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八条学園怪異譚

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第二十一話 ランナーその二

「よくないわね」
「ええ、やっぱり」
「難しいわね」
「私もそう思うわ。泉を見つけても私達か博士達だけの秘密にする?」
「それがいいかも」
「そうよね。妖怪さんや幽霊の人達も学園の住人だから」
 二人と同じくそうだというのだ。
「ましてや悪い人達じゃないし」
「邪険にするのもね」
「よくないわね」
「ええ」
 こう二人で話す、そしてだった。
 愛実はアルコールランプのアルコールの容量をじっくりと見て答えた。
「少ないかしら」
「大丈夫だと思うけれど?」
 聖花もそのアルコールランプを見て言う。
「それで」
「この実験の間はいけるのね」
「いけるわ。けれど次はわからないわね」
「じゃあちょっと足そうかしら」
「そうする?」
 実験の話になっていた。ここで二人の横からもう一人ふわりとした感じの肩まである黒髪の娘が出て来た、二人の友人の一人花沢美紀だ。目は大きくはっきりとしていて背は愛実より五センチ程高い。
 美紀は実験の話に移っていた二人にこう言って来た。
「さっき何のお話してたの?」
「えっ、さっき?」
「さっきって?」
「妖怪がどうとか言ってたけれど」 
 美紀はこの話を少し聞いていてそれで問うたのである。
「怪談?それとも漫画?」
「あっ、漫画の話なの」
「ちょっとね」
 二人はこれにすることにして誤魔化した。
「今読んでる妖怪もののコメデイーね」
「ほら、少女リボンの」
「ああ、あの漫画ね」
 美紀もその漫画を読んでいた、それで二人の実は誤魔化しの話に頷いて明るい顔でこんなことを言った。
「最近特に面白いわよね」
「そうそう、河童さん達可愛いわよね」
「胡瓜が大好きで」
「私もあの河童さん達好きなのよ」
 まさか学園の中に彼等がいるとは露程も思ってはいない。
「悪戯好きでそれでいて主人公思いで」
「そうよね、主人公のヒロインもスタイルいいし」
「水着姿凄いわよね」
 こうした話をしていた、そしてだった。
 三人で親しく実験の用意をして授業がはじまると実際にその実験をした。二人の学園生活は昼も楽しいものだった。
 そして夜もだった、二人はこの日も校舎の中に入り込んでいた、そのうえでだった。
 愛実は夜の校舎の中を見回しながら少し不機嫌な顔で言った。
「虫、増えてきたわよね」
「そうね。特に蚊ね」
「私蚊は大嫌いよ」
「私もよ」
 愛実も聖花もこの虫は嫌いだった。
「刺された後痒いしね」
「そうなのよね、そこから病気にもなるしね」
「日本脳炎の注射はしててもね」
「マラリアはなくても」
 日本にはない。
「それでも嫌な生き物よね、蚊って」
「本当にね」
 こう二人で話す、そしてだった。
 聖花は懐からスプレーを取り出して愛実にあらためて言った。
「いる?」
「蚊除けのスプレーよね」
「ええ、そうよ」
 まさにそれだというのだ。
「刺されたら元も子もないからね」
「そうね。じゃあ」
「はい、どうぞ」
 聖花は手から手に愛実にそのスプレーを渡した、愛実はすぐにそのスプレーを使って聖花にそれを戻した。
「有り難う」
「じゃあ次は私が」
 聖花もちゃんとスプレーをする、そうしてだった。 
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