【ネタ】アホの子ルイズちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十話
前書き
サブで書いてる方が日間ランキング12位でこっちは未ランクインとか、おかしいですよ!読者さん!
手刀で昏倒させたウェールズを抱え、会場へと向かう。
誰もが明日へ向けて後悔のないように精一杯楽しんでいる。
そんな哀しい喧噪に、一発の爆音を拡げた。
音源である私に誰もが視線を向ける。
ウェールズのただならぬ状況に、杖を抜こうとする者もいる。
「聞きなさい!」
会場全体に響かせるように、大声でそう叫ぶ。
一瞬狼藉するも、誰もが静かに私の言葉に耳を傾ける姿勢を見せる。
「貴方達に二択の問いを与えるわ。貴方達はウェールズに生きて欲しい?それとも共に戦場でその命燃やし尽くして欲しい?」
ざわざわとした空気が辺りを包む。
「前者ならば、私の命に代えても彼のアルビオンから脱出させると約束するわ。後者なら今この場で起こったことを忘れ、予定通りの最期を迎えればいいわ」
隣り合う仲間達と話し合いを初める。
答えを静かに待っていると、サイトが私に話しかける。
「ルイズ、これは一体―――」
「なんてことないわ。ただ、確かめたいだけ。虚勢の中に秘められた本音をね」
絶望を振り切るための儀式だって事は承知している。
だけど、それは決して本心を嘘で塗り固めることではない。
今、彼らの言葉を憚る者はいない。
ただひとり、この問いに意義を申し立てるであろう存在は夢の中。
故に、口に出せない本音も次第に漏れていくのは必然。
「―――俺は、ウェールズ様に生きて欲しい。この方はこんなところで死んでいい器じゃない!」
一人の貴族の本心を皮切りに、そうだ!という声が波紋となり拡がっていく。
一人の勇気が、皆の本心をさらけ出す。
真っ先に本音を口に出した彼は、間違いなく英雄と呼べるだろう。
だって、彼のお陰でウェールズは助かるのだから。
「その言葉が聞きたかった」
自分でも珍しいぐらいの笑顔でそう答える。
会場は、先程までとは違った活気に満ちあふれていた。
ただの悪足掻きの為の戦いではなく、未来を紡ぐ一端となる戦いに赴くのだ。
意味も価値もまるで違う。
彼らが一秒でも長く、一人でも多くレコン・キスタの奴らを倒すことで、敬愛すべき主が助かるのだ。気合いの入りようは比較にならない。
興奮冷めやらぬ中、私はタバサの下へと向かう。
すると、都合良くキュルケも傍にいた。
「タバサ。悪いけど今すぐウェールズを連れてトリステインに送って頂戴。スリープ・クラウドで彼が起きないようにしてくれると尚いいわ」
「わかった」
「って、ルイズ。貴方ウェールズ皇太子をトリステインに亡命させるつもり?」
「そうよ」
「そんなことをすれば、外交問題に発展するわよ。お世辞にも国力に優れている訳ではないトリステインが戦渦に巻き込まれるのは、不都合極まりないんじゃない?」
「ああ、そんなこと」
「そんなことって―――」
「幾らでもやりようはあるわよ、そんなの。それに、ウェールズの存在は戦争を起こす免罪符としての価値としては下の下よ。彼が死んだという証明が出来ないのはレコン・キスタにとってはマイナスだけど、彼ひとり生き残ったところでやれることはたかが知れている」
「そうかもしれないけど………」
「それに理由なんて言うのはね、幾らでも作ることが出来るのよ。それが例え捏造でも、出所不明の情報でも、力や権力さえあれば通すことができるのが現実よ。それこそ、貴族と平民の関係のようにね」
「………それにしたって、切っ掛けになるのは確かでしょ。対策なしにこんなことをするような奴ではないって知ってるけど、何か当てはあるの?」
「ええ。その為には、キュルケかタバサの協力が必要になるわ」
キュルケとタバサは互いの顔を見合わせる。
「簡単な話、トリステインに的を絞らせなければいいのよ。その為には、貴方達二人のどちらかに『ウェールズがゲルマニアないしはガリアに逃走した』という噂を流す必要があるのよ」
「そんなことでどうにかなるの?信憑性もなにもあったものじゃないわね」
「信憑性なんて僅かにあればいいのよ。これはあくまで奴らの目を分散させる為にやるのであって、貴方達の国をスケープゴートにしたいからじゃないもの。それに、曖昧な方がスパイに探られてもばれない可能性があるしね」
「そう。で、実際何をすればいいの?」
「キュルケかタバサのどちらかが一度本国に戻って、例の噂を流す。誇大広告しなくても、現在話題沸騰中のアルビオンの王子が逃げたという話なら、勝手に莫迦みたいに拡がるから気にしなくていいわ。むしろそうすることでデマだと思われたら困るもの。レコン・キスタは発展途上の組織。国力に乏しいトリステインならともかく、ゲルマニアやガリアクラスの規模の国を相手にするとなれば、話が変わってくる。噂の真偽を確かめようとはしても、強硬手段に出るのは避けようとする筈。その間に、トリステインはレコン・キスタへの対策を整える」
「はぁ………。しかし、そんなに都合良くいくかしら」
「いくわよ。組織として出来たばかりのひよっこが、ひとつの国を壊滅させて増長している今こそが好機。人間の思考なんてね、皆が思っているほど複雑じゃないのよ」
