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八条学園怪異譚

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第二十一話 ランナーその三

 二人は蚊に対する備えをした、だがここで。
「ああ、あんた達今夜も来たの」
「好きだねえ」
 花子さんと口裂け女の声がした、実際に二人が来ていた。
「今夜はどの妖怪さんと会うの?」
「面白そうだから付き合うよ」
「あっ、花子さんに口裂け女さん」
「こんばんは」
 愛実と聖花は二人に頭を下げる。二人も同じく頭を下げて返礼をする、それが終わってから愛実が言った。
「今から工業科のグラウンドに行くの」
「ああ、ランナーに会いに行くのね」
「ええ、そのつもりだけれど」
「やっぱりね、あに人に会うのね」
「知ってるのね」
「うん、知ってるよ」
 花子さんはにこりと笑って愛実に答える。
「お友達だよ」
「ふうん、花子さんとその人お友達なの」
「あたしともだよ」
 いつも通りマスクをしている口裂け女もにこりとして言ってきた。
「そうなんだよ」
「じゃあ二人共よく知ってるのね、その人のこと」
「うん、いい人だよ」
「スポーツマンよ」
「いや、女の人だからスポーツマンじゃないでしょ」 
 愛実は口裂け女の言葉のそこに突っ込みを入れた。
「スポーツウーマンでしょ」
「あはは、そういえばそうなるね」
 口裂け女も笑ってそうだと返す。
「あの人はそっちだね」
「スポーツウーマンってことはいい人なのね」
「そうだよ、爽やかでね」
「陰湿だったり執念深くないのね」
「逆逆、全然違うよ」
 そうした性格だというのだ。
「本当にいい人だからね」
「だといいけれど」
「あたしが言うんだから間違いなし」
「そういえば口裂け女さん嘘は言わないわね」
 これは花子もである。
「いつも正直にお話してくれるわよね」
「人を驚かせるのは好きだけれどね」
 しかし嘘は言わないというのだ。
「あたしは正直なのが大好きなんだよ」
「それで美人だって言われると怒るの?」
「それが悪戯だよ」
 人を驚かせるそれだというのだ。
「あたしの母ちゃんからのね」
「母ちゃんってお母さんいたの」
「あたしは比較的新しい妖怪だけれど伝承は昔からあるんだよ」
 口裂け女を思わせる伝承はかなり昔かあらある、その伝承の元こそがだというのだ。
「それが母ちゃんのなんだよ」
「ううん、お母さんいたなんて」
「意外かい?」
「そんなの考えたことなかったから」
 実際そうだったのだ。
「全然ね」
「まあそうだろうね。妖怪の家族とかはあまり考えられないね」
「けれど家庭があるのね」
「そうした妖怪もいるよ」
 口裂け女もその妖怪の一人なのだった。
「雪女さんだって人妻さんだしね」
「人妻って」
「そう言うと色っぽいだろ」
「雪女さんって美人よね、まだ見たことないけれど」
「いつも食堂の冷凍庫にいるよ」
 そこがこの学園での雪女の住処だった。
「隠れているけれどね」
「やっぱり寒いのが好きなのね」
 聖花は雪女が冷凍庫にいると聞いて妙に納得した。 
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