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久遠の神話

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第三十八話 神父その十二

「ですからオリオンみたいには戦えません」
「敗れるというのですか」
「いえ、そのつもりはないです」
 負けるつもりはなかった。このことは言うまでもなかった。
「勝ちます、絶対に」
「ではオリオンになるのですね」
「ですからオリオンではないですから」
 このことは断るのだった。
「僕は僕です。そして」
「そして?」
「僕として戦い勝ちますから」
「貴方の戦い方で、ですか」
「そうしますので」
「わかりました。ではその様に」
 声はこうその上城に告げた。そうしてだった。
 上城はその青い刃を出した。そのうえで蠍を見る。見ればその蠍はというと。
 一対の鋏、禍々しい光を放つそれにだった。
 尾には邪悪ささえ漂う毒針もある。それもまた禍々しい光を放っていた。その蠍の鋏と針を見てそうしてだった。上城は構えを取っていた。
 その彼にだ。樹里が横からそっと囁いてきた。その囁く言葉は。
「あの」
「蠍だからだよね」
「ええ。気をつけて」
 その鋏と毒針を見ての言葉だった。
「一瞬でも油断したらね」
「鋏で切られるか」
「毒針に刺されるわ」
「どちらも要注意だね」
「本当に一瞬でね」
 どうなるかというのだ。それで。
「命を落とすから」
「そうだね。けれど」
「負けないのね」
「確かに鋏と毒針は危険極まりないけれどね」
 だがそれでもだとだ。上城は蠍との対峙に入りながら話した。
「勝つからね」
「じゃあこの戦いもね」
「見ていて。僕はこの怪物にも勝って」
 そうしてだというのだ。
「力を手に入れてね」
「そうしてよね」
「うん、戦いを止めるから」
 怪物を倒し力を手に入れてだった。そうするつもりだったのだ。
 そしてだった。上城は樹里に対してこうも言った。彼女に顔を向けて。
「それでね」
「ええ。戦いがはじまるから」
「下がっていて」
 こう言ったのである。
「そうしてね」
「わかったわ。じゃあね」
「でははじめるから」
 こう言ってだ。樹里に後ろまで下がってもらってからだった。
 上城は蠍を見た。蠍は隙を窺っているのか今は動かない。だが、だった。
 その蠍を見てだ。まずは前に跳んだ。
 それで蠍に剣で突きを入れようとする。しかしその彼に。
 蠍は毒針を出してきた。それで彼を突き刺そうとする。しかし。
 上城はその剣で毒針を受け止めた。空中でそうした。
 そこからその毒針を剣で断ち切ろうとする。剣を一旦翻して左から右に剣を一閃させる。狙うのは毒針本体ではなく節になっているそのつなぎ目の部分だった。しかし狙いは外れて節のつなぎ目ではなく節そのものに当たってしまった。
 しかしその剣は弾き返された。鋭い金属音がするだけだった。
 空中でのこの攻防からだ。上城は一旦蠍の背に着地した。そこに毒針がまた来る。
「くっ!」
 上城は着地してからすぐに後ろに跳んだ。毒針は右から左に振られてきたがそれをかわした。 
 それで蠍の前に戻る形で着地してからだ。こう言うのだった。
「これはね」
「蠍の甲羅ね」
「うん、虫と同じで」
 蠍もだった。これは大小に関わりなくだった。
「かなり硬いね」
「剣でも斬れないのね」
「いや斬れる筈なんだ」
 それはできるとだ。後ろにいる樹里に答えた。
「けれどね。丸みがあるから」
「あっ、それで」
「うん、弾かれるんだ」
 戦車の丸みと同じだった。それで力の方向を変えさせて切らせないのだ。 
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