「あ、そう………。ま、噂流す程度ならゲルマニアに大きな被害は出ないでしょうし、出たところで戦争になる免罪符としては下の下、なんでしょう?」
ウィンクを一発。
本当、こういう面をもっと見せれば別の意味でモテると思うんだけどね。
「それに、話の流れからしてもうゲルマニア行きは確定してるっぽいしね。タバサには悪いけど、ゲルマニアは最大規模国家。隠れ蓑にするには打って付けだものね」
「ありがとう、キュルケ」
「君達。円満解決な雰囲気なところ悪いが、少しいいだろうか。ウェールズ皇太子をトリステイン魔法学院に運ぶ任、僕に任せて欲しい。僕のグリフォンは大人数が乗るには優れていないからね。タバサ君の風竜は船が使えなくなった場合の保険に取っておいた方がいい」
突如現れたワルド。ずっと見計らっていたのだろうか。
そうじゃなきゃ一息でこんなに説明口調を言える訳がない。
「でも、ウェールズを起こさないようにするにはタバサのスリープ・クラウドが必要不可欠だし」
「スリープ・クラウドなら僕もできなくはないよ。曲がりなりにもスクウェアメイジだからね」
「へー」
「へー、って………ともかく僕がやるよ、構わないね?」
「―――そのグリフォンに俺も乗せてくれるならな」
今度はサイトが便乗してくる。
男共は空気を読むのがお好きなようで。
「別に構わないけど………使い魔君は何かと僕を目の敵にしていないかな?」
「あー、それってダーリンの出番が貴方より多いからじゃ―――」
「違う!」
あー、なんだかわかんないけど、ワルドの護衛を買って出ているのかな。
本来なら使い魔が主の下を離れるような選択はさせないんだけど、今回は重要任務だしいっか。
「ならサイトにワルドの、いやウェールズの護衛は任せるわ。その間に、私はシルフィードを使って王宮に向かうわ。アンに経過を知らせる為にね」
「―――って、今更だけどトリステイン王国に運ばないの?そっちのが色々と都合がいい気がするんだけど」
「向かうのは王宮よ。ラ・ロシェールに向かう道程で遭遇した賊。あれは間違いなくスパイか何かでこちらの行動が筒抜けだったからこその結果よ。アンに対する報告だけなら、私一人でも問題はないけど、ウェールズをあの場に向かわせるのは危険が伴うわ。それに、噂が拡がると同時に不審な人物がアンの身近に現れたとなれば、色々と疑われる可能性がある。それに比べ、魔法学院なら人通りが多少増えたところで不都合はないってこと」
「成る程ね………。ま、私は頼まれた仕事をするだけよ」
「そういうことだから、タバサお願いね」
「わかった」
それからどうしたか!
私+タバサ+ギーシュ(そう言えば居たね)の三人で王宮に向かった。
衛兵に空飛んじゃ駄目よ?知るか莫迦って言い合いだの、悪魔の証明だのする場面もあったけど、どうでもいいので割愛。
そんなこんなで、今はアンの私室にいる。
「そうですか。ウェールズ様は、生きているのですね………!」
「だけど、当然この話はオフレコね。彼と会おうとするのも。最低でも、レコン・キスタが壊滅するまでは会っては駄目よ」
「わかっています。もどかしくはありますが、ウェールズ様を、トリステインを必要以上に戦渦に晒すわけにはいきませんからね」
「とはいえ、トリステインがレコン・キスタに狙われる可能性はほぼ絶対なのは間違いないわ。彼らは組織として、大きくなりすぎている。それこそ、身を潜めることが不可能がぐらいに」
「だからこそ、彼らは第一の拠点を得ようと、アルビオンを襲撃した」
「そゆこと。しかし、それだけで終わることはない。彼らはその成り立ち故に、足を止めることは許されない。武力によって地位を得た彼らは、最早ハルゲキニア全体の敵となったと言っても過言ではない。そんな状況下でせっせと地盤固めなんてしていたら、簡単に潰されてしまう。だから、残る国の中で最も脆弱とされているトリステインを狙い、一気に規模を拡大させる腹づもりでしょうよ」
「………戦争は、終わらないんですね」
「終わったら終わったらで巫山戯るなって感じだけどね。今、この瞬間にもウェールズの為に命を賭けている人達がいるのに」
「戦争自体は否定しません。ですが、今回のアルビオン制圧は、まるで意味を見出せません。本当にあるのかさえ不明瞭な聖地奪還の為に無駄に命を散らすことが、意味のある行為だったなんて、認められるわけがありません」
「未知を目指すからこそ、人は進歩していくとは言うけれど、そんなものは勝者の理屈よね。でも、彼らは勝者にはなれない。何故なら―――」
「―――私達が完膚無きまでに叩きのめすから、ですよね?」
アンは、直視できないぐらい眩しい笑顔で、そう続けた。
この瞬間、レコン・キスタの破滅への一歩が始まった。
後書き
今更だけど、ルイズちゃんは基本的に無表情です。
ですよねー、とかクソが、とか言ってるときも大抵棒読み風で言葉通りの表情は一切してない。
タバサみたいながちがちの無表情というのではなく、常にふーんみたいな表情を維持しているだけで、喜怒哀楽は当然ある。
うーんなんだろう、上手く表現できない。
ページ上へ戻る