八条学園怪異譚
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第二十一話 ランナーその一
第二十一話 ランナー
プールでの交流の次の日だった。愛実は理科室で実験の用意をしながら共に用意をしている聖花にこう言った。
「さて、今日も行くけれど」
「工業科にね」
「泉って中々見付からないわね」
今聖花に言うのはこのことだった。
「本当に」
「そうね。本つに中々ね」
「いつも候補の場所は見付かるのにね」
こうアルコールランプを置きながら言うのだった。
「それでも実際の泉はね」
「ないわね、あるのは間違いないにしても」
「どうしてかしらね」
首も捻る。
「中々見付からないのは」
「というか泉の数もわかってないわよね」
泉があることはわかっていてもだ。
「そもそも」
「そういえばそうよね。お家に扉が一つとは限らないわよね」
「大きいお家だと幾つもあったりするわよ」
「姫路城や大阪城は門が幾つもあるし」
姫路城を先に出すのが兵庫県民らしかった。
「そうよね」
「そう、だからね」
「ううん、幾つあってそれでも一つも当たっていないっていうのは」
「外れくじ引き続けてる様なものよね」
聖花はナトリウムを手にしている。
「そうなるわよね」
「そうね、何かそういう時ってあるわね」
「アイスとかでもね」
子供の頃から今に至るまでの話だった。
「外れって続く時は続くのよね」
「自動販売機でもね」
「あっちは滅多に当たらないけれどね」
自動販売機で当たりは狙ってするもではない、それこそ当たれば大吉という位に思わないと駄目なものである。
「まあとにかくよね」
「今の私達ってアイスを食べ続けてると思っていいわね」
「アイスは好きだけれどね」
聖花の好物の一つである、甘いものは全体的に好きなのだ。
「それでもね」
「ちょっと、あれよね」
「外れが続き過ぎよね」
「そうよね、。どうも」
「それに。泉を見つけたらだけれど」
不意に聖花の口調が変わった。
「どうしようかしら」
「どうしようって?」
「うん、泉を見つけたらその泉をどうするの?」
こう愛実に問うのだった。
「そうしたら」
「見つけたらって」
「だから、そうしたらどうするの?」
「ううん、そういえば見つけることは考えてたけれど」
愛実は聖花のその問い、急に出た問いに戸惑いを見せた、そのうえで戸惑いの顔で聖花に対して答えた。
「見つけてどうするかまでは考えてなかったわ」
「そうよね、私もよ」
「聖花ちゃんもなの」
「私もそこまでは考えてなかったの」
聖花も今の今までそうだったというのだ。
「ちょっとね」
「どうしようかしら」
真剣な顔で言う愛実だった。
「見つけたら」
「知らせる?誰かに」
「知らせるって」
「そう、博士か牧村さんか」
「博士に知らせたらどうなるのかしら」
「博士が学園の裏の記録に書かれて終わりかしら」
聖花はその場合を想定してみた。
「それでね」
「そんなところよね」
「けれど他の妖怪さんや幽霊の人達を怖がる人だったら」
例え学園の中にはいい妖怪しかいなくとも妖怪や幽霊達を知らない人間が泉があると知ればどうなるかというと。
「泉を封印するわよね」
「そうするって考えた方がいいわよね」
「ええ、そうなるわね」
「それはね」
愛実はその場合はどうかと答えた。
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