久遠の神話
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第三十八話 神父その十三
「そういうことだね」
「そういえば蠍の尻尾も何処も」
ある程度の丸みがあった。それでだったのだ。
「硬いだけじゃなくて」
「毒針もね。失敗したよ」
斬るのをだというのだ。
「あの毒針自体を斬ればよかったけれど」
「それが外れて」
「できなかったよ。参ったね」
「動きが速いわね」
「うん、蠍の動きは速いっていうけれどね」
「この蠍も」
巨体だがそれを思わせない速さだった。
「そうみたいね」
「どうしたものかな」
「蠍っていうと」
樹里は蠍の知識から考えていった。
「砂漠とかジャングルにいるけれど」
「砂漠だね」
「あとジャングルね」
「ううんと。どっちにしても暑い場所だけれど」
上城は樹里の話を聞きながら蠍の鋏と毒針をかわしつつ言う。
「そういえば日本にも」
「沖縄にいるわよね」
「暑い場所だよね、結局は」
「ええ。寒い場所にはいないわ」
「寒い。寒いっていうと」
ふとだ。上城の言葉がここで変わってきた。
「そうだね」
「何かあったの?」
「うん、寒いっていうと」
上城は何かを察した顔になった。そうしてだった。
その手に持っている剣、日本刀であるそれを構えてだ。そのうえで言うのだった。
「水は冷たいよね」
「けれどお水だと」
「うん、蠍でもその冷たさには耐えられるよね」
「そうよ。上城君のお水はそんなに冷たいの?」
「冷たくすることはできるよ」
それがだ。可能だというのだ。
「ちゃんとね」
「というと」
「うん、こうするんだ」
その両手に持っている剣を上から下、左から右に動かし十字を書いた。するとだった。
雨が降った。いや、雨ではなかった。
雹だった。その雹が無数に降り蠍を襲ったのだ。
その雹は忽ちのうちに積もり蠍を囲んでしまった。その雹を受けてだった。
蠍は動けなくなった。樹里はそれを見て上城に言った。
「そうね。蠍は暑い場所にいるから」
「こうした生き物、虫がそうだけれどね」
「寒さには弱いわよね」
「そう。だからね」
それでだというのだ。
「こうしてみたんだ」
「お水はお水だけれど」
「水はその温度によって形が変わるからね」
「沸騰すれば蒸気になって」
「凍らせれば氷になるわね」
「そう。僕は水の能力を使う中でね」
剣士としての戦い、これまでは怪物達との戦いばかりだった。その中で彼は水を使う力も技術も高めていっていたのだ。その結果だった。
「その温度も変えることが出来る様になったんだ」
「それでなのね」
「うん、蒸気や霧にもできるし」
そしてだった。
「こうして雹にもしたり氷にもしたりね」
「氷ね」
「そう、氷にもね」
こう言うのだった。
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