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八条学園怪異譚

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第二十話 プールの妖怪その十四

「いつも親切にしてもらっててね、僕達も」
「感謝してるんだよ」
「まあ奇麗なのが好きだからね」
 垢舐めは彼等の言葉に謙遜を見せる、だがその顔は元々赤いので照れていてもわかりにくい感じである。
「それはね。それで君達泉を探してるよね」
「ここに泉でありそうな場所あるの?」
「あるとしたら何処なの?」
「そこかな」
 垢舐めは二人に応えながら彼が今出て来たその更衣室を指差した。
「あそこね」
「あそこ?」
「あそこなの」
「更衣室は着替える場所だな」
 日下部も話してきた。
「着替える、それは転換でもある」
「あっ、だからですか」
「それで更衣室もなんですね」
「そういうことだ。一度入って出てみればだ」
 そこが転換の場所、泉ではないかというのだ。出入りもまた転換というのだ。
「そこがかも知れない」
「ううん、じゃあ入ってみますね」
「それで調べてみますね」
「そうするといい」
 日下部は言葉で二人の背を押した。そうしてだった。
「そして調べることだ」
「わかりました」
 二人も頷きそうしてだった。早速その更衣室に入ってみた。その中は普通の更衣室で垢舐めが好きなシャワールームもある、一旦そこに入り。
 外に出てみた、しかしそこは同じだった。
「プールに戻っただけ」
「それだけね」
 二人で顔を見合わせて話す。
「じゃあここもなのね」
「泉じゃないのね」
「残念だったね」
 河童のうちの一匹が慰めてきた。
「けれど次があるからね」
「ええ、じゃあ次ね」
「次の場所に行くだけね」
「今度は工業科に行ってみたらどうかな」
 その河童は二人にこの場所を紹介した。
「工業科のグラウンドね」
「グラウンド?」
「そこになの」
「そう、そこにいつも走ってる人がいるから」
 それでだというのだ。
「その人に聞いてみればいいよ」
「グラウンドでいつも走ってるって」
「どんな人かしら」
「幽霊だよ」
 具体的にはそちらだというのだ。
「その人はね」
「ふうん、幽霊さんね」
 愛実はそう聞いても最早全く驚かない、平然としたものだ。
「わかったわ。じゃあ今度はそっちに行くから」
「女の人だけれどね」
「昔の人よね」
「うん、工業科でね」
 工業科は女子生徒が圧倒的に少ない、それでこうした言葉も出た。
「その辺りは何でかわからないけれど」
「確かに。工業科で女の人っていうのはね」
「ちょっとね」
 聖花も言う。
「うちの工業科今でも男女比率五対一位?」
「もっと少ないでしょ」
 とにかく男子生徒の方が多い、かなりむさ苦しい場所だ。
「まあそれ位ね」
「ううん、それで女子生徒って」
「それに昔の人っていったら」
「ブルマ?」
 この服も話に出た。
「あのそのまま下着の」
「あれなのかしら」
「だからその辺りは自分達で見てね」
「見てのお楽しみだよ」
 妖怪達はここで二人にこう言った。
「どうして工業科っていうのも」
「ついでにブルマかどうかもね」
「そういうのは全部君達で見て確かめてね」
「そうしてね」
「ええ、わかったわ」
「それじゃあね」
 二人もそれで納得した、そうして日下部と妖怪達にこう言ったのである。
「じゃあ今日はこれでね」
「明日はそこに行ってみるから」
「わかった。それでは明日だな」
 日下部が二人に応える。
「工業科の門のところで会おう」
「あっ、日下部さんも来てくれるんですか」
「明日もお付き合いしてくれるんですか」
「大したことではない」
 日下部は二人にこう返した。
「私も彼女と久し振りに話したくなったからな」
「それでなんですか」
「明日もなんですか」
「そういうことだ、では何時がいいか」
「ううん、その人が出る時間でお願いします」
「そのちょっと前に」
「出るのは十一時だ」
 その時にだというのだ。このプールや他の多くの場所より一時間早い。
「その少し前に待ち合わせすべきだから」
「大体十時四十五分ですか?」
「それ位に待ち合わせしてですね」
「そうだな。四十分だな」
 十時四十分だというのだ。
「その時間に待ち合わせをしよう」
「あっ、五分前ですか」
「それでいくんですね」
「海軍は五分前だ」
 今も海上自衛隊に生きている精神である。
「だからそれでいこう」
「わかりました。じゃあ明日の十時四十分に工業科の門の前ですね」
「そこになりますね」
「待っている。ではまた明日な」
「はい、それじゃあ明日またお願いします」
「そういうことで」 
 二人は日下部に頭を下げる、そしてだった。
 日下部は二人に海軍の敬礼で、妖怪達は明るく手を振って別れの挨拶を交えさせた。二人はプールを後にしてこの日は妖怪達と楽しむ飲むことはせずにそのままそれぞれの家に帰った、泉は今回も見付からなかったがそれでも妖怪達との交流に楽しむことが出来て満足して一日を終えた。


第二十話   完


                 2012・12・23 
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