに打ち付ける。ガン、と音がして頭にも強い痛みを感じた。どうやら遠心力に負けて頭もぶつけたようだった。

(まずい……)

 ふらふらしていてとてもじゃないが走って逃げれる状況じゃない。明滅する視界の中で、アシラは突進の準備とばかりに威嚇をしていた。
 なんとか木に手をついて立ち上がるも、一歩踏み出すだけで吐き気がこみ上げてきた。

「うあっ」

 アシラが地面の振動とともに突進してくる。少しでもこの牙獣から逃れようと、本能でのけぞると、昨日の雨のせいかぬかるんでいた土に足元を掬われ、倒木のむこうがわへと転げる。体が悲鳴をあげたが、倒木のおかげでなんとか突進の直撃は阻止できていた。
 だが、それとてただの時間稼ぎ。すぐに再び攻撃を始めるだろうアシラに、だがもうリーゼロッテの体力も気力も、限界に近かった。
 次の瞬間、空を切る音が聞こえた。

ヒュンッ…ドドドッ!

ガアアアア!!

「なにボサッとしてんの! 早くこっち来なさい!」
「エ、エリザ!?」

 まさかここで聞くことになるとは思わなかった声に思わず狼狽するが、今はそれどころではないと思い出した。だいぶ落ち着いてきた痛みにしっかりした足取りでエリザの元へと行けた。その間エリザはずっとアシラを牽制する矢を打ち続けている。

「チェルシー!」
「ハーヴェスト回収完了ニャ!」
「よし! 引き上げるわよ。あんた走れるわね、リーゼ!」

 だがそれに答えるリーゼロッテの声は、どこまでも弱々しい物だった。まるで、全てを諦めてしまったような……

「……無理だよ……」
「何言ってんのよ! このあたしが助けに来てやったんだか…ら……嘘でしょ……?」

 後ろを振り向くとしゃがみこみたくなる現実に、思わず笑いがこぼれた。後ろにいる青熊獣のことなど忘れてしまいそうになる。

「あはは、何なのよこれ…ギルドの報告ミス? 笑わせるわね」

 2人の前に立つもの。
 大きな緑色の翼には白い斑点がいくつか見られる。それが意味するのは、彼女(・・)は飛竜――食物連鎖の頂点に立つ者であるということ。
 しかし最も恐ろしいのは、彼女が得意とするのは陸上戦であることだ。その足で恐るべき威力の突進を繰り出す。

「【陸の女王】がなんで渓流にいるのよ!?」
「――雌火竜、リオレイア」

 震える声で目の前に立つ竜の名を口にするリーゼロッテ。チェルシーから受け取ったぐったりしたハーヴェストは胸に抱えたまま、立ち尽くしていた。

グアアアアアアアアア!!!!!!!

 怒りの炎を秘めた金の眼がこちらに向くと、一歩踏み出しバインドボイスを繰り出した。
 ビリビリと震える大気。頭にガンガンと響くそれに、大きな隙が生まれると分かっていても、思わず耳を塞がずにはいられない。チェルシーなどは体が軽いので、後方に吹っ飛んだ。

「…に、逃げなきゃ!」

 先に意識が覚醒したのはエリザだった。となりを見ると、ガクガク震えながらも放心したようにリオレイアを見上げるリーゼロッテがいる。腕を引っつかむと、なりふり構わず引っ張り走り出した。途中気を失っていたチェルシーも蹴っ飛ばしてたたき起こす。

「ギニャ――!! もうダメニャ! 死ぬニャ! なんでこんなとこに飛竜がいるニャ――!!?」
「いいから逃げるわよ!!」

 背を向けて走りだそうとした、次の瞬間。ハッと左から迫り来る緑色の何かに気づくが、もう遅かった。

「ッ! リーゼ!!」

 リオレイアの尻尾回転攻撃だった。リーゼロッテを突き飛ばした瞬間、脇腹に堅い棘が叩き込まれる。ボキ、と骨が折れる音が体に響いた。直後吹っ飛ばされ、木に叩きつけられる。辛うじて受身はとったものの、激しい痛みに気が遠くなる。呼吸をするたび痛みを強く感じた。

(流石に…アオアシラ程度の防具じゃ折れる…か……)

 なんとかリーゼは攻撃範囲のぎりぎり外にいたようだった。ちなみにチェルシーは身長の関係で頭上を素通りしたようで、安心する。

「エリザ!」
「あたしはいいから、さっさと逃げなさい!」

 痛みをこらえてなんでもないように立ち上がると、背中にしまっていたハンターボウⅡを流れるような動作で組み立てた。キリキリと引き絞ると、もう半回転し終わったリオレイアの頭に三連射する。

「この至近距離で…弾くわけ……ッ!?」

 苦笑いを浮かべながらも、転がるようにリオレイアの足元を通過して後ろに回る。
 痛い、痛い、痛い。
 バクバクと心臓が破裂しそうだった。

「近接のあんたがいると、あたしの弓の邪魔なのよ! ただでさえ叶わない相手なら、遠距離から安全に狙ったほうが生き残り易いに決まってんでしょ!? あたしは隙を見て逃げるから、あんたはチェルシーとハーヴェスト抱えてさっさと逃げなさい!」
「でも!」
「逃げるニャ、リーゼにゃん! ご主人の好意を無駄にしちゃダメニャ!」
「…ッ! すぐ応援呼んでくるから!!」

 リーゼロッテは踵を返し、一目散にベースキャンプへと向かう。ポーチから緊急発煙筒を出して、着火の紐を引こうとした。その後を負うように、リオレイアが突進する。

「くっ! こっちを狙いなさいよ!」

 頭、翼膜、尻尾、足。どこに狙っても矢は雌火竜に微々たるダメージをも通していなかった。

「こっち来なさい! なんで狙わないの!? リーゼ! 危ない!!」

 まだ16の少女の1歩と、竜の一歩、それも【陸の女王】と呼ばれるリオレイアの一歩では、歩幅は倍以上に違う。エリザの牽制も虚しく、リーゼロッテはレイアの巨体に踏み潰される――そのとき。

 リーゼの体が誰かに掬われた。

ガアアア?

 確かに踏み潰したと思ったのに、直前で餌が消えた。リオレイアは頭をキョロキョロと振って、逃げた得物を探した。

「え……?」
「……だ、れ…?」

 思わず目をつぶって痛みを覚悟したリーゼロッテも、腕に当たる暖かい人肌に薄目を開ける。エリザのかすれた声を、耳が拾った。

「間一髪……ってとこか」

 リーゼロッテの視界を、“黒”が埋め尽くした。
 
 

 
後書き
チェルシーの舌っ足らず「リーゼにゃん」は仕様です。アイルー可愛い(*´`) 
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